ガイ・リッチーが仕掛けるスタイリッシュな犯罪群像劇 ---
2000年公開の『スナッチ』(原題:Snatch)は、ガイ・リッチー監督が手掛けた犯罪コメディ映画で、イギリスの裏社会を舞台に、ダイヤモンドを巡る騒動を描く群像劇である。大きなダイヤモンドを盗み出した泥棒を中心に、ボクシングのプロモーター、ギャング、窃盗団など、多種多様なキャラクターたちが入り乱れ、それぞれの思惑が複雑に絡み合うストーリーが展開される。
キャストにはブラッド・ピット、ジェイソン・ステイサム、ベニチオ・デル・トロなど、豪華俳優陣が集結。特にブラッド・ピットは、理解不能な英語を話すアイリッシュ・トラベラーのボクサー、ミッキー役で強烈なインパクトを残し、キャリアの中でも特に個性的な役柄として知られる。本作は独特の編集技法やテンポの速い物語展開、そしてブラックユーモアを特徴とし、公開当時からカルト的な人気を博した。興行収入は世界で約8,300万ドル(当時のレートで約90億ドル)を記録し、ガイ・リッチー監督の代表作の一つとして、現在でも幅広い支持を受けている。
『スナッチ』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
ダイヤモンド強盗で大きな獲物を得たフランキー・フォー・フィンガーズ(ベニチオ・デル・トロ)は、そのダイヤを売却するためロンドンに向かう。しかし、彼の動向を監視する者たちが複数存在し、事態は思わぬ方向に転がっていく。一方、ボクシングのプロモーターであるトルコ(ジェイソン・ステイサム)と相棒トミー(スティーヴン・グレアム)は、八百長試合を進めるため、アイリッシュ・トラベラーのミッキー(ブラッド・ピット)をボクサーとして引き込む。だが、予測不能なミッキーの行動がすべてを狂わせていく。
さらに、凶暴なギャングのブリック・トップ(アラン・フォード)、間抜けな窃盗団、ロシア人の武器商人など、個性豊かなキャラクターたちがダイヤを巡って暗躍する。各自の思惑が複雑に交錯する中、事態は混沌を極め、予測不能な結末へと突き進む。ブラックユーモアと皮肉に満ちた物語が疾走感あふれるテンポで描かれる、イギリスの裏社会を舞台にした犯罪群像劇である。
『スナッチ』の監督・主要キャスト
- ガイ・リッチー(32)監督
- ジェイソン・ステイサム(33)トルコ
- ブラッド・ピット(36)ミッキー・オニール
- ベニチオ・デル・トロ(33)フランキー・フォー・フィンガーズ
- スティーヴン・グレアム(27)トミー
- アラン・フォード(62)ブリック・トップ
- デニス・ファリーナ(62)カズン・アヴィ
- ラデ・シェルベッジア(54)ボリス・ザ・ブレイド
(年齢は映画公開当時のもの)
『スナッチ』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 5.0 ★★★★★ |
・大切な人と観たい | 2.0 ★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 4.0 ★★★★☆ |
・刺激的! | 5.0 ★★★★★ |
・ガイ・リッチーの世界観 | 5.0 ★★★★★ |
ポジティブ評価
『スナッチ』は、ガイ・リッチー監督の個性が際立つスタイリッシュ犯罪コメディとして高く評価されている。テンポの良い編集と巧妙に絡み合う群像劇のストーリーテリングは視聴者を飽きさせない。複数の視点を通じて進行しながら、最終的に見事な形で収束する物語の構成力が光る。リッチー特有のウィットに富んだ台詞とイギリスらしいブラックユーモアは本作の魅力の一つであり、視聴者に笑いとスリルを提供する。
ブラッド・ピットは、奇妙で理解不能なアクセントを持つアイリッシュ・トラベラーのミッキーを圧倒的な存在感で演じ、シリアスさとコミカルさを巧みに織り交ぜたキャラクターを作り上げた。ジェイソン・ステイサムの冷静な語り口調も作品の語り部として効果的。
本作のビジュアルや音楽のセンスも見逃せない。モンタージュやスローモーションを駆使した映像表現がスタイリッシュで、サウンドトラックの選曲も物語の雰囲気と完璧にマッチしている。これらの要素が組み合わさることで、『スナッチ』は単なる犯罪映画の枠を超えた、エネルギッシュで記憶に残る作品に仕上がっている。
ネガティブ評価
『スナッチ』は群像劇。多数のキャラクター視点やプロットが多層的に絡み合うため、同ジャンルに慣れていない視聴者や、「ブラピの映画!」と思って視聴を始めたファンにとっては、ストーリーが複雑すぎると感じるかもしれない。特に序盤は多くの登場人物が一気に紹介されるため、人物関係を把握するのに時間がかかり、混乱を招くという声もある。
随所に散りばめられたブラックユーモアも好みによるか。特に暴力的な描写や倫理的に曖昧なキャラクターたちの行動に抵抗感がある視聴者は不快に映ることもあるかもしれない。
映画全体がスタイル重視であるため、感情的な深みやキャラクターの成長といった要素が薄く感じられるという批評もある。
こぼれ話
ブラッド・ピットは『ファイト・クラブ』(1999年)の撮影後に、ガイ・リッチー作品の大ファンであることを公言し、自ら出演を希望した。しかし、イギリス英語のアクセントに苦戦したため、監督が「理解不能なアクセントを持つキャラクター」に設定を変更し、それが結果的にミッキーのユニークな個性につながったという。
映画の撮影は低予算で進めら、ガイ・リッチー監督は限られたリソースを最大限に活用した。登場するキャラクターたちが乗るボロボロの車や、狭いロケーションでの撮影は、作品にリアルな雰囲気を与える要因となった。
一方で、作中に登場するダイヤモンドの小道具は実際に高級な品。これには高額な保険がかけられており、撮影中は厳重に管理されていたという。このダイヤは映画の象徴的なアイテムとなり、多くのキャラクターの運命を左右する重要な役割を果たしている。
本作の成功により、ガイ・リッチーは一躍世界で注目の映画監督となり、その後のハリウッドでの活躍のきっかけをつかむこととなった。『スナッチ』は、低予算ながら創意工夫で作り上げた映画として、映画制作の裏話にも注目が集まる作品となっている。
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