12モンキーズ(1995)の解説・評価・レビュー

12 Monkeys SF(タイムスリップ)
SF(タイムスリップ)SF(近未来)ミステリーサスペンス

タイムスリップ・サスペンス映画の名作 ---

1995年公開の『12モンキーズ』(原題:12 Monkeys)は、テリー・ギリアム監督、ブルース・ウィリス主演のSFサスペンス映画。フランスの短編映画『ラ・ジュテ』(1962年)を基に、時間旅行、ウイルス感染、パラドックスといった要素を絡めながら、人間の記憶と運命をめぐるミステリアスな物語を展開する。

物語の舞台は2035年。人類の大半が謎のウイルスによって死滅し、生存者は地下生活を余儀なくされていた。囚人ジェームズ・コール(ブルース・ウィリス)は、ウイルスの発生源を特定するため、過去へ送り込まれるが、時空の混乱により誤った時代に到着してしまう。やがて彼は、「12モンキーズ」という謎の組織の存在を知るが、その真相は予測不能な展開を迎える。

共演には、狂気じみた演技で強烈な印象を残したブラッド・ピット(本作でアカデミー賞助演男優賞にノミネート)や、知的な精神科医を演じるマデリーン・ストウが名を連ねる。監督のテリー・ギリアムは、『未来世紀ブラジル』(1985年)に続き、独特な世界観で視聴者を引き込むことに成功した。興行的にも成功し、全世界で約1億6,800万ドル(当時のレートで約160億円)を記録。SF映画としての完成度の高さと予測不能なストーリー展開により、今なお語り継がれる作品となっている。

『12モンキーズ』あらすじ紹介(ネタバレなし)


2035年、人類は謎のウイルスによって絶滅寸前に追い込まれ、生存者たちは地下での生活を余儀なくされていた。政府は、過去に戻ってウイルスの発生源を特定し、ワクチン開発の手がかりを得るために、囚人ジェームズ・コール(ブルース・ウィリス)をタイムトラベル実験に志願させる。

しかし、送還システムの誤作動によって、彼は本来の目的地である1996年ではなく、6年前の1990年に到着してしまう。精神病院に収容されたコールは、そこで精神科医のキャサリン・ライリー(マデリーン・ストウ)と出会い、自分の未来から来たという主張を信じてもらおうとする。しかし、彼の異常な言動により、ただの妄想癖のある男として扱われてしまう。

病院内でコールは、妄想と狂気に満ちた男ジェフリー・ゴインズ(ブラッド・ピット)と出会う。ジェフリーは「12モンキーズ」と名乗る謎の組織と関係があるようだが、その目的やウイルスとの関係は不明のままだった。やがてコールは再び時間移動を試み、1996年へと送り込まれるが、そこではさらに予測不能な事態が待ち受けていた。

コールはウイルスの真相を突き止め、人類を救うことができるのか? それとも、彼が見ている世界自体が幻想なのか? 過去と未来が交錯する中、運命に翻弄される彼の旅が続いていく——。

『12モンキーズ』の監督・主要キャスト

  • テリー・ギリアム(55)監督
  • ブルース・ウィリス(40)ジェームズ・コール
  • マデリーン・ストウ(37)キャサリン・ライリー
  • ブラッド・ピット(32)ジェフリー・ゴインズ
  • クリストファー・プラマー(70)ゴインズ博士
  • デヴィッド・モース(42)ドクター・ピーターズ
  • ジョン・セダ(25)ホセ
  • フランク・ゴーシン(62)ドクター・フレッチャー

(年齢は映画公開当時のもの)

『12モンキーズ』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 3.0 ★★★☆☆
・大切な人と観たい 3.0 ★★★☆☆
・ひとりでじっくり 4.0 ★★★★☆
・タイムトラベル 5.0 ★★★★★
・キャストの怪演技 4.0 ★★★★☆

ポジティブ評価

『12モンキーズ』は、テリー・ギリアム監督による緻密なストーリーが魅力のSFスリラーの傑作だ。タイムトラベルを題材にしながらも、派手なアクションではなく、錯綜する記憶や現実の曖昧さに焦点を当てたサスペンス要素が強く、好奇心を刺激する。

ブルース・ウィリスは、本作でいつものタフなアクションヒーロー像を封印し、不安定で追い詰められた男ジェームズ・コールを好演。彼の表情や仕草には、時間旅行の影響で精神的に疲弊し、世界に適応できない男の悲哀がにじみ出ている。一方、ブラッド・ピットは、過剰な身振り手振りと落ち着きのない話し方で、狂気に満ちたジェフリー・ゴインズを演じ、本作でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされるなど高い評価を受けた。

テリー・ギリアム監督の映像表現は、歪んだカメラアングルや独特な美術デザインにより、登場人物たちの精神状態や混乱を視覚的に伝える。近未来の荒廃した地下社会と、過去の雑然とした都市風景の対比も印象的で、時間の流れそのものが不確かなものに感じられる演出が施されている。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

『12モンキーズ』は、一般的なSF映画のように分かりやすい「過去改変」や「未来救済」の構造ではなく、意図的に混乱を誘う作りになっている。過去と未来の出来事が錯綜し、現実と妄想の境界が曖昧になるため、初見では「結局、何が起こっているのか?」と初見で混乱するかもしれない。
細かい伏線が張り巡らされているものの、全てが明確に説明されるわけではなく、視聴者によって解釈が異なる余地を残しているため、ある程度の考察を楽しめる人向けの映画と言える。

2015年には同作を基にしたテレビシリーズ『12モンキーズ』が制作され、映画とは異なる解釈のストーリーが展開された。ドラマから入った視聴者が映画版を観ると、温度差に面食らうかもしれない。

こぼれ話

『12モンキーズ』の着想は、クリス・マルケル監督によるフランスの短編映画『ラ・ジュテ』(1962年)に基づいており、静止画を多用した実験的な作品だった。そこからインスピレーションを得て、よりダイナミックな時間旅行の物語へと発展させたのが本作である。テリー・ギリアム監督は、『未来世紀ブラジル』(1985年)に続くディストピア的な世界観を構築した。

主演のブルース・ウィリスは、本作のような「追い詰められる男」を演じるのは珍しく、当初は「タフでクールな主人公像」を期待していたファンを驚かせた。ウィリスは、ギリアム監督から「お決まりのウィリス的な演技は禁止」と言われ、派手なアクションシーンを抑え、脆く不安定なキャラクターを演じることに専念したという。一方、ブラッド・ピットはジェフリー・ゴインズ役でこれまでにないエキセントリックな演技に挑戦。本作でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされるなど、一気に演技派俳優としての評価を高めた。ちなみに、彼の早口で落ち着きのない演技は、監督の指示で撮影前にカフェイン摂取量を増やすことで生まれたという。

また、映画のタイトルにもなっている「12モンキーズ」という組織の存在は、物語の重要な要素となっているが、当初の脚本では全く異なる設定が考えられていた。ギリアム監督は「観客がタイトルから想像するものと、実際の物語にズレを持たせたい」と考え、あえてミスリードを誘う形に仕上げたという。そのため、映画を最後まで観ると、「タイトルが示していたものの意味は…?」と改めて考えたくなる仕掛けが施されている。

撮影はフィラデルフィアとボルチモアで行われ、特に未来世界の地下シーンは、廃墟となっていた発電所や未使用の公共施設を利用して撮影された。ギリアム監督は「未来の社会が完全に崩壊したのではなく、無理やり機能を維持しようとしている」世界観を描きたかったため、荒廃していながらもテクノロジーがかろうじて残る独特のセットデザインを採用した。

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