「フィールドがあれば、誰かが帰ってくる。」80年代感動のドラマ ---
1989年公開の『フィールド・オブ・ドリームス』(原題:Field of Dreams)は、フィル・アルデン・ロビンソン監督によるファンタジー・ドラマ映画で、W・P・キンセラの小説『シューレス・ジョー』を原作とする。主演はケヴィン・コスナー、共演にジェームズ・アール・ジョーンズ、レイ・リオッタ、バート・ランカスターらが名を連ねる。
物語は、アイオワ州の農夫レイ・キンセラ(ケヴィン・コスナー)が、ある日 「それを作れば、彼が来る(If you build it, he will come)」 という謎の声を聞くことから始まる。直感に従い、自分のトウモロコシ畑を切り開いて野球場を作ると、かつての名選手シューレス・ジョー・ジャクソン(レイ・リオッタ)をはじめとする伝説の選手たちが現れる。しかし、その奇跡の裏には、レイ自身が抱える「ある想い」が隠されていた——。
本作は、単なる野球映画にとどまらず、「夢」「親子の絆」「過去と向き合うこと」といったテーマを繊細に描き、観る者の心を揺さぶる感動作として評価されている。アメリカ映画協会(AFI)が選ぶ 「もっとも感動的な映画」ランキングで6位 に選ばれるなど、今なお愛され続ける作品である。1990年のアカデミー賞では作品賞を含む3部門にノミネート され、ケヴィン・コスナー主演の感動的な名作として、現在も語り継がれている。
『フィールド・オブ・ドリームス』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
アイオワ州でトウモロコシ農場を営むレイ・キンセラ(ケヴィン・コスナー)は、ある日 「それを作れば、彼が来る(If you build it, he will come)」 という謎の声を聞く。最初は幻聴かと思ったが、やがて彼は「畑を切り開き、野球場を作るべきだ」という確信を抱く。家族や周囲の人々の反対を押し切り、農場の一部をつぶしてまで野球場を建設すると、ある夜、かつての名選手 シューレス・ジョー・ジャクソン(レイ・リオッタ) をはじめとする、1920年代に活躍した伝説の野球選手たちが現れる。彼らはレイにしか見えない幽霊だったが、彼の野球場で夢のような試合を始める。
しかし、野球場を作ったことでレイの農場経営は危機に瀕し、現実的な問題が彼を追い詰める。そんな中、彼はさらに別のメッセージを受け取り、それに導かれるように、元社会派作家の テレンス・マン(ジェームズ・アール・ジョーンズ) や、若き日の幻の選手 アーチー・”ムーンライト”・グラハム(バート・ランカスター) を探し求める旅に出る。
旅を通じて、レイは自身の人生や過去と向き合うことになる。そして、野球場がもたらした奇跡の本当の意味が明らかになるとき、彼の心にある大切な想いが満たされるのだった——。夢、後悔、そして親子の絆を描いた本作は、ただの野球映画ではなく、心に響く感動のドラマとなっている。
『フィールド・オブ・ドリームス』の監督・主要キャスト
- フィル・アルデン・ロビンソン(39)監督
- ケヴィン・コスナー(34) レイ・キンセラ
- エイミー・マディガン(38) アニー・キンセラ
- ジェームズ・アール・ジョーンズ(58) テレンス・マン
- レイ・リオッタ(34) シューレス・ジョー・ジャクソン
- バート・ランカスター(75) アーチー・”ムーンライト”・グラハム
- フランク・ホエーリー(25) 若き日のアーチー・グラハム
- ティモシー・バスフィールド(32) マーク(アニーの弟)
- ギャビー・ホフマン(7) カリン・キンセラ
(年齢は映画公開当時のもの)
『フィールド・オブ・ドリームス』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 4.0 ★★★★☆ |
・大切な人と観たい | 4.0 ★★★★☆ |
・ひとりでじっくり | 4.0 ★★★★☆ |
・過去の清算 | 4.0 ★★★★★ |
・とうもろこし畑 | 4.0 ★★★★☆ |
ポジティブ評価
『フィールド・オブ・ドリームス』は、単なる野球映画ではなく、夢、親子の絆、過去との和解というテーマを描いた感動作。本作の最大の魅力は、幻想的なストーリーと現実世界のドラマが巧みに交錯する。
ケィヴィン・コスナーは「謎の声」に導かれる男レイ・キンセラを抑えた表現で演じ、視聴者は彼と共に物語の不思議な旅に引き込まれる。野球場を作ることが本当に意味のあることなのか、彼の決断が正しいのかどうか、視聴者にも問いかけてくるような演出が秀逸。
ジェームズ・アール・ジョーンズやバート・ランカスターといったベテラン俳優陣の存在感も見逃せない。ジョーンズが演じる作家テレンス・マンは、レイの心の奥底にあるものと向き合う重要なキャラクターとして物語を支え、余韻を残す。
広大なトウモロコシ畑の中にぽつんと佇む野球場の幻想的なビジュアルは、本作の象徴的なイメージとなっており、そこに現れるシューレス・ジョーたちの姿は、まるで夢の中の出来事のような美しさがある。ジェームズ・ホーナーの音楽が映画の雰囲気を支える。ラストが大感動。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
ラストが大感動、と先に述べた一方で、 冷静に考えるとちょっと意味が分からない作品でもある。抽象的なストーリー展開な上、「謎の声」や「幽霊のような野球選手たち」の存在に具体的な説明がほとんどなく、このファンタジー要素をどう解釈するかは視聴者の想像に委ねられている。詩的で美しく、過去を清算するかのようなラストシーンは、意味が分からないながらも泣ける。
『ティン・カップ』しかり、ケヴィン・コスナーは意地を張る男の役がよく似合う。得たものは精神的な満足でしかないが、それが彼に必要な物だったと解釈できる。心の声に正直に生きる、とテーマを置き換えて差し支えないかもしれない。
野球(とその文化背景)に全く興味がない方は、一層共感を得にくい作品なのかもしれない。ゆったりと感情が動く映画であるから、人によっては退屈なのだろうか。とはいえ、世界中で大きな反響を得た名作であるから、未視聴の方には一度は是非お勧めしたい作品である。
こぼれ話
本作の舞台となる アイオワ州の野球場は、実際に撮影のために作られたもので、撮影終了後もそのまま残された。映画公開後にファンの間で聖地化され、多くの観光客が訪れる人気スポットに。現在も「フィールド・オブ・ドリームス球場」として維持されており、実際に野球の試合が開催されることもある。2021年には MLBが公式戦「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」を開催し、ニューヨーク・ヤンキースとシカゴ・ホワイトソックスが映画の舞台で熱戦を繰り広げた。この試合は大きな話題となり、映画の影響力の大きさを改めて証明した。
映画の象徴的なセリフ 「それを作れば、彼が来る(If you build it, he will come)」 は、映画史に残る名セリフとしてアメリカ映画協会(AFI)が選ぶ「もっとも記憶に残る映画の名セリフ100」で 39位にランクイン。
本作は バート・ランカスターの最後の劇場映画出演作 となった。彼が演じた”ムーンライト”・グラハムのエピソードは実話に基づいており、彼の短いながらも印象的な登場シーンは、映画の中でも特に感動的な場面として知られている。
また、シューレス・ジョー・ジャクソンを演じた レイ・リオッタは、実際には野球経験がなく、特に左打ちが苦手だった。しかし、シューレス・ジョーは左打ちの選手だったため、リオッタは撮影のために特訓を受けた。しかし、映画を観た野球ファンの間では 「リオッタのスイングが実際のシューレス・ジョーとは違う」と指摘されたというから気の毒な話である。
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