実写版バービー人形の社会派ドラマ?ーーー
2023年に公開された映画『バービー』は、グレタ・ガーウィグ監督による実写映画で、マテル社の人気ドール「バービー」(いわゆるバービー人形)を題材にしたコメディ・ファンタジー作品。主演はマーゴット・ロビーがバービー役を、ライアン・ゴズリングがケン役を務めた。映画は理想郷「バービーランド」での完璧な生活に疑問を抱いたバービーが、現実世界へ旅立つという物語を描く。フェミニズムやジェンダーの問題、自己発見のテーマをユーモアとポップな映像美で表現し、批評家から高い評価を受けた作品である。
本作は、製作費約1億4,500万ドル(約200億円)をかけて制作され、全世界興行収入が15億ドル(2,000億円)を超える大ヒットを記録。2023年の興行収入1位を記録し、ワーナーブラザーズ史上最大のヒット作、女性監督による映画としても歴代最高記録を樹立した。さらに、アカデミー賞やゴールデングローブ賞などの主要な映画賞へのノミネートも期待されている。製作には主演のマーゴット・ロビーが設立したプロダクション「ラッキーチャップ・エンターテインメント」が関与し、企画段階から独創的なアプローチが行われた点も話題となった。
映画バービーのあらすじ紹介(ネタバレなし)
理想郷「バービーランド」では、すべてのバービーたちが完璧な日常を送り、女性たちが社会を主導する理想的な世界が広がっていた。しかし、ひとりのバービー(マーゴット・ロビー)が突如として「死」や「現実」という概念に悩まされるようになる。問題解決の鍵を探るため、彼女はバービーランドを離れ、人間たちが住む「現実世界」へと旅立つことを決意。そこでは、彼女の存在やアイデアが驚きと混乱をもたらし、自己のアイデンティティを模索する新たな冒険が始まる。一方で、ケン(ライアン・ゴズリング)も同行し、現実世界で自分なりの役割を見つけようとする。バービーは現実世界での出会いを通じて、自己発見と「完璧さ」の本当の意味を見出していく。
監督・主要キャスト
※人名の後の()カッコは公開当時の年齢
- グレタ・ガーウィグ(40)監督
- マーゴット・ロビー(33)バービー
- ライアン・ゴズリング(42)ケン
- アメリカ・フェレーラ(39)グロリア
- ケイト・マッキノン(39)変てこバービー
- マイケル・セラ(35)アラン
- アリアナ・グリーンブラット(15)サーシャ
- イッサ・レイ(38)大統領バービー
『バービー』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 4.0 ★★★★☆ |
・大切な人と観たい | 3.0 ★★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 4.0 ★★★★☆ |
・後で語れる | 5.0 ★★★★★ |
・可愛い世界観 | 5.0 ★★★★★ |
ポジティブ評価
『バービー』は、グレタ・ガーウィグ監督の手腕と、マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリングらキャスト陣の華やかな演技によって、単なるファンタジー映画を超えた社会派エンターテイメントとして注目を集めた。
ピンクで彩られた「バービーランド」のデザインは遊び心に満ち、視聴者を夢の世界へ誘うが、その裏側には現代社会のジェンダー観やアイデンティティの探求という深いテーマが織り込まれている。特にゴズリング演じるケンのキャラクターは、コミカルながらも男性性の脆さや自己肯定の旅を表現している。マーゴット・ロビーは、象徴的な「完璧なバービー」を演じながら、キャラクターが直面するアイデンティティの葛藤を繊細に演じ、新たなバービー像を作り上げた。
映画のテンポも良く、ポップカルチャーやメタフィクション的な要素が巧みに織り込まれており、ユーモアと知性が融合した作品として高い評価を得ている。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
『バービー』の野心的なテーマは、人によってはメッセージ性が過剰に感じられる場面があるかもしれない。特に、中盤以降のジェンダー論に重きを置いた場面がやや説明的で、視聴者に対してテーマを「教え込む」ような印象を与えるかもしれない。
そこは社会派ドラマとしての側面。単なる可愛いに留まらない、普遍的な価値を未来に残そうという試みが感じられる作品である。
こぼれ話
バービーの映画化企画は2009年から始動しており、当初はソニー・ピクチャーズが権利を持っていた。その際は、エイミー・シューマーが主演・脚本を担当する予定だったが、クリエイティブの方向性の違いにより降板。その後、ワーナー・ブラザースが権利を取得し、グレタ・ガーウィグ監督とマーゴット・ロビーのタッグで本格的に動き出した。この変更が功を奏し、最終的にはアカデミー賞にノミネートされるほどの評価を得る作品となった。
映画のセットデザインは、1950年代のクラシックなバービーの世界観を再現するために、可能な限り実際のセットを使用する方針が取られた。バービーランドのピンクの街並みは、デジタル処理ではなく物理的に作られ、使用されたピンクのペンキの量があまりにも膨大だったため、一時的に世界的なピンクペンキ不足が発生したという逸話もある。また、俳優たちがバービーランドでの動きを「人形らしく」見せるために、ワイヤーを使った撮影や、不自然なポーズを維持するトレーニングが行われた。
ガーウィグ監督は「2001年宇宙の旅」や「オズの魔法使い」などのクラシック映画の影響を受けていることを公言しており、特に冒頭のモノリス風のシーンは「2001年宇宙の旅」へのオマージュとなっている。こうした細かい演出の積み重ねが、本作のユニークな世界観を支えている。
音楽面でも話題を呼び、ライアン・ゴズリング演じるケンの楽曲「I’m Just Ken」は、劇中のユーモラスなシーンを象徴する存在となった。この曲は最初は単なる挿入歌の予定だったが、ゴズリングのコミカルな演技と熱唱力が話題を呼び、結果的にアカデミー賞歌曲賞にもノミネートされた。
興行的には、世界中で15億ドル(2,000憶円)以上を記録し、女性監督による映画として歴史的な成功を収めた。
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