後にミュージカル・リメイクされた児童映画の名作 ーーー
『マチルダ』(原題:Matilda)は、1996年に公開されたアメリカのファンタジー・コメディ映画で、ダニー・デヴィートが監督を務めた。ロアルド・ダールの児童文学『マチルダは小さな大天才』を原作とし、マーラ・ウィルソンが主演を務める。物語は、並外れた知性と念動力を持つ少女マチルダが、理不尽な大人たちに立ち向かう姿を描く。ユーモアと温かみのあるストーリーに加え、独特の映像表現や個性的なキャラクターが作品の魅力を引き立てている。
製作費が約3,600万ドル(当時のレートで約35億円)に対し、興行収入は全世界で約3,300万ドル(約32億円)と振るわなかったが、家庭向けメディアでの人気が高まり、後に児童映画のクラシックとして定着した。現在も多くの世代に愛されており、2022年にはNetflixによりミュージカル映画版が制作された。
『マチルダ』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
マチルダ・ワームウッドは、生まれつき驚くべき知性を持つ少女だった。しかし、両親は教育に無関心で、彼女の才能をまったく理解しようとしない。独学で本を読み漁り、知識を深めるマチルダだったが、ようやく学校に通えるようになると、そこにはさらに厳しい現実が待っていた。学校の校長であるトランチブルは、恐怖政治を敷く冷酷な人物で、理不尽なルールで生徒たちを支配していた。
そんな中、マチルダは心優しい担任のハニー先生と出会い、初めて自分を理解してくれる大人の存在に触れる。そしてある日、彼女は念動力を使えることに気づく。自分の力を少しずつコントロールできるようになったマチルダは、友達やハニー先生を守るため、トランチブル校長に立ち向かうことを決意するのだった。
『マチルダ』の監督・主要キャスト
- ダニー・デヴィート(51)監督
- マーラ・ウィルソン(9)マチルダ・ワームウッド
- ダニー・デヴィート(51)ハリー・ワームウッド
- リア・パールマン(48)ジニア・ワームウッド
- エンベス・デイヴィッツ(31)ジェニファー・ハニー
- パム・フェリス(48)アガサ・トランチブル校長
- ポール・ルーベンス(44)FBIエージェント・ボブ
- トレイシー・ウォルター(49)FBIエージェント・ビル
(年齢は映画公開当時のもの)
『マチルダ』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 5.0 ★★★★★ |
・大切な人と観たい | 4.0 ★★★★☆ |
・ひとりでじっくり | 2.0 ★★☆☆☆ |
・意外にブラックユーモア | 5.0 ★★★★★ |
・子役の魅力 | 5.0 ★★★★★ |
ポジティブ評価
『マチルダ』は、児童文学の名作をユーモアとファンタジーを交えて見事に映像化した作品。まず特筆すべきは、マーラ・ウィルソンの魅力だろう。彼女は幼いながらも聡明で芯の強いマチルダを見事に演じ、視聴者が自然と応援したくなる主人公になった。その知性と純粋さが際立ち、周囲の大人たちの理不尽さと対比されることで、物語の面白さが引き立つ。
また、本作は登場人物のキャラクター造形が非常にユニークだ。特にトランチブル校長の存在感が圧倒的で、その恐ろしさは子どもにとってはまさに「最強の敵」に映るだろう。一方で、彼女の強烈すぎる言動はどこかコミカルでもあり、怖さと笑いが絶妙なバランスで共存している。ハニー先生の優しさと対比されることで、彼女の恐怖支配がさらに際立ち、物語に深みを与えている。
さらに、映画全体に散りばめられた「ちょっと大げさな」演出も本作の魅力のひとつだ。飛びすぎる教科書、回転しすぎるブランコ、そして意外なものが飛び交うクライマックス――これらの要素が、ファンタジー映画ならではの楽しさを生み出している。また、ダニー・デヴィート監督ならではの皮肉の効いたユーモアも随所に見られ、大人が観ても思わずクスリとさせられる場面が多い。
『マチルダ』は、子どもだけでなく大人にも楽しめる温かい作品だ。理不尽な大人に負けず、自分の力で道を切り開いていくマチルダの姿は、何歳になっても勇気を与えてくれる。視聴後には、手のひらをじっと見つめて「もしかして…?」と試してしまうかもしれない。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
低評価要素を探すような作品ではないが、あえて指摘するならば、トランチブル校長の罰の内容があまりに過激で、小さな子どもにはやや刺激が強いと感じるかもしれない。映画全体がコミカルなトーンなので深刻にはなりすぎないが、一部のシーンでは「これは子ども向けとしてアリなのか…?」と親が少し考えてしまう場面もある。家庭での子育て方針も、30年前の家庭を表現しており、目につくシーンがあるかもしれない。
こぼれ話
監督を務めたダニー・デヴィートは、主人公マチルダの父親役としても出演している。さらに、彼の実生活の妻であるリア・パールマンがマチルダの母親役を演じており、作中の騒がしいワームウッド家は、ある意味「本当の家族」のような空気感を持っている。
また、マーラ・ウィルソンが撮影中に母親を病気で亡くしたことも知られている。ダニー・デヴィートは彼女を支えるため、家族ぐるみで世話をし、映画の完成版を公開前に彼女の母親に見せる手配までしていたという。作中で描かれるマチルダとハニー先生の温かい関係は、マーラ・ウィルソンにとっても特別な意味を持つものだったのかもしれない。
さらに、トランチブル校長を演じたパム・フェリスは、その迫力ある演技で強烈な印象を残したが、実は撮影中に自らの演技に没頭しすぎてケガをすることがあったらしい。特に、派手なアクションが求められるシーンでは全力投球し、何度も撮影を繰り返した結果、いくつかの打撲を負ったとか。観客が「怖すぎる!」と感じたのも、彼女の本気の演技の賜物だったのかもしれない。
『マチルダ』は興行収入こそ控えめだったが、後に家庭向けビデオやストリーミングで人気を博し、今では児童映画の定番のひとつとなった。もし視聴後に「もしかして自分も念動力が…?」と試したくなったなら、それは映画の魔法がしっかり効いている証拠かもしれない。
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