パラサイト「半地下の家族」(2019)の解説・評価・レビュー

パラサイト「半地下の家族」 クライムサスペンス
クライムサスペンスブラックコメディ家族ドラマ

『パラサイト 半地下の家族』(英題:Parasite)は2019年に公開された韓国映画で、貧富の格差をテーマに描かれた社会派ブラックコメディスリラー。監督はポン・ジュノ、主要キャストにはソン・ガンホやチェ・ウシクが名を連ねる。物語は、貧しい家族が裕福な一家の生活に入り込む過程で、両家族の間に次第に緊張が高まり、やがて悲劇的な結末へと至る展開を描く。

本作は第72回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞し、第92回アカデミー賞では作品賞監督賞脚本賞国際長編映画賞の4冠を達成する快挙を遂げた。ジャンルを超えたストーリーテリングと、貧富の格差を鮮烈に描いたメッセージ性で世界中の観客と批評家を魅了し、映画史に名を刻んだ作品である。

『パラサイト 半地下の家族』のあらすじ(ネタバレなし)

ソウルの半地下に暮らす貧しいキム一家は、家族全員が失業し、日々内職で何とか生活を繋いでいた。そんなある日、長男ギウが裕福なパク家の娘の家庭教師の仕事を紹介されることから、家族の運命が大きく動き出す。ギウは巧みな話術と偽の経歴を駆使してパク家に信頼され、次第に妹のギジョン、父のギテク、母のチュンスクをも別の仕事としてパク家に雇わせることに成功する。こうして一家は、パク家の使用人たちを追い出しながら、巧妙にその生活へと入り込んでいく。

しかし、平穏に見えた生活は長く続かない。ある夜、パク家の家政婦だったムングァンが戻ってきたことで、キム一家の知られざる秘密が暴かれ始める。半地下の生活と豪邸の間に広がる経済的格差や社会的緊張が、次第に予想外の展開と悲劇的な結末を導いていく。笑いと不安が交錯する中で、観客を驚かせる衝撃のストーリーが展開される。

『パラサイト 半地下の家族』の監督・主要キャスト

  • ポン・ジュノ(50)監督
  • ソン・ガンホ(52)キム・ギテク
  • チャン・ヘジン(44)キム・チュンスク
  • チェ・ウシク(29)キム・ギウ
  • パク・ソダム(27)キム・ギジョン
  • イ・ソンギュン(44)パク・ドンイク
  • チョ・ヨジョン(38)パク・ヨンギョ
  • チョン・ジソ(20)パク・ダヘ

(役者の年齢は公開時点のもの)

『パラサイト 半地下の家族』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 3.0 ★★★☆☆
・大切な人と観たい 2.0 ★★☆☆☆
・ひとりでじっくり 5.0 ★★★★★
・ブラックコメディー 5.0 ★★★★★
・アカデミー作品 5.0 ★★★★★

ポジティブ評価

『パラサイト 半地下の家族』は、現代社会の不平等を風刺的に描く。ポン・ジュノ監督は豊かなパク家と貧しいキム一家の対比をスリルとユーモアを織り交ぜて表現し、物語を予測不能な展開へと導いた。特に、階層差を象徴する「上下構造」を巧みに活用した映像表現は、視覚的にも物語的にも観客に強い印象を与えるものとなっている。

本作は、アカデミー賞で史上初の外国語映画による作品賞受賞を果たすなど、国際的にも大きな成功を収めた。多層的なテーマを内包しつつも、エンターテインメント性を損なわないバランス感覚が評価された形。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

アメリカ映画の産業振興のために開設されたアカデミー賞において、外国映画賞という分野を設けているのに関わらず作品賞を受賞したアジア映画ということで、その在り方に対する様々な意見が寄せられている。ハリウッドの国際化や、文化的多様性を意識し過ぎることに対するハレーションもあるか。
ステレオタイプな貧困と富裕層の描かれ方や、犯罪動機が単純すぎるといったプロットに対する批評もしばしばみられる。googleアメリカでレビューされた次の意見が興味深い。

残りのプロットはそのままで、平均的なアメリカ人家族が裕福なアメリカ人家族に潜入しようとしているという設定に変更すると、ただのひどい映画になるでしょう。

ただ、現実の犯罪は映画のような”ひねり”を伴うことは少なく、多くの場合、貧困などの理由から衝動的に行われることが多い。それを考えると、ハリウッド映画の文脈とは異なるかもしれないが、社会問題への問いかけとして価値を持つといえるのではないだろうか。
緻密でブラックユーモアにあふれた脚本については高評価一色。百聞は一見にしかずということで、多くの方に視聴をお勧めしたい作品である。

こぼれ話

本作はポン・ジュノ監督が構想に3年以上を費やし、撮影前に全ての場面を詳細に絵コンテ化したことで知られる。また、物語の重要な舞台となるパク家の豪邸は完全にセットとして作られ、美術チームが建築家の視点で設計したという。

韓国映画初のアカデミー作品賞受賞という快挙を成し遂げた背景には、国際映画祭での評価を積み重ねることで得たグローバルな支持がある。

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