一世を風靡したロボット警官のSFアクション ---
『ロボコップ』(原題:RoboCop)は、1987年に公開されたアメリカのSFアクション映画である。監督はポール・バーホーベン、主演はピーター・ウェラーが務めた。
物語は、近未来のデトロイトを舞台に、殉職した警官アレックス・マーフィが巨大企業オムニ社によってサイボーグ警官「ロボコップ」として蘇り、犯罪組織や企業の陰謀に立ち向かう姿を描いている。
本作は、アメリカでは1987年7月17日に公開され、全米で約5,342万ドルの興行収入を記録した。日本では1988年2月11日に公開され、配給収入は9億1,000万円に達した。低予算ながらも高い興行成績を収め、続編やリメイク、テレビシリーズ、アニメなど多くの派生作品が制作されるなど、1980年代を代表するヒット作となった。
『ロボコップ』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
近未来のデトロイトは、犯罪が蔓延し、警察の無力化が進む無法地帯と化していた。巨大企業オムニ・コンシューマー・プロダクツ(OCP)は、この状況を打開するために、最新鋭のロボット警官を開発し、警察の民営化を進めようとしていた。
一方、正義感の強い警官アレックス・マーフィ(ピーター・ウェラー)は、新たな赴任地で相棒のアン・ルイス(ナンシー・アレン)とともに凶悪な犯罪者クラレンス・ボディッカー一味を追跡する。しかし、作戦中にマーフィは致命傷を負い、瀕死の状態となる。OCPは彼の遺体を極秘裏に回収し、サイボーグ警官「ロボコップ」として蘇らせる。
ロボコップとなったマーフィは、驚異的な戦闘能力とAIによる犯罪捜査システムを備え、次々と犯罪者を制圧していく。しかし、彼の中にはかつての記憶の断片が残っており、自分が何者なのかを知るにつれて、巨大企業の裏に潜む陰謀と、自らの人間性を取り戻すための戦いに巻き込まれていく。
『ロボコップ』の監督・主要キャスト
- ポール・バーホーベン(49)監督
- ピーター・ウェラー(39)アレックス・マーフィ / ロボコップ
- ナンシー・アレン(37)アン・ルイス
- ロニー・コックス(49)リチャード・”ディック”・ジョーンズ
- カートウッド・スミス(44)クラレンス・ボディッカー
- ミゲル・フェラー(32)ボブ・モートン
- ダン・オハーリー(67)オールドマン会長
- ロバート・ドクィ(56)ウォーレン・リード巡査部長
(年齢は映画公開当時のもの)
『ロボコップ』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 5.0 ★★★★★ |
・大切な人と観たい | 2.0 ★★☆☆☆ |
・ひとりでじっくり | 3.0 ★★★☆☆ |
・サイバーパンク | 5.0 ★★★★★ |
・ロボコップかっこいい | 5.0 ★★★★★ |
ポジティブ評価
『ロボコップ』は、単なるSFアクションにとどまらず、社会風刺を織り交ぜた独創的な作品として高く評価される。ポール・バーホーベン監督は、巨大企業による警察の民営化、メディアの過剰報道、テクノロジーと人間性の境界といったテーマを暴力とユーモアを交えて描いた。本作は、ロボット警官が悪を裁く痛快なアクションとして楽しめる一方で、背景には資本主義社会への皮肉が込められている。
ピーター・ウェラーが演じるアレックス・マーフィ / ロボコップは、機械の身体を持ちながらも人間性を取り戻そうとする姿が印象的だ。彼の演技は、ロボットの無機質な動きと、かすかに残る感情の揺らぎを見事に表現しており、ロボコップというキャラクターに深みを与えている。また、ナンシー・アレン演じる相棒のルイスも、単なる脇役ではなく、ロボコップの人間性を支える存在として役割を果たしている。
悪役たちも魅力。カートウッド・スミスが演じるクラレンス・ボディッカーは、冷酷な犯罪王。ロニー・コックス演じるOCPの幹部ディック・ジョーンズは、企業の権力を利用して陰謀を巡らせる典型的な「スーツを着た悪党」で、ギャングとはまた違った脅威。二つの悪がロボコップの前に立ちはだかる。
ロボコップの装甲スーツや、OCPが開発したED-209(四足歩行の警備ロボット)のデザインは、当時のSF映画の中でも群を抜いていた。ストップモーションを駆使したED-209の動きは、80年代らしい味わいを持ちながらも、巨大企業が生み出した無機質な暴力装置としての恐ろしさを際立たせている。さらに、バジル・ポールドゥリスによる音楽は、本作の世界観を支える重要な要素。重厚なオーケストラによるテーマ曲は、ロボコップの登場シーンに圧倒的な迫力を与え、ロボコップを思い出すときにこのテーマを浮かべる人が多いのではないだろうか。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
一見子供向け作品の『ロボコップ』は、その過激な描写や風刺の強さによって現在は成人指定となっている。暴力描写は、当時のハリウッド映画としてもかなり過激な部類に入り、一部の視聴者にとっては過剰に感じられるかもしれない。
どうせR18にレーティングされるなら、もっと重厚な企業サスペンス的要素にフォーカスして大人向けに作られても良かったのではないかと現代の視点からは思う。ロボコップが覚醒して復讐へと向かう展開は痛快だが、悪役たちの動機がやや単純で、クライマックスも意外と唐突。大人向け、子供向けのどっちつかずな印象が残る(つまり大衆向けということでこれだけのヒットを成し遂げたわけで、これは仕方ないのか)。
こぼれ話
主人公ロボコップを演じたピーター・ウェラーは、スーツの重量と動きに大いに苦しんだ。ロボコップのスーツは約15キログラムもあり、装着するだけで体力を消耗するほどの重さだった。さらに、撮影当初はスーツを着たまま素早く動くことを求められたが、ウェラーはこれに苦戦。結果として彼は「遅く、機械的な動き」の演技を採用することにし、これがロボコップ独特の存在感を生み出す要因となった。なお、ウェラーはスーツの演技に集中するため、撮影中はほぼ耳栓をして過ごしていたという。
また、本作に登場する企業「OCP(オムニ・コンシューマー・プロダクツ)」は、監督のバーホーベンによる資本主義社会への風刺として描かれている。OCPの幹部たちは冷徹で利益至上主義的な姿勢を崩さず、ロボコップを「商品」として扱う態度は、当時のアメリカ社会における企業のあり方を批判している。ちなみに、劇中に登場する「OCPの理想都市構想」は、現実のデトロイトの経済破綻を予見したかのような内容となっており、後年、実際にデトロイトが財政危機に陥ったことで本作の風刺性がさらに際立つことになった。
敵キャラクターのクラレンス・ボディッカーを演じたカートウッド・スミスは、普段はインテリ系の役柄が多い俳優だった。しかし、本作では冷酷非道なギャングボスを怪演し視聴者に印象を残した。なお、彼が劇中でメガネをかけているのは、バーホーベン監督の「知的な冷酷さを出すためのアイデア」だったという。
劇中に登場する巨大ロボット「ED-209」は、ストップモーション技術を駆使して作られたが、その動きのぎこちなさが逆に味わい深いキャラクターとなった。特に、階段を降りることができずに立ち往生するシーンは、当時の観客の間でも「ハイテクなのに肝心な部分が欠陥だらけ」と話題になり、ロボット技術の盲点を象徴する場面として知られるようになった。ちなみに、ED-209のデザインは、日本のアニメ『装甲騎兵ボトムズ』に影響を受けたとも言われている。
本作のキャッチコピー「Part man, Part machine, All cop(半分は人間、半分は機械、そして完全な警官)」は、映画のテーマを端的に表しており、後のシリーズやリメイク版でも踏襲された。ロボコップのキャラクターは映画公開後も多くのファンに愛され、アニメ化やテレビシリーズ化もされたが、やはり1987年のオリジナル版が最も高く評価されている。
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