フェノミナン(1996)の解説・評価・レビュー

Phenomenon SF(超・能力)
SF(超・能力)ヒューマンドラマ

ジョン・トラボルタの演技が光るヒューマンドラマ ---

1996年公開の『フェノミナン』(原題:Phenomenon)は、ジョン・タートルトーブ監督、ジョン・トラボルタ主演のヒューマンドラマ。突然、超常的な知能を得た男の数奇な運命を描く感動作であり、科学と人間ドラマを融合させた作品として話題を集めた。

物語は、田舎町に住む平凡な男ジョージ・マレー(ジョン・トラボルタ)が、ある夜、謎の閃光を浴びたことをきっかけに、超人的な知性と能力を得るところから始まる。しかし、その変化は周囲の人々との関係を大きく変え、彼は「奇跡」と「異端」の狭間で苦悩することになる。

本作は、派手なSF要素ではなく、突然変異的な知能の覚醒を通して、人間の本質や社会の偏見を描いたヒューマンドラマとして評価された。エリック・クラプトンによる主題歌「Change the World」の美しいメロディーが印象的な作品となっている。興行的にも成功し、全世界で1億5,200万ドル(当時のレートで約145億円)の収益を上げた。

『フェノミナン』のあらすじ紹介(ネタバレなし)


カリフォルニアの田舎町で自動車整備工を営むジョージ・マレー(ジョン・トラボルタ)は、気さくで優しい性格の持ち主。町の人々に愛されながら、平凡な日常を送っていた。しかし、彼の人生は誕生日の夜に一変する。空を見上げた瞬間、突然強烈な閃光が彼を包み込むのだった。

翌日から、ジョージには驚異的な知能と能力が備わり始める。本を読むだけで瞬時に理解し、驚くべき発明を次々と生み出し、さらには念動力まで発揮するようになる。彼の変化は町の人々を驚かせるが、次第に「普通ではない」存在への不安と疑念が広がり、彼は周囲から距離を置かれるようになる。

そんな中、ジョージは一人の女性レイス(キーラ・セジウィック)と心を通わせようとするが、自らの変化と世間の目に苦しむ日々が続く。彼の能力の正体とは何なのか、そして彼はこの力とどう向き合うのか——。

『フェノミナン』の監督・主要キャスト

  • ジョン・タートルトーブ(33)監督
  • ジョン・トラボルタ(42)ジョージ・マレー
  • キーラ・セジウィック(31)レイス・ペンナミン
  • フォレスト・ウィテカー(35)ネイト・ポープ
  • ロバート・デュヴァル(65)ブランデー先生
  • ジェフリー・デマン(49)ジョン・リンゴールド博士
  • リチャード・カイリー(72)ウェリン医師
  • ブレント・スパイナー(47)ボブ医師

(年齢は映画公開当時のもの)

『フェノミナン』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 4.0 ★★★★☆
・大切な人と観たい 4.0 ★★★★☆
・ひとりでじっくり 4.0 ★★★★☆
・ジョン・トラボルタ 5.0 ★★★★★
・「Change the World」 4.0 ★★★★☆

ポジティブ評価

『フェノミナン』は、SF的な要素を持ちながらも、人間の感情や社会の在り方を深く掘り下げたヒューマンドラマとして仕上がっている。派手なアクションや特殊効果に頼るのではなく、一人の平凡な男が突如として超常的な知能を得たことで周囲の人々とどう向き合うのかを描き、その過程で人間の本質に迫る物語が展開される。
ジョン・トラボルタの演技が、本作の魅力を大きく支えている。『パルプ・フィクション』(1994年)で復活を遂げた彼は、本作では派手なカリスマ性ではなく、繊細で内面的な葛藤を抱える普通の男としての存在感を見せる。ジョージ・マレーは、突如として手にした知識と能力に戸惑いながらも、それを人のために活かそうとするが、周囲の反応が次第に変わっていく。トラボルタは、その微妙な心理の変化を抑えた演技で表現し、視聴者に共感を与える。

映画全体を包み込む温かみのある映像と音楽も印象的だ。特に、エリック・クラプトンの「Change the World」は、本作のテーマを象徴する楽曲として使用され、映画の余韻をより感動的なものにしている。派手さはないが、静かに心に残る作品であり、「奇跡」とは何かを改めて考えさせられる一作となっている。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

物語の中心となる「平凡な男が突然、超人的な知能を得る」という設定は魅力的だが、その理由やメカニズムについて科学的な説明がほとんどなく、観る人によっては「結局、どういうこと?」と感じるかもしれない。物語は人間ドラマに重きを置いているため、SF要素を期待するとやや肩透かしを食らう可能性がある。
ジョージの変化に対する周囲の反応もやや過剰か。彼が善意で発明や研究を行い、町の人々に貢献しようとしているにもかかわらず、彼を恐れたり疑ったりする人々の反応が不自然に感じられるかもしれない。

こぼれ話

『フェノミナン』は、ジョン・トラボルタのキャリアにおいて特別な意味を持つ作品のひとつである。彼は『パルプ・フィクション』(1994年)で復活を遂げた後、アクション映画『ブロークン・アロー』(1996年)や本作のようなヒューマンドラマに挑戦し、演技面での評価を高めた。

映画のテーマ曲「Change the World」は、エリック・クラプトンの代表曲のひとつとして知られるが、実は当初、映画のために書かれたわけではなかった。作曲はベイビーフェイスとゴードン・ケネディによるもので、クラプトンがこの曲を歌うことになったのは、本作のプロデューサーの強い希望によるものだった。結果として、映画と楽曲は見事にマッチし、「Change the World」はグラミー賞最優秀レコード賞を受賞するほどの大ヒットとなった。

本作は、SF的な要素を含みながらも、人間ドラマに重点を置いた作品となっているが、ジョン・トラボルタは撮影当初、「もっとSF的な演出を強めたバージョンを考えていた」と語っている。しかし、監督のジョン・タートルトーブは「この映画は、人間の可能性や心の交流を描くことが重要」と考え、あえて超能力や科学的な説明を強調しすぎない方向性を選んだ。

また、ロバート・デュヴァル演じるブランデー先生の役どころは、脚本の段階ではもっと小さな役だったが、デュヴァルの演技に感銘を受けた監督が、彼の登場シーンを増やしたという逸話もある。結果として、ブランデー先生は映画の中でジョージの最大の理解者のひとりとなり、物語に厚みを加えた。

『フェノミナン』は、興行的にも成功を収めたが、当時は「同じ年に公開された『インデペンデンス・デイ』の影に隠れてしまった映画」とも言われた。しかし、年月が経つにつれ、その温かいストーリーとトラボルタの演技が再評価され、今でも多くのファンに愛され続けている。映画を観終わった後、ふと「もし自分が突然、驚異的な知能を得たら?」と考えずにはいられない、そんな余韻を残す作品である。

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