ザ・クロウ/飛翔伝説(1994)の解説・評価・レビュー

The Crow SF(超・能力)
SF(超・能力)アクション(その他)ゴシックホラー

ブランドン・リーの遺作となった感動的な復讐劇 ---

『ザ・クロウ/飛翔伝説』(原題:The Crow)は、1994年に公開されたアメリカのダーク・ファンタジーアクション映画で、アレックス・プロヤスが監督を務めた。原作はジェームズ・オバーの同名コミックで、復讐に燃える主人公「クロウ(カラス)」の導きによって蘇り、恋人を殺した犯罪者たちに制裁を下すというゴシックホラー調の物語が描かれる。

主演はブルース・リーの息子であるブランドン・リー。彼の鬼気迫る演技が作品の雰囲気を高めたが、撮影中のアクシデントによりブランドン・リーは不慮の死を遂げ、本作が彼の遺作となった。
製作費2,300万ドル(当時のレートで約23億円)に対し、全世界で9,400万ドル(約94億円)以上の興行収入を記録した。ゴシックロックやインダストリアルミュージックを多用したサウンドトラックも話題となり、90年代を代表するダークヒーロー映画のひとつとして現在も根強いファンを持つ。

『ザ・クロウ/飛翔伝説』のあらすじ紹介(ネタバレなし)

ハロウィン前夜、「悪魔の夜」と呼ばれる混乱の中、ロックミュージシャンのエリック・ドレイヴンと婚約者のシェリーは、街を支配するギャングたちによって襲われ、惨殺される。しかし、1年後、カラスの導きによってエリックはこの世に蘇る。

不死身の力を得た彼は、自らを殺した男たちへの復讐を誓い、彼らを一人ずつ追い詰めていく。その姿はまるで闇の守護者のようであり、街に恐怖をもたらす。一方、事件を追う警官アルブレヒトは、エリックの目的を知りながらも、彼の哀しみと正義に同情を抱くようになる。
やがて、エリックは復讐の標的であるギャングの首領トポ・ダラーと対峙することになる。

『ザ・クロウ/飛翔伝説』の監督・主要キャスト

  • アレックス・プロヤス(31)監督
  • ブランドン・リー(28)エリック・ドレイヴン/クロウ
  • ロシェル・デイヴィス(14)サラ
  • アーニー・ハドソン(48)アルブレヒト巡査部長
  • マイケル・ウィンコット(36)トップ・ダラー
  • バイ・リン(27)マイカ
  • ソフィア・シャイナス(25)シェリー・ウェブスター
  • デヴィッド・パトリック・ケリー(43)T-バード

(年齢は映画公開当時のもの)

『ザ・クロウ/飛翔伝説』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 3.0 ★★★☆☆
・大切な人と観たい 2.0 ★★☆☆☆
・ひとりでじっくり 3.0 ★★★☆☆
・ダーク&ゴシック 5.0 ★★★★★
・ブランドン・リー遺作 ー ☆☆☆☆☆

ポジティブ評価

『ザ・クロウ/飛翔伝説』は、ゴシックな世界観と哀愁漂うストーリーが魅力の、90年代を代表するダークヒーロー映画である。全体的に青みがかった映像と荒廃した都市のビジュアルが、復讐に燃えるエリック・ドレイヴンの心情を表現している。雨に濡れた街並みや、陰影を活かした撮影技法は、コミック原作ならではの世界を創り上げ、他のアクション映画とは一線を画す仕上がりとなっている。

ブランドン・リーの遺作としても有名な作品。彼が演じるエリックは、復讐者としての冷酷さを持ちながらも、愛する者を失った悲しみを内に秘めている。その繊細な表現が、ただの復讐劇ではなく哀しみに満ちたドラマとしても成立させ、「クロウ(カラス)」によって蘇ったと信じさせる説得力がある。
ザ・キュアーやナイン・インチ・ネイルズといったゴシックロック、インダストリアルミュージックを取り入れたサウンドトラックもまた、映画のダークな雰囲気を引き立てている。
飽きることなく最後まで夢中に見られる良策。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

世界中の批評を見渡しても目立ったネガティブ評価が見当たらない作品。アメコミ原作の復讐劇で、主役のダークヒーローはセリフも恰好良い。”そういうの”が苦手な人はそもそも視聴していないかもしれない。
世界中に愛されたブランドン・リーという役者の遺作として、今なお高い評価を維持し続ける映画である。ちなみに、リメイクとなる2024年版の同作は、反動のためか非常に低評価が目立つ。

こぼれ話

『ザ・クロウ/飛翔伝説』は、そのダークな世界観とともに、制作の裏側にも多くのドラマがあった作品として知られている。何よりも衝撃的なのは、前述のように主演のブランドン・リーが撮影中の事故で命を落としたことだ。彼はクライマックスの銃撃シーンの撮影中に、小道具の誤作動により負傷し、そのまま帰らぬ人となった。彼の死は大きな波紋を呼び、映画の完成が危ぶまれたが、残された映像とスタンドイン、そして当時のVFX技術を駆使することで、奇跡的に作品は完成を迎えた。結果的に、本作はブランドン・リーの遺作となり、彼の演技は今なお多くのファンの心に刻まれている。

また、本作は原作コミックを基にしているが、映画版はストーリーが大きく変更されている。原作では、エリックの復讐はより過激で暴力的に描かれているが、映画版では詩的な要素が強調され、彼の哀しみや愛する者を失った痛みがよりフォーカスされている。この変更が、本作を単なるバイオレンス映画ではなく、より芸術的な作品へと昇華させた要因のひとつとも言えるだろう。

本作のサウンドトラックは90年代のゴシック・ロックやインダストリアル・ロックの名曲が揃い、映画のダークな雰囲気を完璧に補強している。ザ・キュアー、ナイン・インチなどアーティストたちの楽曲は、映画の世界観と見事にシンクロし、サントラ単体でも高い評価を受けた。特に、エリックがギターを弾くシーンと音楽のマッチングは視聴者にエモーショナルな感情を残した。

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