TENET テネット(2020)の解説・評価・レビュー

テネット SF(タイムスリップ)
SF(タイムスリップ)SF(近未来)サスペンススリラースパイアクション

時間が逆行する新感覚SFアクション ---

『TENET テネット』は2020年に公開されたクリストファー・ノーラン監督によるSFアクション映画。時間の逆行という斬新な概念を基に、未来から送られたテクノロジーをめぐるスパイの物語が描かれる。主演のジョン・デヴィッド・ワシントンが「主人公」と呼ばれる謎めいたエージェントを演じ、ロバート・パティンソンやエリザベス・デビッキが共演。公開当時、新型コロナウイルスの影響を受けた映画業界の中で、劇場公開に踏み切った作品としても注目を浴びた。

第93回アカデミー賞では、視覚効果賞を受賞するなど技術面で高い評価を得た。総製作費約2億ドル(260億円)という大規模な予算を背景に、ノーラン監督らしい複雑なストーリーテリングと革新的なアクションシーンが話題を呼び、世界興行収入3億6,500万ドル(470億円)を記録した。

『TENET テネット』のあらすじ(ネタバレなし)


世界の終焉を阻止するために時間を逆行する技術を駆使して戦う男の物語。
主人公(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、あるミッション中のアクシデントをきっかけに、謎の組織「テネット」へと引き込まれる。そこでは、時間の流れを逆行させる特殊な技術が用いられており、未来から送り込まれる脅威に対抗していた。
新たな任務を命じられた主人公は、冷静で有能なエージェント・ニール(ロバート・パティンソン)とコンビを組み、時を超えるスケールの陰謀に挑む。任務の過程で出会うのは、謎多き武器商人アンドレイ・サトル(ケネス・ブラナー)と、その妻キャット(エリザベス・デビッキ)。キャットの協力を得ながら進むうち、敵の計画は単なるテロではなく、過去と未来を交差させて現在を崩壊させる壮大なものだと判明する。
時の逆行を繰り返す中で、過去と未来の出来事が次第に交錯し、すべての選択が人類の存続に直結する。現実の常識を覆す時間操作の戦いの中で、主人公は次第に自らの役割を理解し、人類の未来を懸けた究極の決断を迫られることになる。

『TENET テネット』の監督と主要キャスト

  • クリストファー・ノーラン(50)監督
  • ジョン・デヴィッド・ワシントン(36)”主人公”
  • ロバート・パティンソン(34)ニール
  • エリザベス・デビッキ(30)キャット
  • ケネス・ブラナー(59)アンドレイ・セイター
  • ディンパル・カパーディヤー(63)プリヤ
  • マイケル・ケイン(87)マイケル・クロズビー卿
  • アーロン・テイラー=ジョンソン(30)アイブス

(役者の年齢は公開時点のもの)

『TENET テネット』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 2.0 ★★☆☆☆
・大切な人と観たい 2.0 ★★☆☆☆
・ひとりでじっくり 5.0 ★★★★★
・驚きの伏線回収 5.0 ★★★★★
・映像の新体験 4.0 ★★★★☆

映像の新体験

『TENET テネット』は、クリストファー・ノーラン監督が得意とする複雑なストーリーテリングと視覚的な驚きを融合させた意欲作である。”時間の逆行”という革新的なアイデアは、これまでの映画にない新鮮な映像体験を観客に提供する。特に、逆行と順行が同時進行するアクションシーンをほぼCGなしで撮影したという緻密な設計は圧巻のひとこと。
ジョン・デヴィッド・ワシントンやロバート・パティンソンの演技も自然で、観客に登場人物の葛藤や友情を伝える力となっている。また、ルドウィグ・ゴランソンが手掛けた重厚な音楽が物語に緊張感とダイナミズムを加え、全体の没入感を高めている。ノーランらしい壮大なスケールと知的なテーマが融合した作品として高く評価された。

ネガティブまたは賛否が分かれる要素

複雑なストーリー構造ゆえに、観客に大きな理解力を要求する。特に、時間の逆行という概念が映画内で十分に説明されないため、一度の鑑賞では全容を把握しにくいという指摘が多い。2度3度の視聴をしてようやく理解できるという点では、SFアクションの名作「インセプション」に通ずるものがある。各種レビューサイトでは、理解した人、理解しようとする人(したい人)、理解できなかった人の書き込みが入り乱れている。

こぼれ話

『TENET テネット』は、クリストファー・ノーラン監督が5年以上をかけて脚本を完成させたという。撮影はCGを極力排し、実際にボーイング747型機を購入して爆破シーンを撮影するなど、リアリズムへの徹底したこだわりが見られる。

時間の逆行を表現するために、キャストやスタントチームは逆行で動く特殊な動作を訓練し、シーンの説得力を高めた。アカデミー賞では視覚効果賞を受賞し、技術面での革新性が高く評価されている。

ノーラン監督が劇場公開に強いこだわりを見せ、本作がコロナ禍における映画館復興の象徴となったことも、映画史に刻むべき出来事と言える。

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