グランド・ブダペスト・ホテル(2014)の解説・評価・レビュー

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ブラックコメディ冒険ドラマ

『グランド・ブダペスト・ホテル』(原題:The Grand Budapest Hotel)は、2014年に公開されたウェス・アンダーソン監督によるコメディ・ドラマ映画。架空の東欧の国ズブロフカを舞台に、名門ホテルのコンシェルジュ、グスタフとロビー係ゼロの冒険を描く。主演はレイフ・ファインズ、共演にトニー・レヴォロリ、ウィレム・デフォー、ティルダ・スウィントンら豪華キャストが集結。美しい美術セットと独特な色彩感覚、緻密な構図が特徴で、ウェス・アンダーソンの作家性が全面に出た作品となっている。

本作は第87回アカデミー賞で作品賞を含む9部門にノミネートされ、美術賞衣装デザイン賞作曲賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞の4部門を受賞。全世界の興行収入は約1.7億ドルを記録し、アート性と商業性を両立させた。アンダーソン監督特有のユーモアやヴィジュアル美学は、批評家と観客双方から称賛を浴び、モダンなクラシック映画として評価されている。

『グランド・ブダペスト・ホテル』のあらすじ紹介(ネタバレなし)


20世紀初頭、架空の東欧の国ズブロフカにある名門ホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」。このホテルで名高いコンシェルジュ、グスタフ(レイフ・ファインズ)は、上流階級の客人たちに絶大な信頼を寄せられていた。そんな中、彼はロビー係として採用された若い移民ゼロ(トニー・レヴォロリ)を弟子に迎える。

ある日、グスタフの親しい宿泊客である老婦人マダムD(ティルダ・スウィントン)が不審な死を遂げる。彼女の遺言により高価な絵画「少年とリンゴ」がグスタフに遺贈されるが、それを快く思わないマダムDの息子ディミトリ(エイドリアン・ブロディ)は、彼を殺人容疑で告発する。濡れ衣を着せられたグスタフはゼロと共に絵画を持ち逃げし、清白を証明しようと逃走劇を繰り広げる。

事件を追う冷酷な殺し屋(ウィレム・デフォー)や、奇妙な出来事に次々と巻き込まれる中で、彼らはホテルの過去や未来に深く関わる真相にたどり着く。時代の移り変わりとともに失われつつある美しい世界の片鱗が、彼らの旅の中で鮮やかに描かれる。

『グランド・ブダペスト・ホテル』の監督・主要キャスト

  • ウェス・アンダーソン(44)監督
  • レイフ・ファインズ(51)グスタフ・H
  • トニー・レヴォロリ(17)ゼロ・ムスタファ
  • ティルダ・スウィントン(53)マダムD
  • エイドリアン・ブロディ(40)ディミトリ
  • ウィレム・デフォー(58)ジョプリング
  • ジェフ・ゴールドブラム(61)コヴァックス弁護士
  • シアーシャ・ローナン(19)アガサ

(年齢は映画公開時点のもの)

『グランド・ブダペスト・ホテル』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 4.0 ★★★★☆
・大切な人と観たい 3.0 ★★★☆☆
・ひとりでじっくり 3.0 ★★★☆☆
・お腹が痛くなる面白さ 5.0 ★★★★★
・まるで舞台劇 4.0 ★★★★☆

絵画のような舞台映画

『グランド・ブダペスト・ホテル』は、その独創的なビジュアルスタイルと、ウェス・アンダーソン特有のユーモアが高く評価された。対称性を重視した構図や鮮やかな色彩、ミニチュアを駆使したセットデザインが、映画全体をまるで絵画のように引き立てている。

レイフ・ファインズが演じるグスタフの洗練された振る舞いと軽妙な台詞回しは、作品の中心を担う魅力的な要素。また、キャラクターそれぞれの個性が際立つ。観客と批評家の双方から絶賛され、アートのようなな美しさとコメディの融合が映画体験を特別なものにしている。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

アンダーソン監督の笑いは、視聴者によって好みが分かれるか。百聞一見、好きな人には特別な映像体験となるため、ぜひ一度はお勧めしたい。

こぼれ話

本作の舞台となった「グランド・ブダペスト・ホテル」のデザインには、ヨーロッパのアール・デコ様式やクラシックなホテル建築が参考にされている。撮影はドイツ・ザクセン州のゴーリッツで行われ、実際のデパートをホテルの内部として改装した。

物語の背景には、シュテファン・ツヴァイクというオーストリアの作家の作品や生涯が影響を与えており、監督自身がツヴァイクへのオマージュであると語っている。

映画に登場する料理「メンドルのケーキ」は、本作の象徴的なアイテムとして実際に製作され、その細部までこだわり抜かれた。美術や衣装の細部にわたる徹底したこだわりが、アカデミー賞での受賞にもつながった。

みんなのレビュー