コンタクト(1997)の解説・評価・レビュー

Contact SF(宇宙)
SF(宇宙)

1997年公開のSF映画『コンタクト』(原題:Contact)は、ロバート・ゼメキス監督が手がけ、カール・セーガンの同名小説を原作とする作品である。ジョディ・フォスター演じる天文学者エリナー・アロウェイ(エリー)が、地球外生命体からの信号を受信し、人類初の異星文明との交信に挑む姿を描く。科学的なリアリズムを重視しつつ、「宇宙における人類の存在意義」や「信仰と科学の対立」といった哲学的なテーマを深く掘り下げている点が特徴である。

本作は、実際のSETI(地球外知的生命体探査)計画をベースにした緻密なストーリーが話題となり、興行収入は全世界で1億7,100万ドル(当時のレートで約200億円)を記録した。アカデミー賞では音響賞にノミネートされるなど、科学的なリアリズムと感動的なストーリーの融合が評価された。単なるSF映画にとどまらず、宇宙探査や科学の可能性について考えさせる作品として、現在でも高い評価を受けている。

『コンタクト』のあらすじ紹介(ネタバレなし)

幼少期から宇宙に強い関心を抱いていた天文学者エリナー・アロウェイ(ジョディ・フォスター)は、地球外知的生命体を探すSETI(地球外知的生命体探査)プロジェクトに従事していた。彼女は巨大電波望遠鏡を使い、日々宇宙からの信号を解析するが、長年にわたり成果は得られなかった。しかしある日、ベガ星系から発せられた規則的な電波信号をキャッチし、解析の結果、それが高度な知的生命体からのメッセージであることが判明する。

この発見は世界中を巻き込む一大ニュースとなり、政府や宗教団体、科学者たちの間で議論が巻き起こる。信号には、謎の設計図が含まれており、それが何を意味するのかを解読する中で、エリーは未知の存在との「コンタクト」に向けて大きな決断を迫られることになる——。

『コンタクト』の監督・主要キャスト

  • ロバート・ゼメキス(45)監督
  • ジョディ・フォスター(34)エリナー・”エリー”・アロウェイ
  • マシュー・マコノヒー(27)パーマー・ジョス
  • ジョン・ハート(57)S・R・ハデン
  • ジェームズ・ウッズ(50)マイケル・キッツ
  • トム・スケリット(64)デイヴィッド・ドラムリン
  • デヴィッド・モース(44)テッド・アロウェイ
  • ウィリアム・フィクナー(31)ケント・クラーク

(年齢は映画公開当時のもの)

『コンタクト』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 2.0 ★★☆☆☆
・大切な人と観たい 3.0 ★★★☆☆
・ひとりでじっくり 5.0 ★★★★★
・リアル版”未知との遭遇” 5.0 ★★★★★
・科学と宗教の対立 5.0 ★★★★★

ポジティブ評価

『コンタクト』は、単なるSF映画ではなく、科学と人間の探究心を真正面から描いた。カール・セーガンの原作を基にしたストーリーは、SETI(地球外知的生命体探査 ※参考外部リンク:wikipedia)のリアルな研究をベースにしており、SFとしての説得力を持ちながらも、宇宙に対する純粋な憧れや哲学的なテーマを深く掘り下げている。特に「人類は宇宙においてどのような存在なのか?」という問いかけは、本作の根幹をなしており、観る者に強い余韻を残す。

本作の大きな魅力がジョディ・フォスターの演技。エリーというキャラクターは、科学者としての冷静さと未知の存在に対する純粋な情熱を両立し、マシュー・マコノヒー演じるパーマー・ジョスとの対話を通じて、「科学と宗教」「証拠と信念」といったテーマが掘り下げられる。

映像表現においても、電波望遠鏡が宇宙からの信号を受信するシーンや、壮大な宇宙の広がりを映し出すビジュアルは美しく、まるで自分自身が宇宙の神秘に触れているかのよう。科学的なリアリズムを追求しつつ、視覚的な魅力も損なわないバランスの取れた作品である。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

『コンタクト』は、派手なアクションやスリリングな展開はほとんどなく、物語の大半は科学的な議論や政治的な駆け引き、哲学的な対話によって進行する。そのため、壮大な宇宙冒険を期待して観ると意外と地味。「科学 vs. 信仰」というテーマを丁寧に長く扱い、それが科学的リアリズムと融合された意欲作で、人によっては知的な冒険映画で、また別の人には退屈な作品だと映るかもしれない。全体のトーンは終始シリアス。

こぼれ話

本作の原作者であり、天文学者でもあるカール・セーガンは、映画の科学描写が正確であるよう徹底的に監修した。SETI(地球外知的生命体探査)プロジェクトの研究者とも連携し、科学者の視点をリアルに表現しようとした結果、本作の科学的な正確性はSF映画の中でも群を抜いたものになっている。しかし、あまりにも科学寄りになりすぎるのを避けるため、監督のロバート・ゼメキスは「映画としてのエモーショナルな要素」もバランスよく取り入れたという。

また、映画の撮影では、実際のSETIの研究施設や、プエルトリコの「アレシボ天文台」、ニューメキシコ州の「VLA(超大型干渉電波望遠鏡群)」がロケ地として使用された。特にVLAの壮大なアンテナ群は、映画の象徴的なビジュアルとなり、科学ドキュメンタリーさながらのリアリティを加えている。なお、撮影当時、SETIの研究者たちは「映画スタッフが思った以上に科学を真剣に学んでいる」と驚いたらしい。

主演のジョディ・フォスターは、役作りのために実際の女性天文学者と交流し、科学者としての考え方や姿勢を学んだ。彼女は後に「科学者とは、宇宙の謎を解き明かす詩人のようなものだ」と語っている。一方で、マシュー・マコノヒー演じるパーマー・ジョスの役柄は、原作とはやや異なるアプローチが取られており、より哲学的な対話の要素を強調するために調整されたという。

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