ノッティングヒルの恋人(1999)の解説・評価・レビュー

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『ノッティングヒルの恋人』(原題: Notting Hill)は、1999年に公開されたロマンティック・コメディ映画。監督はロジャー・ミッシェル、脚本はリチャード・カーティスが手掛け、主演はジュリア・ロバーツとヒュー・グラント。ロンドンのノッティングヒル地区を舞台に、地元の小さな書店を営む平凡な男性ウィリアム(ヒュー・グラント)と、世界的な映画スターのアナ(ジュリア・ロバーツ)が偶然の出会いから恋に落ちる物語を描く。

この映画は、現実の生活とセレブリティの世界の交錯を軽妙かつ感動的に描き、多くの観客から支持を得た。制作費4,200万ドル(50億円)に対し、興行収入は全世界で3億6,400万ドル(430億円)を記録し、1999年のロマンティック・コメディ映画として最大のヒット作となった。ジュリア・ロバーツとヒュー・グラントの息の合った演技や、印象的なサウンドトラックも話題を集めた。特にエルヴィス・コステロがカバーした「She」は映画のテーマソングとして高く評価され、視聴者の記憶に残るものとなった。

『ノッティングヒルの恋人』のあらすじ紹介(ネタバレなし)

ロンドンのノッティングヒル地区で小さな旅行書専門店を営むウィリアム・タッカー(ヒュー・グラント)は、平凡で穏やかな日々を送っていた。ある日、彼の店に世界的な映画スター、アナ・スコット(ジュリア・ロバーツ)が偶然訪れる。ウィリアムは驚きながらもアナに接客し、その後も偶然の出会いを重ねるうちに、二人の間にロマンチックな関係が芽生える。

しかし、彼女の派手なセレブ生活と、ウィリアムの地味で庶民的な日常は大きく異なる世界。アナの生活には常にパパラッチや世間の目が付きまとい、二人の恋愛はさまざまな困難に直面する。それでも互いへの想いを深めるウィリアムとアナは、違う世界に生きる自分たちが一緒にいる方法を模索していく。果たして、二人はその壁を乗り越え、愛を実らせることができるのか?

ノッティングヒルの美しい街並みと心温まる人間関係を背景に、愛の力を信じた二人の物語が紡がれる。

『ノッティングヒルの恋人』の監督・主要キャスト

  • ロジャー・ミッシェル(43)監督
  • ジュリア・ロバーツ(31)アナ・スコット
  • ヒュー・グラント(38)ウィリアム・タッカー
  • リス・エヴァンス(32)スパイク
  • ジーナ・マッキー(35)ベラ
  • ティム・マッキンリー(33)マックス
  • エマ・チャンバース(35)ハニー
  • ヒュー・ボネヴィル(36)バーニー

『ノッティングヒルの恋人』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 3.0 ★★★☆☆
・大切な人と観たい 5.0 ★★★★★
・ひとりでじっくり 3.0 ★★★☆☆
・王道的なロマンス映画 5.0 ★★★★★
・美しい音楽と街並み 5.0 ★★★★★

ポジティブ評価

ロマンティック・コメディの傑作として広く評価されている『ノッティングヒルの恋人』。
ハリウッドスターと書店員の恋を描いた脚本は、今も色あせない王道的なおとぎ話である。容姿もキャリアも当時全盛期を迎えていたジュリアロバーツは”スター”という役柄的に完璧なキャスティングだと言えるし(ほかのキャストが思い浮かばないくらい完璧)、相手役のヒュー・グラントもまた、甘く、恋愛映画のアイコンのような存在で、配役の時点でヒットが約束された作品だった。懐古と言われるかもしれないが、新聞雑誌が娯楽だった時代の恋が今観ると大人っぽく、携帯電話が無いことによる”すれ違い”がラブコメの教科書のようなプロットを作り出す。作中には名台詞も多く、ロマンス映画が好きなら是非一度は観たい作品だ。

舞台となるノッティングヒルの街並みが、映画全体を通じて美しく描かれており、物語のロマンティックな雰囲気を際立たせている。書店などのロケ地は世界中の観光客が今なお訪れるスポットになっている。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

この映画について世界中のネガティブ評価を集約すると、出会いのシーンで「スターがなぜこの書店員に恋をしたのか」理解に苦しむという声。とくに最初のキスなど、演出についても賛否が分かれる。現実離れした設定に対して、批判するのか、おとぎ話と見るのか、感じ方は人それぞれ。ただヒューグラントの見た目が甘いため、一定の説得力は持つ(その男を好きになって不思議ではない)。

こぼれ話

『ノッティングヒルの恋人』に登場するブルーの扉は、実際に脚本家リチャード・カーティスが住んでいた家の扉をモデルにしている。また前述のように、ノッティングヒルで撮影された実際の書店や街並みは、映画公開後に観光地として有名になり、現在も多くのファンが訪れる聖地となっている。

ジュリア・ロバーツは、本作の主演を務めるにあたり、当時の女優としては破格の1500万ドル(当時のレートで約18億円)のギャラを受け取った。これは1990年代のハリウッドにおける女性主演俳優の最高水準であり、彼女のスター性を象徴する数字となった。何より、作中で「女優」のアナが年収を尋ねられたシーンは、ジュリア・ロバーツのリアルなギャラを述べたことになるから面白い。
劇中、アナが「ハリウッドでは女優は年を取ると捨てられる」と語るシーンがある。これは脚本に基づいた台詞だが、ロバーツ自身も「この台詞は、実際の業界の現実をよく表している」とコメントしており、彼女のキャリアと重なる部分もあった。

テーマ曲として使用されたエルヴィス・コステロによる「She」は、原曲がシャルル・アズナヴールによって歌われたフランスの名曲であり、この映画のロマンティックな雰囲気を見事に補完している。映画を知らない人でもこの旋律を一度は耳にしたことがあるだろう。

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