『ゾディアック』(原題: Zodiac)は、2007年公開のアメリカ映画。デヴィッド・フィンチャーが監督を務め、実際にアメリカで発生した未解決連続殺人事件「ゾディアック事件」を題材としたサスペンスドラマである。出演はジェイク・ジレンホール、ロバート・ダウニー・Jr.、マーク・ラファロら実力派俳優が名を連ねる。
物語は、1960~70年代にかけてサンフランシスコを震撼させたゾディアック事件を追う新聞記者、風刺漫画家、刑事たちの視点から展開される。事件を通じて次第に人生を狂わせていく彼らの姿が描かれる。2時間半以上の上映時間にもかかわらず、緊張感が途切れない構成が評価された。世界興行収入は約9,600万ドル(当時のレートで約115億円)。フィンチャー監督の精緻な脚本と映像美が視聴者と批評家から高い評価を受けた。
『ゾディアック』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
1969年、アメリカ・サンフランシスコ。ある日、新聞社に届いた暗号文付きの手紙が、未解決の連続殺人事件の犯人「ゾディアック」を名乗る人物からだと判明する。この事件に興味を抱いた「サンフランシスコ・クロニクル」紙の風刺漫画家ロバート・グレイスミスと記者ポール・エイブリーは、犯人の暗号解読や事件の真相解明にのめり込んでいく。一方、刑事デイヴィッド・トースキーらもゾディアック逮捕に向けて捜査を進めるが、犯人の狡猾さと証拠の少なさが立ちはだかる。
犯行声明や挑発的な手紙を送りつけるゾディアックに対し、事件は次第に注目を集める一方、真相に近づこうとする人々の生活や精神が少しずつ壊れていく。グレイスミスは家族や仕事を犠牲にしてまで独自の調査を続け、ついにある有力な容疑者に行き着くが、事件は解決するのか―――。
『ゾディアック』の監督・主要キャスト
・デヴィッド・フィンチャー(44)監督
・ジェイク・ジレンホール(26)ロバート・グレイスミス
・ロバート・ダウニー・Jr.(41)ポール・エイブリー
・マーク・ラファロ(39)デイヴィッド・トースキー
・アンソニー・エドワーズ(44)ウィリアム・アームストロング
・クロエ・セヴィニー(32)メラニー・グレイスミス
・ブライアン・コックス(60)メルヴィン・ベリー
・ジョン・キャロル・リンチ(44)アーサー・リー・アレン
『ゾディアック』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 2.0 ★★☆☆☆ |
・大切な人と観たい | 3.0 ★★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 5.0 ★★★★★ |
・執念と心理描写 | 5.0 ★★★★★ |
・半世紀前のサンフランシスコ | 4.0 ★★★★☆ |
ポジティブ評価
『ゾディアック』は、実在の未解決事件を題材とした、デヴィッド・フィンチャー監督ならではの緻密で緊張感あふれる演出が光る作品。テンポを落とさず視聴者に緊張感を与え続け、手紙や暗号文、証言といった膨大な情報を整理しながら、事件のミステリーと登場人物の心理を並行して描き出している。ロバート・グレイスミスの執念に近い追求心や、デイヴ・トースキーのプロフェッショナルとしての責任感が視聴者の胸を打つ。
この映画のもうひとつの見どころが、1960~70年代サンフランシスコの再現。細部まで徹底したこだわりが見られ、衣装や小道具、撮影場所までが当時の雰囲気を忠実に描き出している。当時の時代背景と事件の深刻さに引き込まれ、一層の臨場感を感じることが出来る。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
『ゾディアック』は、実話を扱う物語の性質上、結末が未解決に終わるためスッキリとしない。一般的な映画のような”答え”が無く、現実を教えてくれる作品なのである。
「謎解き」要素よりも心理描写に重きを置いたヒューマンドラマと捉えることも出来、ミステリーを期待する視聴者によって好みが分かれるところ。
こぼれ話
本作でデヴィッド・フィンチャー監督がこだわったのは、事件のリアリティを徹底的に追求することだった。撮影前には膨大な量の資料が集められ、当時の事件関係者や現場を訪れた目撃者などへのインタビューが行われた。さらに、当時の警察記録や新聞記事も精査され、可能な限り正確な情報が映画に反映されている。
また、撮影の多くは実際の事件現場で行われ、事件の再現シーンは特に注目を集めた。フィンチャー監督は、ゾディアック事件の目撃証言を基に犯行現場を忠実に再現し、映画内での殺人シーンには現実味のある恐怖が漂っている。この細部へのこだわりは、観客に事件の緊張感をリアルに伝える重要な要素となった。
ジェイク・ジレンホールは自身の役柄であるロバート・グレイスミスの著書を何度も読み込み、グレイスミス本人とも面会して役作りを行った。一方、ロバート・ダウニー・Jr.は、ポール・エイブリー役を演じるため、彼が働いていた新聞社や当時の同僚たちから情報を収集したという。俳優陣の努力が凄まじい。
撮影には、当時最新のデジタル技術が用いられ、映像美を引き立てた。本作はデジタル映画制作の先駆けとしても注目を集めた。
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