『キック・アス』(原題:Kick-Ass)は、2010年に公開されたアクションコメディ映画で、マシュー・ヴォーン(39)監督がメガホンを取った作品。原作はマーク・ミラーとジョン・ロミータ・Jrによる同名のアメコミで、スーパーヒーローが現実世界で活躍することを夢見る少年たちをユーモラスかつ暴力的に描いている。主演のアーロン・テイラー=ジョンソンは、普通の高校生がヒーローになろうと奮闘する姿をコミカルに演じた。クロエ・グレース・モレッツは天才的な戦闘能力を持つ少女ヒットガールを演じ、その過激なアクションが話題を呼んだ。共演にはニコラス・ケイジ、クリストファー・ミンツ=プラッセらが顔を揃える。
製作費約3,000万ドル(当時のレートで24億円)に対し、全世界での興行収入は約9,600万ドル(77憶円)を記録。型破りなヒーロー像や、グラフィックノベルらしいスタイリッシュな演出が評価される一方、過激な暴力描写や未成年キャラクターのアクションに賛否両論が巻き起こった。ポップカルチャーへの影響も大きく、続編やスピンオフの展開も進められた。
『キック・アス』あらすじ紹介(ネタバレなし)
平凡な高校生デイヴ・リゼウスキ(アーロン・テイラー=ジョンソン)は、コミック好きなオタク仲間と冴えない日常を送っていた。しかし、「なぜ現実世界にスーパーヒーローがいないのか」と疑問を抱いた彼は、ネット通販で買ったコスチュームを身にまとい、「キック・アス」という名前のヒーローとして活動を開始する。戦闘訓練も特殊能力もないデイヴは、街のチンピラたちに手痛い反撃を受けるものの、その様子を偶然動画撮影されたことでネット上で一躍有名人となる。
そんな中、デイヴは裏社会のボスであるフランク・ダミコ(マーク・ストロング)を狙う本物の犯罪ファイター、ヒットガール(クロエ・グレース・モレッツ)とその父ビッグ・ダディ(ニコラス・ケイジ)に出会う。彼らは過激な戦闘能力でギャングを制圧していくプロのヒーローだった。一方、フランクの息子クリス(クリストファー・ミンツ=プラッセ)は、ヒーローに近づくために「レッドミスト」というキャラクターを装い、デイヴたちに接触するが、裏では父の復讐計画が進行していた。
デイヴは仲間たちとともに正義を貫こうとするが、次第に命を懸けた戦いに巻き込まれていく。果たして彼は真のヒーローとして成長し、悪を打ち倒すことができるのか。
『キック・アス』の監督・主要キャスト
- マシュー・ヴォーン(39)監督
- アーロン・テイラー=ジョンソン(19)デイヴ・リゼウスキ/キック・アス
- クロエ・グレース・モレッツ(12)ミンディ・マクレイディ/ヒットガール
- ニコラス・ケイジ(46)デイモン・マクレイディ/ビッグ・ダディ
- クリストファー・ミンツ=プラッセ(20)クリス・ダミコ/レッドミスト
- マーク・ストロング(46)フランク・ダミコ
- リンジー・フォンセカ(23)ケイティ・ドーマ
- クラーク・デューク(25)マーティ
(年齢は映画公開当時のもの)
『キック・アス』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 5.0 ★★★★★ |
・大切な人と観たい | 4.0 ★★★★☆ |
・ひとりでじっくり | 3.0 ★★★☆☆ |
・アメコミネタ満載 | 5.0 ★★★★★ |
・ブラックユーモア | 5.0 ★★★★★ |
ポジティブ評価
『キック・アス』は、スーパーヒーロー映画の既成概念を覆すユニークなアプローチで、観客に鮮烈な印象を残した作品である。特に、ヒーローの成長を描く王道のストーリーに加え、過激でブラックユーモア溢れる演出が大きな魅力となっている。デイヴが普通の少年からヒーローとして奮闘する姿は、多くの観客に共感を与えると同時に、スーパーヒーロー像を風刺的に再解釈した点でも新鮮さを感じさせた。
クロエ・グレース・モレッツが演じたヒットガールは、物語の中心に大きなインパクトを与えるキャラクターだ。幼い少女が繰り広げる激しいアクションは、衝撃的でありながらも痛快で視聴者を釘付けにした。これに加え、ニコラス・ケイジ演じるビッグ・ダディとの絆も共感を呼ぶ。
マシュー・ヴォーン監督は、原作コミックの暴力性とユーモアを忠実に再現しながら、ポップでスタイリッシュな演出を加えることで、エンターテインメント性を高めた。アクションシーンにおける独特のカメラワークや音楽の使い方も評価が高く、特にクライマックスのシーンでは、爽快感と緊張感が調和している。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
『キック・アス』はその型破りな内容で注目を集めた一方、過激な暴力描写や未成年キャラクターのアクションシーンに対して批判も挙がった。特に、クロエ・グレース・モレッツ演じるヒットガールが繰り広げる残虐な戦闘は、多くの観客に衝撃を与える一方で、「未成年のキャラクターが行うには不適切」と感じる人も少なくない。また、劇中のブラックユーモアや過激な言葉遣いが一部の視聴者に不快感を与えたとの指摘もある。
アメリカのレビューサイトを見渡すと、原作コミックのファンからの批判がちらほら。漫画原作の宿命か。日本においてこの原作があまり知名度が高いとは言えないため、多くの初見の視聴者は気にならないのではないか。原作はもっとダークな雰囲気だということで、映画を観て気になった方はAmazonで購入可能だ(2025年時点、編集部確認)。
こぼれ話
『キック・アス』の制作には、独立系映画らしい意欲的な試みが多く見られる。マシュー・ヴォーン監督は、スタジオシステムに頼らず、自ら資金を調達して本作を製作した。これは、原作コミックの過激な内容がスタジオから敬遠されたためで、結果的に監督のビジョンを自由に反映させることができた。この決断が、本作の独創的なスタイルを生む大きな要因となった。
本作の重要なキャラクターであるヒットガールを演じたクロエ・グレース・モレッツは、12歳ながら驚異的なアクションを披露して注目を浴びた。彼女は役作りのためにトレーナーの指導を受け、格闘技や武器の扱いを習得して撮影に臨んだという。一方、劇中での過激な台詞については、「撮影時には意味を完全には理解していなかった」と後にインタビューで語り、子役としての苦労をうかがわせた。
さらに、ニコラス・ケイジが演じたビッグ・ダディのキャラクター造形も話題となった。ケイジはアダム・ウェスト版の『バットマン』に敬意を表し、独特なしゃべり方やコスチュームでキャラクターに個性を与えた。視聴者の間では「奇妙だがクセになる演技」として語り継がれている。
なお、ビッグ・ダディの衣装デザインには、意図的に既存のスーパーヒーロー映画を模倣した要素が含まれており、パロディ的なユーモアも楽しめる作りとなっている。
興行的には大ヒットとはいかなかったものの、コアなファン層を生み、続編『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』の制作につながった本作。独立映画としての挑戦やユニークなキャラクターが記憶に残る。
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