ミッドナイト・ラン (1988)の解説・評価・レビュー

Midnight Run クライムサスペンス
クライムサスペンスコメディ(全般)ロードムービー

48時間の逃亡。至極のロードムービー ---

『ミッドナイト・ラン』(1988)は、マーティン・ブレスト監督 によるアクション・コメディ映画で、ロバート・デ・ニーロ と チャールズ・グローディン が主演を務めた。賞金稼ぎと逃亡者という対照的な二人の珍道中を描いたロードムービーであり、スリリングな展開と絶妙なコメディ要素が融合したバディ映画の傑作 として知られる。
物語は、元刑事で現在は賞金稼ぎをしている ジャック・ウォルシュ(ロバート・デ・ニーロ) が、保釈保証会社からの依頼で、巨額の金を横領した会計士 ジョナサン・“デューク”・マーデュカス(チャールズ・グローディン) を捕まえ、ロサンゼルスまで護送する仕事を請け負うところから始まる。しかし、移送の途中で、FBI、マフィア、そして別の賞金稼ぎまでが二人を追う大騒動 へと発展していく。

本作は、デ・ニーロがコメディ作品に初挑戦したことでも話題となり、彼のシリアスな演技とグローディンの飄々としたユーモアの掛け合いが絶妙なバランス を生み出している。テンポの良いアクションと笑いに満ちたストーリーは、批評家からも高く評価され、バディ映画の名作として記憶される。

『ミッドナイト・ラン』のあらすじ紹介(ネタバレなし)

元刑事で現在は賞金稼ぎをしている ジャック・ウォルシュ(ロバート・デ・ニーロ) は、借金まみれの生活から抜け出すため、高額な報酬が約束された仕事を引き受ける。それは、保釈金保証会社の依頼で、巨額の資金をマフィアから横領し、FBIに協力しようとしている会計士ジョナサン・“デューク”・マーデュカス(チャールズ・グローディン)をニューヨークからロサンゼルスまで護送する というものだった。

一見、簡単な仕事に思えたが、ジャックはすぐに状況の厄介さを思い知ることになる。デュークは飛行機嫌いのため空路を拒否し、やむを得ず陸路での移送を試みるが、その途中でFBI、マフィア、そしてライバルの賞金稼ぎマーヴィン(ジョン・アシュトン) までもが二人を追跡し始める。次々とトラブルに巻き込まれる中で、ジャックとデュークはしぶしぶ協力しながら逃亡を続けることに。

旅を続けるうちに、ジャックはデュークが単なる犯罪者ではなく、倫理観を持った人物であることを知る。一方のデュークも、ジャックの皮肉屋ながらも根は誠実な性格に気付き、二人の間には奇妙な友情が芽生え始める。だが、ロサンゼルスが近づくにつれ、FBIやマフィアの包囲網が狭まり、ジャックは「仕事」と「信念」の間で重大な決断を迫られることになる。

果たして、ジャックは無事にデュークを引き渡し、大金を手にすることができるのか——?

『ミッドナイト・ラン』の監督・主要キャスト

  • マーティン・ブレスト(37)監督
  • ロバート・デ・ニーロ(45) ジャック・ウォルシュ
  • チャールズ・グローディン(53) ジョナサン・“デューク”・マーデュカス
  • ジョン・アシュトン(40) マーヴィン・ドーフラー
  • デニス・ファリーナ(44) ジミー・セラノ
  • ヤフェット・コットー(49) アロンゾ・モズリー(FBI捜査官)
  • ジョー・パントリアーノ(36) エディ・モスコーネ(保釈保証会社の社長)
  • ウェンディ・フィリップス(36) ギャイル・ウォルシュ(ジャックの元妻)

(年齢は映画公開当時のもの)

『ミッドナイト・ラン』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 5.0 ★★★★★
・大切な人と観たい 3.0 ★★★☆☆
・ひとりでじっくり 3.0 ★★★☆☆
・ロードムービー 5.0 ★★★★★
・バディコメディ 5.0 ★★★★★

ポジティブ評価

『ミッドナイト・ラン』は、絶妙なコンビネーションが光るバディ映画の傑作 であり、アクション、サスペンス、コメディなど、1980年代映画の魅力が詰まったエンターテインメント作品である。

まず、ロバート・デ・ニーロとチャールズ・グローディンの掛け合いが秀逸 である。デ・ニーロ演じるジャックは、タフで皮肉屋な賞金稼ぎだが、根は義理堅く、どこか不器用な男。一方、グローディン演じるデュークは、冷静沈着ながらも時折見せるユーモアと人間味が魅力的で、二人の対照的なキャラクターが物語を引っ張る。特に、ジャックがデュークの「小賢しいが憎めない態度」に振り回される様子は、シリアスになりすぎず、軽快なテンポで笑いを生み出している。

次に、ロードムービーとしての魅力も本作の大きなポイントだ。ニューヨークからロサンゼルスまでの移動は、飛行機ではなく陸路という設定が功を奏し、列車、バス、車を乗り継ぎながら進む展開が、s庁舎に適度な緊張感とワクワク感を与えてくれる。途中で次々とトラブルに巻き込まれ、マフィアやFBI、さらにはライバルの賞金稼ぎまでが追跡してくる展開は、テンポがよく飽きることがない。
アクション面でも、派手な爆発や銃撃戦に頼るのではなく、緊張感のある追跡劇やキャラクター同士の駆け引きが見どころ となっている。カーチェイスや逃亡劇の演出は、過剰になりすぎず、それでいてスリリングに仕上がっており、リアルな緊迫感を楽しめる。

監督は『ビバリーヒルズ・コップ』(1984)を手掛けたマーティン・ブレスト。本作のユーモアは決して無理に笑わせるものではなく、キャラクター同士の自然な会話や状況の中から生まれる。特に、デュークがジャックをじわじわとイライラさせるシーンや、ジャックがつい本音を漏らしてしまう瞬間など、皮肉とユーモアのバランスが絶妙だ。
『ミッドナイト・ラン』は、キャラクターの魅力、テンポの良いストーリー、スリリングな展開が見事に組み合わさった作品 であり、バディ映画としての完成度が群を抜いている。公開から数十年経った今でも、ユーモアとアクションのバランスが秀逸な作品として、多くの映画ファンに愛され続けている。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

特になし。嫌いな人がいるのだろうかと思える映画。強いて言えば、ロバート・デニーロが今の社会規範でいえばやや乱暴者。かといって不快というものでもないし、1980年代の映像作品としては標準的な範囲。
この映画はジャンル上「コメディ」と分類されるが、たとえばジム・キャリーの王道コメディのように笑いを取りに行くものではなく、ブラックコメディということでもなく、主人公ふたりのユーモラスな掛け合いの中で生まれる、じわじわとした楽しさである。カートゥーン・コメディのようなジャンルを期待してうっかり視聴したとしても、悪意なく土台が温かいため、良い視聴体験になるのではないだろうか。

こぼれ話

『ミッドナイト・ラン』は、ロバート・デ・ニーロが本格的なコメディ映画に初挑戦した作品 であり、彼の役作りへのこだわりが随所に光っている。撮影前、デ・ニーロは賞金稼ぎという職業をリアルに理解するため、実際のバウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)と時間を共にし、逮捕の手順や取り調べの方法を学んだ という。
一方で、ジョナサン・”デューク”・マーデュカス役のチャールズ・グローディンは即興演技を多用しており、その自然な掛け合いが映画の魅力となっている。特に、ジャックとデュークの会話シーンでは、グローディンが台本にはないアドリブを加え、それに対するデ・ニーロのリアクションがリアルに撮影されているシーンも多い。実際に、ジャックがデュークの言動にイライラする場面のいくつかは、デ・ニーロ本人が本当に困惑している表情を見せており、それが映画のリアリズムにつながっているのだとか。
撮影中、デ・ニーロとグローディンは多くの時間を共に過ごし、撮影が終わる頃には親しい友人となった。しかし、グローディンは「映画の中でデ・ニーロに何度も殴られるシーンがあるが、彼はいつも本気でやってきた」と冗談交じりに語っており、「デ・ニーロのリアルな演技は、時にやりすぎることがある」と笑って振り返っている。

興味深いことに、本作の公開後、ユニバーサル・スタジオは続編の可能性を検討していた。当初はデ・ニーロとグローディンの再共演を視野に入れていたが、スケジュールの都合や脚本の問題により実現しなかった。その代わり、1994年にはテレビ映画『ミッドナイト・ラン2』が制作されたが、キャストは全く異なるものとなったため、オリジナル版ほどの評価は得られなかった。

また、劇中でFBI捜査官アロンゾ・モズリーを演じたヤフェット・コットーは、自分の役名が後に多くの映画やドラマでパロディにされるとは思ってもみなかった と語っている。特に『ザ・シンプソンズ』や『ファミリー・ガイ』などの作品で彼のキャラクターがネタにされることがあり、長年にわたりポップカルチャーに影響を与えた。

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