チャーリーシーン主演!名作映画のパロディコメディ ---
1991年公開の『ホット・ショット』(原題:Hot Shots!)は、ジム・エイブラハムズ監督によるパロディ映画で、1986年の大ヒット映画『トップガン』を中心に、さまざまなハリウッド作品をユーモラスに風刺したコメディ作品。主演はチャーリー・シーンが務め、バレリア・ゴリノ、ロイド・ブリッジスらが共演。
物語は、優秀ながらもトラウマを抱える戦闘機パイロット、トップ・パー(チャーリー・シーン)が、エリート部隊「ロッキード基地」に招集され、米海軍の極秘ミッションに挑む姿を描く。しかし、隊員たちは皆どこか抜けており、軍の上層部も混乱続き。さらに、陰謀や恋愛が絡み合い、真剣なはずの軍事作戦は次第にとんでもない方向へと突き進んでいく。
本作は、『裸の銃を持つ男』シリーズの流れを汲むシュールなギャグとスラップスティック・コメディが満載で、特に『トップガン』の名シーンを大胆に茶化した演出が話題となった。また、『ナインハーフ』や『ロッキー』など、さまざまな映画のパロディも散りばめられており、映画ファンなら細かいネタを探す楽しみもある。1991年公開当時、コメディ映画として大ヒットし、1993年には続編『ホット・ショット2』も制作された。
『ホット・ショット』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
米海軍の精鋭パイロット部隊「ロッキード基地」に、新たなトップガン候補としてトップ・パー(チャーリー・シーン)が招集される。彼は驚異的な操縦技術を持つが、かつての事故のトラウマに苦しみ、基地では問題児扱いされていた。そんな彼の前にライバルのケント(キャリー・エルウィス)が立ちはだかり、二人は何かと対立することになる。
一方、海軍の上層部は混乱続きで、司令官のベンソン提督(ロイド・ブリッジス)は的外れな指示を連発。さらに、武器メーカーの陰謀が絡み、極秘ミッション「眠れるイタチ作戦」は、国家的な重要作戦とは思えないほどデタラメな展開に。そんな中、トップは心理カウンセラーのラマダ(バレリア・ゴリノ)と恋に落ちるが、彼女にも謎めいた過去があった。
ミッションの本番が近づく中、チームのメンバーは次々と珍妙なアクシデントに見舞われ、作戦はカオス状態に。トップはトラウマを乗り越え、エースパイロットとしての実力を発揮することができるのか? そして、ミッションは無事成功するのか? それとも失敗より先に映画そのものがギャグの渦に飲み込まれるのか?
数々の映画を徹底的にパロディ化した『ホット・ショット』は、最後の最後まで予測不可能な展開が続き、観る者を爆笑の渦に巻き込む。
『ホット・ショット』の監督・主要キャスト
- ジム・エイブラハムズ(47)監督
- チャーリー・シーン(26) トップ・パー
- バレリア・ゴリノ(25) ラマダ・トンプソン
- ロイド・ブリッジス(78) トーマス・”トム”・ベンソン提督
- キャリー・エルウィス(28) ケント・グレゴリー
- ケヴィン・ダン(35) ジェームズ・ブロック・ハウザー大佐
- ジョン・クライヤー(26) ジム・“ウォッシュ・アウト”・ファイファー
- ウィリアム・オリアリー(34) “デッド・ミート”・トンプソン
- ビル・アーウィン(41) バズ
『ホット・ショット』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 5.0 ★★★★★ |
・大切な人と観たい | 2.0 ★★☆☆☆ |
・ひとりでじっくり | 2.0 ★★☆☆☆ |
・チャーリーシーン | 5.0 ★★★★★ |
・全力パロディ | 5.0 ★★★★★ |
ポジティブ評価
『ホット・ショット』は、まさにパロディ映画の真骨頂。『トップガン』を中心に、『ナインハーフ』や『ロッキー』など、当時の人気映画を徹底的に茶化しながら、テンポの良いギャグを次々に繰り出す。特に、スラップスティック・コメディとシュールなユーモアが絶妙に組み合わさっており、ほぼ全編に笑いを仕掛けてくる。細かい背景ネタやセリフの言い回しに至るまでネタが仕込まれているため、1回目で見逃したネタを2回目、3回目で発見する楽しみもある。
チャーリー・シーンの主人公トップ・パーは、トム・クルーズ演じる『トップガン』のマーヴェリックを完全にオーバーな形で再現。シリアスな表情でとんでもないことをやらかす彼の演技は、本作の笑いの中心になっている。また、ロイド・ブリッジス演じるベンソン提督の無茶苦茶な指揮ぶりも見どころ。
映像のクオリティも意外に高く、戦闘機のシーンは『トップガン』を忠実に再現しつつ、それを徹底的にギャグにするバランスが絶妙。パロディ映画ながらアクションシーンも見応えがあり、普通の軍事映画と錯覚しそうな場面すらある。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
『ホット・ショット』は徹底したパロディ映画であるがゆえに、元ネタとなる映画を知らないと笑えない。また、元となる映画が当時流行していた作品で鮮度が落ちており、よほどの映画ファンでない限り、今観ると笑いよりも懐かしい感情が勝るかもしれない。
そして、最大の問題は、ネタがあまりにも詰め込まれているせいで、ストーリーがほぼ存在していない点。もちろん、一応のプロットはあるのだが、「次のギャグを見せるためのつなぎ」に過ぎず、まともに物語を追おうとしてもさほど意味が無い。
こぼれ話
『ホット・ショット』の制作こぼれ話。
主演のチャーリー・シーンは本作でコミカルな演技を披露しているが、実は撮影前は本気で『トップガン』のようなアクション映画だと勘違いしていたとか。脚本を読んでようやく「これは完全にふざけ倒す映画だ」と気づき、そこからノリノリで撮影に臨んだという。
彼が演じるトップ・パーのキャラクターは、実際にトム・クルーズのマーヴェリックを徹底的に研究したうえで作られている。特に、無駄にキザなセリフや、やたらと風になびく髪の動きなどは、オリジナルを忠実に再現。結果的に、『ホット・ショット』のトップ・パーは「パロディなのに、なぜかちょっとカッコいい」という絶妙なキャラクターに仕上がった。
さらに、ロイド・ブリッジス演じるベンソン提督は、本作で最も予測不能な行動を取るキャラクターのひとりだが、実は彼のアドリブも多く採用されている。台本には「提督が奇妙な行動をする」とだけ書かれており、具体的なギャグの詳細はその場のノリで決まることもあったという。彼の「まるで軍人らしくない司令官ぶり」は、まさに即興の賜物だったのだ。
本作には『トップガン』以外にも多数の映画パロディが散りばめられているが、監督のジム・エイブラハムズは『ロッキー』シリーズの大ファンであり、本作でもさりげなくその影響を忍ばせている(特にボクシングネタ)。後に続編『ホット・ショット2』で『ランボー』のパロディにまで手を出すことを考えると、彼の筋肉アクション映画への愛は本物だったのかもしれない。
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