ゲットアウト(2017)の解説・評価・レビュー

get-out サイコホラー・スリラー
サイコホラー・スリラーサスペンススリラーブラックコメディ社会派ドラマ

この罠からは抜け出せない—戦慄のサスペンススリラー ---

『ゲット・アウト』は、2017年に公開されたジョーダン・ピール監督のデビュー作で、恐怖と社会風刺を融合させたサイコスリラー(ホラー)映画である。物語は、白人女性ローズの実家を訪れる黒人青年クリスが、そこで次々と不気味な出来事に巻き込まれていく様子を描く。主人公クリスを演じたのはダニエル・カルーヤで、その緊迫感あふれる演技が批評家から高く評価された。

映画は、人種問題や無意識の偏見をテーマにしつつ、スリリングな展開と巧妙なプロットで観客を魅了。450万ドル(5億4,000万円)という低予算ながら、世界興行収入が2億5,500万ドル(300億円)を超える大ヒットを記録した。第90回アカデミー賞では作品賞を含む4部門にノミネートされ、脚本賞を受賞。新しい時代のホラー映画として、社会的・文化的な影響を与えた一作である。

『ゲット・アウト』のあらすじ


黒人青年のクリス(ダニエル・カルーヤ)は、交際中の白人女性ローズ(アリソン・ウィリアムズ)から、両親に会いに行こうと誘われる。不安を感じつつも、彼女の実家を訪れたクリスは、ローズの両親が過剰に親切な態度を取ることに違和感を覚える。

さらに、家の中や周囲で働く黒人たちの異様な振る舞いや、夜中に起こる不可解な出来事がクリスの警戒心を高めていく。ローズの母親が催眠術を使ってクリスの心に介入する場面をきっかけに、事態は一変。彼はこの家族が隠している恐ろしい秘密に気づき始める。

クリスは命の危険を感じながらも、この狂気に満ちた環境から脱出しようとするが、そこには予想外の結末が待ち受けている。恐怖と社会的テーマが絡み合うスリラーの中で、彼が見つけた真実とは何だったのか。映画は観客を緊張感と驚きの連続へと引き込む。

『ゲット・アウト』の監督・主要キャスト

  • ジョーダン・ピール(38)監督
  • ダニエル・カルーヤ(28)クリス・ワシントン
  • アリソン・ウィリアムズ(29)ローズ・アーミテージ
  • キャサリン・キーナー(58)ミッシー・アーミテージ
  • ブラッドリー・ウィットフォード(57)ディーン・アーミテージ
  • ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(27)ジェレミー・アーミテージ
  • リル・レル・ハウリー(37)ロッド・ウィリアムス
  • ラキース・スタンフィールド(25)アンドリュー・ローガン・キング

『ゲット・アウト』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 4.0 ★★★★☆
・大切な人と観たい 3.0 ★★★☆☆
・ひとりでじっくり 3.0 ★★★☆☆
・恐怖 3.0 ★★★☆☆
・人種問題 4.0 ★★★★☆

ホラーと社会テーマの融合

『ゲット・アウト』は、ホラー映画の枠を超え、鋭い社会風刺とスリリングな展開で高い評価を受けた作品である。ジョーダン・ピール監督は、ホラーの中に人種問題や無意識の偏見というテーマを加え、恐怖と現実を対比することで観客を物語に引き込んだ。ジョーダン・ピールはこのプロットでアカデミー脚本賞を受賞。
また、同主演男優賞にノミネートされたダニエル・カルーヤのリアリズムが溢れる熱演も見どころのひとつである。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

一方で、ホラー映画としての怖さを期待していた観客の中には、作品が人種問題などの社会的メッセージに重きを置きすぎていると感じた人もいる。この批判は映画の挑戦的な試み自体を否定するものではなく、むしろその話題性を高めたと言える。

こぼれ話

『ゲット・アウト』の製作には、ジョーダン・ピール監督自身が深く関与し、彼の黒人としての経験や視点が色濃く反映されている。映画のアイデアは、バラク・オバマ大統領時代の「ポスト人種社会」という幻想にインスパイアされたという。

また、タイトルの「ゲット・アウト」は、アメリカのホラー映画ファンが典型的な危機的状況で叫ぶフレーズをそのまま使用したもの。
映画に登場する「サンクション」という催眠状態の設定も、恐怖と社会的テーマを巧妙に絡めるための斬新なアイデアとして注目を集めた。公開後、それらは文化的な現象となり、SNSやレビューサイトで物語とテーマについて議論を引き起こした。新しいホラーのあり方を提示した本作品は興行的にも大成功を収め、前述のように製作費の50倍以上となる2億5,500万ドル(300億円)を超える収益を記録した。

みんなのレビュー