アントニオ・バンデラスが蘇らせる”快傑ゾロ” ---
1998年公開の『マスク・オブ・ゾロ』(原題:The Mask of Zorro)は、マーティン・キャンベル監督によるアクションアドベンチャー映画で、伝説的なヒーロー「ゾロ」を新たな世代に蘇らせた作品である。アントニオ・バンデラス、アンソニー・ホプキンス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズが主演を務め、壮大な冒険と復讐のドラマ、そしてロマンスが詰まった物語が描かれる。
物語は、初代ゾロであるドン・ディエゴ・デ・ラ・ベガ(アンソニー・ホプキンス)が、自らの後継者として無法者のアレハンドロ(アントニオ・バンデラス)を選び、彼を鍛え上げるところから始まる。かつて自分を陥れた宿敵モンテロ(スチュアート・ウィルソン)への復讐と、民衆を守るために、アレハンドロは新たな「ゾロ」として戦いに挑む。一方で、モンテロの養女エレナ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)とのロマンスも物語を彩る。
本作は、美しい剣技アクションやカリスマ性あふれるキャラクター、豪華な衣装や美術が高く評価され、世界中でヒットを記録。興行収入は全世界で2億5,000万ドル以上に達し、観客に「ヒーロー映画」の新たな魅力を提示した。アクションとロマンスが融合したエンターテインメントの傑作として、今なお多くの人に愛される作品である。
『マスク・オブ・ゾロ』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
19世紀初頭、カリフォルニアの地では民衆がスペイン統治下で苦しむ中、伝説の剣士ゾロが現れ、権力者たちの横暴に立ち向かっていた。しかし、ゾロことドン・ディエゴ・デ・ラ・ベガ(アンソニー・ホプキンス)は、宿敵モンテロ総督(スチュアート・ウィルソン)の策略によって妻を殺され、娘を奪われた末に投獄される。それから20年後、脱獄したディエゴは、かつてゾロに憧れを抱いた若き無法者アレハンドロ・ムリエタ(アントニオ・バンデラス)を後継者として選び、新たなゾロとして鍛え上げる。
一方、モンテロは養女として育てたエレナ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)を伴い、民衆を再び支配下に置こうと陰謀を企てていた。エレナは実はディエゴの娘であり、彼女の真実を知るディエゴとアレハンドロは、モンテロの計画を阻止し、エレナを守るために行動を開始する。
アレハンドロは新たな「ゾロ」として剣術や機知を駆使し、モンテロの計画に立ち向かう中、エレナとのロマンスも芽生えていく。果たして彼らは民衆を解放し、モンテロに復讐を果たすことができるのか。英雄ゾロの魂を受け継ぐ物語が、迫力のアクションと感動的なドラマを織り交ぜながら展開される。
『マスク・オブ・ゾロ』の監督・主要キャスト
- マーティン・キャンベル(54)監督
- アントニオ・バンデラス(38)アレハンドロ・ムリエタ / ゾロ
- アンソニー・ホプキンス(60)ドン・ディエゴ・デ・ラ・ベガ / ゾロ
- キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(28)エレナ・モンテロ
- スチュアート・ウィルソン(51)ラファエル・モンテロ
- マット・レットン(37)ハリソン・ラブ大尉
- ディエゴ・サラスール(23)ホアキン・ムリエタ
(年齢は映画公開当時のもの)
『マスク・オブ・ゾロ』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 5.0 ★★★★★ |
・大切な人と観たい | 3.0 ★★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 2.0 ★★☆☆☆ |
・剣術アクション | 5.0 ★★★★★ |
・情熱的な恋 | 4.0 ★★★☆☆ |
ポジティブ評価
『マスク・オブ・ゾロ』は、およそ1世紀前の小説「快傑ゾロ」に登場する伝説的なヒーローを現代に蘇らせたエンターテインメント作品。ゾロはスペイン語で”キツネ”を意味し、狡猾で賢く、機知や変装を駆使した戦い方でカリフォルニア(舞台の19世紀はスペイン領)の圧政に立ち向かった。
『マスク・オブ・ゾロ』では、アクション、ロマンス、ドラマが巧みに融合し、視聴者を冒険の世界に引き込む。特にアントニオ・バンデラスの情熱的な演技は、彼のキャリアを代表するものといえる。無法者から正義の剣士へと成長していくアレハンドロを、ユーモアと情熱を交えて演じ、新たなゾロ像を見事に体現した。キャサリン・ゼタ=ジョーンズのエレナは、美しさと気高さを持ち合わせたヒロインとして印象的で、アレハンドロとのロマンスが物語に魅力を添えている。
細部まで計算された振り付けとスピーディーな展開で圧倒する剣術アクションも本作の魅力。さらに、美術や衣装も高く評価されている。19世紀のカリフォルニアを舞台にした豪華なセットや、美しく仕立てられた衣装が物語の時代背景を再現し、映画全体のビジュアル的な完成度を高めている。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
『マスク・オブ・ゾロ』は単純明快な正義のヒーロー。悪を倒すという筋書きは分かりやすい一方で、予測可能な展開が多いため、物語に新鮮味や意外性を求める視聴者には物足りなく感じられる嫌いがある。海外レビューを見渡すと、「苦労も忍耐も教訓もなく」「7歳の男の子が浴槽の中でアクションフィギュアで遊んでいるようなもの」とまで評されている(ほぼ悪口w)。しかしながら、少年心をくすぐるこのプロット自体が製作者の意図だと思えるし、そこは合うか合わないか、視聴者の好みの問題だろう。
美しきヒロインを演じたキャサリン・ゼタ=ジョーンズについて、スパニッシュ系の俳優を起用しなかった点について海外では不満の声も(彼女はウェールズとアイルランドにルーツを持つイギリス人)。
こぼれ話
ゾロ役のアントニオ・バンデラスは、この役を演じるにあたり本格的な剣術トレーニングを受け、アクションシーンのほとんどはスタントを使わずに自ら演じた。彼が演じた新世代ゾロのスタイルは、「洗練されたユーモア」と「情熱的なカリスマ性」が特徴で、従来のゾロ像に新たな魅力を加えた。
キャサリン・ゼタ=ジョーンズは、本作が彼女のハリウッドでの出世作となった。彼女の演じるエレナは、美しさだけでなく知性と強さを備えており、アントニオ・バンデラスとのダンスや剣を交えたシーンが映画の見どころの一つとなっている。特に、二人の剣戟からロマンティックな展開へと移行するシーンは、その美しさに撮影現場でスタッフが沸き上がったという。
撮影はメキシコで行われ、豪華なセットや衣装は19世紀のカリフォルニアの雰囲気を再現している。ゾロの象徴的なマスクとマントのデザインは、クラシックな要素を取り入れつつ現代的にアレンジされ、映画公開後にはコスチュームがファンの間で話題となった。
公開後の成功を受けて2005年に続編『レジェンド・オブ・ゾロ』が制作されるなど、本作は多くの人に愛されるゾロシリーズの新たな基盤を築いた。
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