ラヴクラフト系パニックホラーの傑作 ---
『ミスト』(原題: The Mist)は、2007年公開のアメリカ映画。スティーヴン・キングの短編小説を原作に、フランク・ダラボン(48)が監督を務めたホラー・スリラー作品である。突如として街を覆った濃霧の中で繰り広げられる、人間の恐怖と絶望を描く物語が展開される。
物語は、スーパーに閉じ込められた人々が、霧の中に潜む未知のクリーチャーと、極限状況下での人間同士の対立に直面する様子を描く。主演はトーマス・ジェーン(38)で、主人公デヴィッドを演じる。製作費約1,800万ドル(当時のレートで約20億円)という比較的低予算ながら、世界興行収入は5,700万ドル(約68億円)を超えた。スティーヴン・キング自身も「原作以上に優れている」と絶賛したエンディングは、ホラー映画史に残る特別な一作である。
『ミスト』あらすじ紹介(ネタバレなし)
メイン州の小さな町。激しい嵐の翌朝、画家のデヴィッド・ドレイトンは、息子ビリーと隣人ノートンを連れ、スーパーに買い物へ出かける。しかし、突然街を濃霧が覆い尽くし、霧の中に恐ろしい未知の生物が潜んでいることが判明する。スーパーに閉じ込められたデヴィッドたちは、外に出ることもできず、霧の中から襲い来るクリーチャーと戦うことを余儀なくされる。
一方で、閉鎖された空間の中では、人々の間に不信感や恐怖が広がり、次第に内部の対立が激化。特に、狂信的な宗教信者のミセス・カーモディが、過激な神の裁きの教えを主張し、混乱を煽る。極限状態での人間性の崩壊と外部からの脅威が同時に押し寄せる中、デヴィッドは息子を守るために行動を起こす。
『ミスト』の監督・主要キャスト
・フランク・ダラボン(48)監督
・トーマス・ジェーン(38)デヴィッド・ドレイトン
・マーシャ・ゲイ・ハーデン(48)ミセス・カーモディ
・ローリー・ホールデン(38)アマンダ・ダンフリー
・アンドレ・ブラウアー(45)ブレント・ノートン
・トビー・ジョーンズ(41)オリー・ウィークス
・ウィリアム・サドラー(57)ジム
・ネイサン・ギャンブル(9)ビリー・ドレイトン
(年齢は映画公開当時のもの)
『ミスト』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 3.0 ★★★☆☆ |
・大切な人と観たい | 2.0 ★★☆☆☆ |
・ひとりでじっくり | 4.0 ★★★★☆ |
・未知への恐怖 | 5.0 ★★★★★ |
・鬱映画 | 4.0 ★★★★☆ |
ポジティブ評価
『ミスト』は、スティーヴン・キングが描く恐怖と極限の人間模様を映像化。フランク・ダラボン監督は濃霧に覆われた町の不気味さを強調し、未知の脅威に直面する人々の恐怖と絶望を描く。狭いスーパーという閉鎖空間の中で、外部のクリーチャーと内部の人間関係という二重の緊張感が巧みに組み合わされている。主演のトーマス・ジェーンは、息子を守る父親デヴィッドを説得力を持って演じた。
視聴者に衝撃を与える本作は、スティーヴン・キング自身も「原作以上のインパクト」と絶賛した。映画ならではの大胆な改変が成功した例といえる。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
ホラー映画ファンの中でも評価が最高と最低で分かれる作品。
ステーブン・キングが絶賛した改変部分を含め、ラヴクラフト系のホラー映画として最高評価を得る一方で、苦手とする視聴者も一定数存在する。
ホラー要素意外の部分では、「キリスト教を侮辱している」という視聴者や、「家族を守ろうとする主人公がスーパーで出会った別の女性に心を動かされいる」などの批判が海外レビューを中心に散見される。
こぼれ話
本作はスティーヴン・キングの短編小説を原作としているが、原作者のキング自身が映画化に非常に満足した作品の一つとして挙げており、特に衝撃的なラストについて「原作よりも素晴らしい」と絶賛している。この大胆なエンディングは、監督のフランク・ダラボンが構想した独自の改変であり、脚本執筆時から決まっていたという。
限られた製作費の中でリアリティを追求するため、撮影はルイジアナ州の実際のスーパーを改装して行われた。この閉鎖空間の設定は、俳優たちの緊張感を高め、現場での演技に影響を与えたとされている。撮影中、ダラボン監督はキャストに自然な演技を引き出すため、シーンの順番を可能な限り脚本通りに撮影するという手法を採用した。
ダラボン監督は当初、本作を白黒版で公開したいと考えていた。これはクラシックなホラー映画へのオマージュとしての試みだったが、劇場公開版では実現せず、後にホームメディアで特別版としてリリースされた。この白黒版は、独特の雰囲気が一層際立つと評価されている。
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