1998年公開の『ラッシュアワー』(原題:Rush Hour)は、ブレット・ラトナー監督が手掛けたアクションコメディ映画で、ジャッキー・チェンとクリス・タッカーの異色コンビが織りなすユーモアとアクションが魅力の作品である。物語は、中国領事の娘が誘拐された事件をきっかけに、ロサンゼルスで捜査に挑む香港警察のリー刑事(ジャッキー・チェン)と、口達者なアメリカの刑事カーター(クリス・タッカー)の活躍を描く。
言語や文化の壁を越えて協力する二人の掛け合いは、笑いと感動を生む一方、ジャッキー・チェンによるキレのあるスタントアクションが物語を引き締める。本作は興行的に大成功を収め、全世界で約2億4,400万ドル(当時のレートで約300億円)の収益を記録。異文化の違いを笑いに変えた軽快なストーリーと、ユニークなキャラクターたちが視聴者に印象を残した。
『ラッシュアワー』は、その後2本の続編が制作され、シリーズ化されるほどの人気を獲得。アクション映画とコメディの要素を絶妙に融合させたエンターテインメント作品として、現在でも多くの人々に愛される名作である。
『ラッシュアワー』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
香港で犯罪組織を追っていたリー刑事(ジャッキー・チェン)は、中国領事ハンの信頼を得ている敏腕刑事。そんな彼がロサンゼルスに派遣されることになるのは、ハン領事の幼い娘スー・ヤンが誘拐されるという衝撃的な事件が発生したため。アメリカFBIはリーの捜査への参加を嫌がり、彼を足止めするために、地元のロサンゼルス警察からお調子者で問題児の刑事ジェームズ・カーター(クリス・タッカー)を彼の相棒として送り込む。
初対面から噛み合わない二人は、言語や文化の違い、さらには性格の相違から何度も衝突を繰り返す。しかし、次第にお互いを認め合い、協力しながら誘拐事件の真相に迫っていく。捜査の過程で、事件の背後には巨大な犯罪組織の影があることが判明。二人は派手なアクションと独特のコンビネーションで次々と困難を乗り越え、スー・ヤンの救出に挑む。
『ラッシュアワー』の監督・主要キャスト
- ブレット・ラトナー(29)監督
- ジャッキー・チェン(44)リー刑事
- クリス・タッカー(26)ジェームズ・カーター刑事
- トム・ウィルキンソン(50)トーマス・グリフィン / ジュンタオ
- エリザベス・ペーニャ(38)タニア・ジョンソン巡査
- ケン・レオン(28)サング
- ティジ・マ(36)ハン領事
- ジュリア・スー(12)スー・ヤン
(年齢は映画公開当時のもの)
『ラッシュアワー』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 5.0 ★★★★★ |
・大切な人と観たい | 3.0 ★★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 2.0 ★★☆☆☆ |
・ノンストップの痛快アクション | 5.0 ★★★★★ |
・王道ポリスバディームービー | 5.0 ★★★★★ |
ポジティブ評価
ジャッキー・チェンとクリス・タッカーの個性が際立つ掛け合いが本作の最大の魅力である。ジャッキー・チェンは、これまでの作品で見せてきた激しいスタントを本作でも存分に発揮し、華麗なカンフーアクションで視聴者を魅了する。一方で、クリス・タッカーの軽快でユーモアあふれるトークと快活な演技が物語に絶妙なテンポを加えている。二人の対照的なキャラクターが織り成すコンビネーションは笑いと爽快感を与える。
ストーリーは誘拐事件を軸にしながらも、重くなりすぎずテンポの良い展開。舞台となるロサンゼルスの多様なロケーションを活かした撮影や、迫力あるアクションシーンの数々も、本作のエンターテインメント性を高めている。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
『ラッシュアワー』に対するネガティブ評価は特にないが(ネットを見渡してもこれを悪く言う評価は見当たらない、誰もが楽しめる親しみやすい作品)、どうしても強いて上げるとすると、ジャッキー・チェンのカンフーが香港時代と比較するとやや大人し目。アメリカ香港の文化の違いだけでなく、公開時の年齢(44歳)も多少の影響があるかも。カンフーをがっつりみたい人は香港映画を探すとよりハッピーになれる。
こぼれ話
ジャッキー・チェンとクリス・タッカーのコンビは、撮影前から予測不能な化学反応を期待されていたものの、二人は当初、互いのコミュニケーションに苦労していたという。ジャッキー・チェンはタッカーの早口の英語に戸惑い、一方のタッカーはジャッキーの訛りを理解するのに苦戦した。しかし、撮影が進むにつれて自然な掛け合いが生まれ、二人のユニークなコンビネーションが映画の大きな魅力となった。
ジャッキー・チェンは本作でもスタントをほぼ全て自ら行い、撮影中にアクションシーンの安全性や振り付けに関する提案を積極的に行っていた。彼の代表的なアクロバットシーンの一つである、ロサンゼルスの大使館での派手なアクションは、撮影中に何度もリハーサルを重ねて完成した。
一方、クリス・タッカーは即興のアドリブを多用することで知られ、本作でも数々のユーモアあふれるシーンを生み出した。特に「ワルツを踊るような動きで銃撃戦を避ける」というアイデアはタッカー自身が提案したもので、現場で監督とジャッキーを笑わせながら撮影されたという。
興行的に大成功を収めた『ラッシュアワー』は、続編の製作が即座に決定され、シリーズ化されるほどの人気を得た。映画の大ヒットをきっかけに、ジャッキー・チェンはハリウッドでの知名度をさらに高め、タッカーはコメディ俳優としての地位を確立した。
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