トゥルーロマンス (1993)の解説・評価・レビュー

True Romance クライムサスペンス
クライムサスペンスバイオレンス恋愛ドラマ

狂気と愛が交錯するクライムサスペンスの名作 ---

1993年公開の『トゥルーロマンス』(原題:True Romance)は、トニー・スコット監督が手掛けたクライム・ロマンス映画で、脚本をクエンティン・タランティーノが執筆したことで知られる。クリスチャン・スレーターとパトリシア・アークエットが主演を務め、激しくも切ない恋愛と過激なアクションが交錯する物語が展開される。
物語は、孤独な青年クラレンス(クリスチャン・スレーター)と、美しいコールガールのアルバマ(パトリシア・アークエット)が出会い、瞬く間に深い愛で結ばれるところから始まる。だが、クラレンスがアルバマの元客である暴力的なポン引きを殺害したことをきっかけに、二人は巨額のドラッグを手に逃亡生活を送ることになる。彼らを追うのは、麻薬組織や警察、さらには殺し屋たち。果たして二人は愛と自由を手にすることができるのか――。

本作は、タランティーノの独特なセリフ回しとスコット監督のスタイリッシュな演出が融合し、ハードボイルドでありながらもロマンティックなトーンが高く評価された。クリストファー・ウォーケンやゲイリー・オールドマン、ブラッド・ピットといった豪華キャスト陣の存在感も話題を呼び、カルト的な人気を獲得した。危険で美しい愛の物語として、多くの映画ファンに愛される一作である。

『トゥルーロマンス』あらすじ紹介(ネタバレなし)


デトロイトで孤独な生活を送る青年クラレンス(クリスチャン・スレーター)は、映画とコミックを愛する平凡な男。誕生日に訪れた映画館で、明るく自由奔放な女性アルバマ(パトリシア・アークエット)と出会い、一夜を共にする。実は彼女はコールガールだったが、二人は瞬く間に本物の愛で結ばれ、翌日には結婚を決意する。

しかし、アルバマを自由にするため、クラレンスは彼女の暴力的なポン引きであるドレクセル(ゲイリー・オールドマン)と対峙。激しい争いの末にドレクセルを殺害し、彼の手荷物を持ち帰る。しかし、その荷物の中身は膨大な量のコカインだった。これをきっかけに、二人は警察や麻薬組織、さらには殺し屋たちから命を狙われる逃亡生活を送ることになる。

二人はコカインを売りさばいて新たな人生を始めようと決意し、ロサンゼルスへ向かうがーーー。

『トゥルーロマンス』監督・主要キャスト

  • トニー・スコット(49)監督
  • クリスチャン・スレーター(24)クラレンス・ウォーリー
  • パトリシア・アークエット(25)アルバマ・ウィットマン
  • ゲイリー・オールドマン(35)ドレクセル・スパイビー
  • クリストファー・ウォーケン(50)ヴィンセンツォ・コッコッティ
  • デニス・ホッパー(57)クリフォード・ウォーリー
  • ブラッド・ピット(29)フロイド
  • ジェームズ・ガンドルフィーニ(32)ヴィルジル
  • サミュエル・L・ジャクソン(44)ビッグ・ドン

(年齢は映画公開当時のもの)

『トゥルーロマンス』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 4.0 ★★★★☆
・大切な人と観たい 4.0 ★★★★☆
・ひとりでじっくり 3.0 ★★★☆☆
・豪華キャスト 5.0 ★★★★★
・タランティーノ脚本 5.0 ★★★★★

ポジティブ評価

『トゥルーロマンス』は、激しいアクションと純愛を融合させたクライム・ロマンス映画の傑作。クエンティン・タランティーノが手掛けた脚本は、機知に富んだセリフ回しとユーモアを交えたキャラクター描写で物語を彩る。それを『トップガン』のトニー・スコット監督が洗練された映像で表現し、独自の世界観を作り上げてた。

クラレンスとアルバマというカップルは激情的でありながらもどこか純粋さを感じさせ、二人のケミストリーが本作の魅力。アルバマ役のパトリシア・アークエットは、愛らしさとタフさを兼ね備えた女性を演じ、クラレンス役のクリスチャン・スレーターは不器用ながらも情熱的な演技で魅了。その他キャストについても知名な俳優が揃い踏み、改めて見返すと見所がたくさんある。端役ではあるが、キャリア初期のブラッド・ピットも必見。

狂気とロマンス、暴力と愛が交錯する世界観をハンス・ジマーが手掛けた印象的な音楽で彩り、90年代の独特なエネルギーを感じられる作品である。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

『トゥルーロマンス』はパルプフィクション、パルプロマンスなどと評され、つまり三文小説という意味になるが、映画の文脈では概ね肯定的に使用される場合が多い。背景に複雑な動機や陰謀がなくとも、偶然や感情に突き動かされてストレートに生きる今作の登場人物たちの姿はある種のリアルで、それがスタイリッシュに描かれることによって視聴者が楽しめるエンターテイメントに仕上がっている。ただ、見方によってはやはり三文小説である。

また過激な暴力描写については、視聴者によっては不快感を覚えることがある。この作品はR18 にレーティングされている。

こぼれ話

脚本を手掛けたクエンティン・タランティーノにとって、この作品は彼の初期キャリアの重要な一歩だった。当時のタランティーノはまだ無名で、この脚本を売った資金で『レザボア・ドッグス』(1992年)を制作する足掛かりを得たという。また、タランティーノは当初、自らが監督することを希望していたが、最終的に監督はトニー・スコットに引き継がれることとなった。

クラレンス役の候補にはジョニー・デップやクリスチャン・ベールが挙がっていたが、最終的にクリスチャン・スレーターが抜擢された。一方、アルバマ役には当初ドリュー・バリモアが候補に挙がっていたが、スケジュールの都合で辞退し、最終的にパトリシア・アークエットがキャスティングされた。この二人の息の合った演技が、作品のロマンス要素を強く支える結果となった。

映画の中で最も記憶に残るシーンの一つである、クリストファー・ウォーケンとデニス・ホッパーの対峙する場面は、実際にその緊張感が現場でも漂っていたという。このシーンのユーモアと緊張が絡み合う絶妙な脚本は、タランティーノの手腕が存分に発揮されている。また、ブラッド・ピットが演じたフロイドというキャラクターは、わずかな出番ながらも非常にインパクトがあり、視聴者に強い印象を残している。この役柄は、ブラッド・ピットが即興的にアドリブを織り交ぜて演じたもので、キャリア初期の彼の才能を垣間見ることができる。

『トゥルーロマンス』は公開当初は商業的に大成功とは言えなかったが、後にカルト的人気を獲得し、現在では90年代のクライム映画の代表作として多くの映画ファンに愛されている作品となっている。

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