『アバター』(原題:Avatar)は、2009年に公開されたSF映画で、ジェームズ・キャメロン監督が手掛けた壮大な叙事詩的作品。遠い未来、人類が希少資源を求めて異星「パンドラ」を開拓し、その地に暮らす先住民族ナヴィとの対立を描く。主演はサム・ワーシントンで、下半身不随の元海兵隊員ジェイク・サリーが主人公。彼はナヴィの姿を模したアバターを介してパンドラに入り込み、先住民族の一員となっていく。共演にはゾーイ・サルダナ、シガニー・ウィーバー、スティーヴン・ラングが名を連ねている。
製作費は約2億4,000万ドル(当時のレートで約230億円)に上り、キャメロン監督が開発した新技術による3D映像表現が大きな話題を呼んだ。公開当時の世界興行収入は約29億ドル(2,700憶円)に達し、『タイタニック』を超える史上最高記録を樹立。この記録は2025年現在も破られていない。
また、環境問題や先住民族の権利をテーマに据えたストーリーも注目され、第82回アカデミー賞では美術賞、撮影賞、視覚効果賞を受賞した。『アバター』は視覚技術、物語のスケール、文化的メッセージのすべてが融合した特別な一作といえる。
『アバター』あらすじ紹介(ネタバレなし)
2154年、地球の資源が枯渇した人類は、希少鉱物「アンオブタニウム」を採掘するため、豊かな自然と独自の生態系を持つ惑星パンドラに進出していた。しかし、そこには先住民族ナヴィが暮らしており、彼らとの対立が深刻化していた。下半身不随の元海兵隊員ジェイク・サリー(サム・ワーシントン)は、亡き兄に代わり、ナヴィのDNAと人間のDNAを融合させた「アバター」を操作する任務に参加することになる。
ジェイクはパンドラの自然やナヴィの文化を学ぶうちに、部族の一員となり、ナヴィの女性ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と深い絆を築いていく。一方、人類はナヴィの聖地「魂の木」を破壊して資源を確保しようと計画を進めており、ジェイクは自らの任務とナヴィへの忠誠の狭間で葛藤する。
やがて、ジェイクはナヴィとともに人類の侵略に立ち向かう決意を固め、壮絶な戦いに身を投じることとなる。人類と自然、先住民族と技術文明の衝突を描くこの物語は、愛と勇気、そして地球外の壮大な世界を舞台にした人類の未来への問いかけでもある。
『アバター』の監督・主要キャスト
- ジェームズ・キャメロン(55)監督
- サム・ワーシントン(33)ジェイク・サリー
- ゾーイ・サルダナ(31)ネイティリ
- シガニー・ウィーバー(60)グレース・オーガスティン博士
- スティーヴン・ラング(57)マイルズ・クオリッチ大佐
- ジョヴァンニ・リビシ(35)パーカー・セルフリッジ
- ミシェル・ロドリゲス(31)トゥルーディ・チャコン
- ジョエル・デヴィッド・ムーア(42)ノーム・スペルマン博士
(年齢は映画公開当時のもの)
『アバター』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 4.0 ★★★★☆ |
・大切な人と観たい | 4.0 ★★★★☆ |
・ひとりでじっくり | 2.0 ★★☆☆☆ |
・実写とCGの融合 | 5.0 ★★★★★ |
・現代版西部劇?? | 4.0 ★★★★☆ |
ポジティブ評価
『アバター』は、映画技術の限界を押し広げた革命的な作品として評価されている。特に、ジェームズ・キャメロン監督が採用した革新的な3D技術とモーションキャプチャは、視聴者を圧倒的な没入感のある仮想世界へと引き込んだ。惑星パンドラの美しい風景や独自の生態系は細部まで緻密に描かれており、自然と共生するナヴィの文化がリアルに感じられる映像表現となっている。
また、物語は普遍的なテーマである自然保護や文化の尊重を取り上げ、技術文明と自然との対立を描く点で強いメッセージ性を持っている。ジェイク・サリーがナヴィの一員となる過程を通じて、観客も彼らの文化に感情移入できる構造は見事である。特に、聖地「魂の木」をめぐるシーンは、自然とスピリチュアルな要素が融合し、感動を呼ぶ場面として印象深い。
公開当時、世界中でセンセーションを巻き起こし、視覚効果とストーリーが融合した「映画体験」の新たな形を示した。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
興行収入や3D新技術に対する話題が先行したため、反動のようにストーリーやキャラクター描写における批評はやや辛口になりがち(ステレオタイプや平面的という批判)。
映画の長尺(約162分)も、人によっては「過剰で疲れる」。
映画館の上映では3D眼鏡を着用して視聴するスタイルが取られ、ここにおいても疲れたなどの感想もちらほら。
こぼれ話
ジェームズ・キャメロン監督は本作の構想を1990年代に練っていたが、当時の技術では彼のビジョンを実現できなかったため、約10年にわたって製作を見送った。映画の公開が2009年となったのは、3D技術やモーションキャプチャ技術の進化によって、彼の求めるクオリティを達成できる環境が整ったからである。
本作で描かれるナヴィの言語は、言語学者のポール・フロマー博士が監修し、完全に新たに作られた人工言語である。ナヴィ語は文法、語彙、発音が緻密に設計されており、キャストたちは撮影前に言語の発音やアクセントを学ぶ特訓を受けた。この言語の存在が、ナヴィ文化のリアリティを高める一因となっている。
パンドラの自然環境や生態系のデザインには、地球上のさまざまな生物が参考にされており、SFでありながらどこか親しみやすさを感じさせる要素が含まれている。特に、空を飛ぶ生物「バンシー」や光る植物の描写は、観客にとって忘れがたいビジュアル体験を提供している。
映画が世界的大ヒットを記録した後、パンドラの世界を再現したテーマパーク「アバター・フライト・オブ・パッセージ」がフロリダ州ディズニー・アニマルキングダムに誕生した。ここでは、映画の象徴的な要素を体験できるアトラクションが設置され、映画のファンや家族連れから熱狂的な支持を受けている。『アバター』は単なる映画作品にとどまらず、文化的現象として現在もその影響を与え続けている。
アカデミー賞の多くの部門にノミネートされたものの、受賞したのは美術賞、撮影賞、視覚効果賞の3部門。同年に作品賞、監督賞などの主要部門を獲得したは『ハート・ロッカー』で、監督はジェームズ・キャメロンの元妻であるという皮肉的なエピソードも残した。
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