ライフ・イズ・ビューティフル (1997)の紹介・評価・レビュー

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家族ドラマ戦争ドラマ

“人生が美しい”と感じさせる戦争ドラマ ---

1997年公開の『ライフ・イズ・ビューティフル』(原題:La vita e bella)は、ロベルト・ベニーニ監督・主演によるイタリア映画で、ナチスの占領下で繰り広げられる感動的なヒューマンドラマである。物語は、明るく機転の利く主人公グイド(ロベルト・ベニーニ)が、家族を愛する気持ちとユーモアの力で、過酷な状況を乗り越えようと奮闘する姿を描く。

物語の前半では、第二次世界大戦前のイタリアを舞台に、グイドとドーラ(ニコレッタ・ブラスキ)のロマンティックで愉快な恋愛模様が描かれる。しかし戦争が激化し、グイドとその息子ジョズエは収容所に送られる。そこでグイドは、息子の心に希望を与えるため、過酷な現実を「ゲーム」として見せることを思いつく。

本作は、コメディとシリアスなテーマを見事に融合させた作品として高く評価され、第71回アカデミー賞で外国語映画賞を含む3部門を受賞。また、全世界で約2億3,000万ドル(当時のレートで約280億円)の興行収入を記録し、イタリア映画史上に残る名作となった。戦争という悲劇の中でも人間の尊厳と愛の力を信じることの重要性を視聴者に訴えかける、感動的な映画である。

『ライフ・イズ・ビューティフル』のあらすじ紹介(ネタバレなし)

1930年代のイタリア。陽気でユーモアにあふれる青年グイド(ロベルト・ベニーニ)は、小さな町で偶然出会った美しい女性ドーラ(ニコレッタ・ブラスキ)に一目惚れする。何度も偶然を装いながらドーラに近づき、グイドは彼女を笑顔にし続ける。やがて二人は結ばれ、息子ジョズエが生まれ、幸せな家庭を築く。しかし、ナチスの影がヨーロッパに広がる中、グイドとその家族にも戦争の恐怖が押し寄せる。
ユダヤ人であるグイドとジョズエは収容所に送られ、ドーラも自ら夫と息子を追いかけて過酷な収容所生活に身を投じる。絶望的な状況の中、グイドは息子ジョズエに真実を隠し、全てを「楽しいゲーム」に見立てることを思いつく。彼は「この収容所でのルールを守ればポイントが貯まり、優勝すれば戦車がもらえる」と説明し、ジョズエに生きる希望と笑顔を与え続ける。

命の危険が迫る中でも、グイドはユーモアと知恵を駆使して息子を守り抜こうとする。愛する家族のために、グイドは最後まで希望を失わない。その姿がジョズエに与えた影響と、物語の結末が、視聴者の心に深い感動を残す感動的なヒューマンドラマである。

『ライフ・イズ・ビューティフル』の監督・主要キャスト

  • ロベルト・ベニーニ(45)監督
  • ロベルト・ベニーニ(45)グイド・オレフィス
  • ニコレッタ・ブラスキ(37)ドーラ
  • ジョルジョ・カンタリーニ(5)ジョズエ・オレフィス
  • ジャンフランコ・ヴァロイ(66)エリゼオ・オレフィス
  • ホルスト・ブッフホルツ(65)ドクター・レッシング
  • セルジオ・ビニ・ブストリッチ(35)バルトロメオ
  • マリサ・パレデス(52)学校の校長

(年齢は映画公開当時のもの)

『ライフ・イズ・ビューティフル』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 3.0 ★★★☆☆
・大切な人と観たい 5.0 ★★★★★
・ひとりでじっくり 4.0 ★★★★☆
・切ない映像と優しい音楽 5.0 ★★★★★
・心を打つ 5.0 ★★★★★

ポジティブ評価

『ライフ・イズ・ビューティフル』には、笑いと涙、そして深い感動がある。戦争という悲劇的な背景を舞台にしながらも、家族愛や人間の尊厳を描いた普遍的なテーマが幅広い世代から愛される理由だ。グイドというキャラクターを通じて「ユーモアが持つ力」を視聴者に訴えた。
本作の最大の魅力は、息子ジョズエを守るためにグイドが行う「ゲーム」にある。ロベルト・ベニーニの演技はシリアスなテーマの中にコメディ要素を取り入れた。過酷な収容所生活を全てゲームとして見せることで息子に希望を与える父親の姿が多くの視聴者に感動を与えた。
ロベルト・ベニーニはこの作品で第71回アカデミー主演男優賞を獲得

この作品の評価に音楽が欠かせない。同アカデミー賞で音楽賞を受賞したニコラ・ピオヴァーニによる楽曲は、美しく切なく、イタリアの町並みを再現した映像に旋律を乗せて物語を彩った。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価

『ライフ・イズ・ビューティフル』は、ユーモアを通じて”人生が美しい”ことを示した感動作である。一方でホロコーストを題材にしたことで、とくに過酷な現実を知る視聴者からは疑問の声も。センシティブな話題であるため若干の批判的な声もある。
「優しい嘘」について、現実を伝えるべきか否かのジレンマは、現代社会のあらゆる場面(たとえば病床の患者に対して、など)においても通ずるテーマ。描かれる子供が5歳であることを考慮すると肯定する視聴者が大半ではあるが、手放しで歓迎できない視聴者も一定数いる。

こぼれ話

主人公グイドを演じたロベルト・ベニーニにとって、この作品は極めて個人的なものであった。ベニーニの父親は第二次世界大戦中に実際に収容所に送られた経験を持ち、彼はその話を聞きながら育ったという。父親が体験した過酷な状況にもかかわらず、ユーモアの力で家族を支えたという背景が、本作の着想に大きな影響を与えた。
また、ベニーニの妻であるニコレッタ・ブラスキが、劇中でドーラ役として夫婦共演している点も注目ポイント。実生活でも夫婦である二人の自然なやり取りが、スクリーン上でも感動的な家族の絆として表現されている。ベニーニは「ドーラ役は彼女以外に考えられなかった」と語っている。
映画のタイトル『ライフ・イズ・ビューティフル』は、トルストイの言葉「人生は美しい」をベニーニが引用したものだとされる。このタイトルには、どんな困難な状況下でも人生の美しさを見つけ出すというメッセージが込められている。

映画公開後、ベニーニはアカデミー賞の授賞式で外国語映画賞を受賞した際、壇上で椅子の上を飛び跳ねるというユーモラスなパフォーマンスを披露し、大きな話題となった。彼の陽気で情熱的な姿は、まさに作品で描かれるグイドそのものだったと言える。

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