スリー・ビルボード(2017)の解説・評価・レビュー

スリービルボード クライムサスペンス
クライムサスペンスヒューマンドラマブラックコメディ社会派ドラマ

『スリー・ビルボード』は、2017年に公開されたアメリカとイギリスの共同制作による犯罪ドラマ映画。マーティン・マクドナーが監督・脚本を手掛けた。
物語は、娘を殺害された母親が、事件解決のために地元警察を糾弾する内容の看板を立てたことから始まる。フランシス・マクドーマンドが主人公の母親ミルドレッドを演じ、その圧倒的な演技で第90回アカデミー賞主演女優賞を受賞。また、サム・ロックウェルが警官役で助演男優賞を受賞し、映画自体も作品賞を含む計7部門にノミネートされるなど、高い評価を得た。

アメリカ社会の不条理や正義について深く考えさせられるテーマを扱い、ブラックユーモアを交えた斬新な脚本も話題となった。興行的にも成功を収め、批評家と観客の両方から称賛された作品である。

『スリー・ビルボード』のあらすじ


アメリカのミズーリ州の田舎町エビング。娘アンジェラを何者かに殺害され、その事件が未解決のまま数か月が経過した母親ミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マクドーマンド)は、地元警察への怒りを募らせる。警察署長ウィロビー(ウディ・ハレルソン)が率いる捜査が進展しないことに業を煮やしたミルドレッドは、町外れの道路に3枚の巨大な広告看板を立て、署長を名指しで非難するメッセージを掲げる。

看板の内容は町全体に波紋を広げ、ミルドレッドは住民たちからの批判や警察からの圧力を受ける。一方で、暴力的で差別的な警官ディクソン(サム・ロックウェル)を含む警察内部でも対立が生じる。看板を巡る騒動は、ミルドレッドや警察、そして町の人々の心に変化をもたらし、予期せぬ結末へと物語は進んでいく。復讐と正義、そして人間の複雑な感情が交錯するドラマが展開される。

『スリー・ビルボード』の監督・主要キャスト

  • マーティン・マクドナー(47)監督
  • フランシス・マクドーマンド(60)ミルドレッド・ヘイズ
  • ウディ・ハレルソン(56)ビル・ウィロビー署長
  • サム・ロックウェル(49)ジェイソン・ディクソン巡査
  • アビー・コーニッシュ(35)アン・ウィロビー
  • ジョン・ホークス(58)チャーリー
  • ピーター・ディンクレイジ(48)ジェームズ
  • ルーカス・ヘッジズ(21)ロビー・ヘイズ

(役者の年齢は公開時点のもの)

『スリー・ビルボード』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 2.0 ★★☆☆☆
・大切な人と観たい 2.0 ★★☆☆☆
・ひとりでじっくり 4.0 ★★★★☆
・社会派ドラマが見たい 5.0 ★★★★★
・驚きの結末! 4.0 ★★★★☆

緊張感とユーモアのバランスが秀逸

『スリー・ビルボード』は、復讐と正義、そして許しのテーマをブラックユーモアを交えて巧みに描き、多くの批評家から高評価を受けた。マーティン・マクドナー監督は、独特な脚本とキャラクター描写によって、物語に深い感情的な重みを与えることに成功。作品全体の緊張感とユーモアのバランスが絶妙で、観客を最後まで引き込む力強さがある。また、アメリカ社会の不平等や警察の問題を背景に、普遍的な人間ドラマとしても広く共感を呼んだ。

圧倒的な存在感でミルドレッドを演じたフランシス・マクドーマンドは、第90回アカデミー賞主演女優賞を受賞した。サム・ロックウェルも、最初は憎まれ役として描かれながら、物語の進行と共に複雑な内面を見せるディクソン役で助演男優賞を受賞。

賛否が分かれる評価要素

ディクソンという差別的で暴力的なキャラクターが redemption arc(贖罪の物語)を与えられる展開が、一部の観客や批評家からは不適切と指摘された。また、物語が示唆的に終わるため、結末に満足しなかったという意見もあった。さらに、物語の中で登場する社会問題について、掘り下げが不足しているとの批判もある。しかし、これらの意見は映画の挑戦的なアプローチの一環と捉えられることも多い。

こぼれ話

本作の脚本は、監督のマーティン・マクドナーが実際にアメリカ南部を旅行していた際に目撃した、未解決事件を糾弾する広告看板にインスパイアされたという。
撮影は、ノースカロライナ州のシルバという小さな町で行われ、映画に登場する看板は撮影のために建てられたもの。

フランシス・マクドーマンドは、役作りのために地元の住民たちのアクセントを研究し、ミルドレッドにリアリティを与えた。また、サム・ロックウェルのディクソン役は、マクドナー監督が彼のために書き下ろした特別な役柄である。映画の公開後、実際の未解決事件で同様の看板が設置されるなど、映画が社会に与えた影響も話題となった。

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