『パフューム ある人殺しの物語』(原題: Perfume: The Story of a Murderer)は、2006年公開のドイツ・フランス合作映画。パトリック・ジュースキントの世界的ベストセラー小説を原作に、トム・ティクヴァが監督を務めた。18世紀フランスを舞台に、究極の香りを追い求める青年が犯す猟奇的な犯罪と、その悲劇的な運命を描く。
物語の主人公であるジャン=バティスト・グルヌイユを演じるのは、イギリス出身の新人俳優ベン・ウィショー。彼に加え、アラン・リックマン、ダスティン・ホフマンといった名優が脇を固めている。
原作の持つ独特の不気味さと映像化の難しさが注目を集めたこの作品は、製作費約6,000万ユーロ(当時のレートで約95億円)の大規模プロジェクトとして製作された。結果的に、全世界興行収入は約1億3,500万ドル(約160億円)を記録し、ドイツ映画としては異例の成功を収めた。特に、視覚と嗅覚を結びつける映像表現や美術が高い評価を受けている。
『パフューム ある人殺しの物語』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
18世紀のフランス、パリ。悪臭漂う街角で生まれたジャン=バティスト・グルヌイユは、生まれつき驚異的な嗅覚を持っていた。孤児として厳しい環境で育った彼は、香りの魔力に取り憑かれ、究極の香りを作ることを夢見るようになる。成長したグルヌイユは、著名な調香師バルディーニのもとで香水作りを学び、その才能を発揮していく。
やがて、彼は人間の匂いに秘められた力に気づき、処女の体臭を利用して究極の香りを作り出すという狂気の計画を実行する。田舎町グラースで次々と若い女性を犠牲にし、その香りを集めるグルヌイユ。しかし、彼の行動が町に恐怖を広げ、やがて追跡の手が迫る。
最後に、彼が完成させた香りは人々を狂わせるほどの絶対的な力を持つが、その香りが彼自身に与える結末は予想を超えたものだった。愛と執着、孤独が交錯する物語は、人間の欲望と香りの不思議な力を描き出す。
『パフューム ある人殺しの物語』の監督・主要キャスト
・トム・ティクヴァ(41)監督
・ベン・ウィショー(26)ジャン=バティスト・グルヌイユ
・ダスティン・ホフマン(69)ジュゼッペ・バルディーニ
・アラン・リックマン(60)リシ
・レイチェル・ハード=ウッド(16)ローラ
・ジョン・ハート(66)ナレーター
(年齢は映画公開当時のもの)
『パフューム ある人殺しの物語』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 2.0 ★★☆☆☆ |
・大切な人と観たい | 3.0 ★★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 5.0 ★★★★★ |
・香りを視覚化 | 5.0 ★★★★★ |
・純粋?な狂気 | 4.0 ★★★★☆ |
視覚化された香りは必見
大きな評価ポイントとされるのが、その独特なビジュアル表現と原作小説の持つ難解なテーマを見事に映像化した点。トム・ティクヴァ監督は、「香り」という通常視覚化が困難な要素を、色彩やカメラワーク、そして音響効果を巧みに駆使して表現した。特に、主人公ジャン=バティスト・グルヌイユが香りに魅了される場面では、視聴者自身が香りを感じ取れるような錯覚を覚えるような演出が光る。
さらに、オーケストラとコーラスを多用したサウンドトラックが、物語の持つミステリアスで耽美的な雰囲気を一層引き立てる。
ベン・ウィショーの演技は、言葉数の少ない役柄でありながら、眼差しや仕草でグルヌイユの狂気と孤独を体現している。視覚的な演出と相まって、主人公の内面世界を強く印象づけた。さらにダスティン・ホフマンやアラン・リックマンといった名俳優たちが脇を固め、物語に重厚感を与えている。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
国内外のネガティブ評価を探すと、不安、不快、気持ち悪いなど。そもそもホラー映画とはそういうものだという指摘はさておき、主人公への共感や、彼が持つ”能力”のリアリティの部分で、確かにそれぞれツッコミ要素はある。感じ方はさまざまで、狂気に対して逆に共感するという人もいて、「観る人を選ぶ系」なのである。
こぼれ話
『パフューム ある人殺しの物語』には、映画制作にまつわる興味深いエピソードが数多く存在する。まず、この映画の原作となったパトリック・ジュースキントの小説『香水 ある人殺しの物語』は、世界的にベストセラーとなった一方で、その映像化は極めて困難とされていた。香りという感覚をどのように視覚化するかという課題に、トム・ティクヴァ監督は大胆な演出で挑み、10年以上の構想を経て映画化が実現した。
この映画の制作には莫大な費用が投入されており、100億円近くの予算は当時のヨーロッパ映画としては異例の規模だった。特に、18世紀フランスを再現するためのロケ地選定には徹底したこだわりが見られる。撮影はドイツ、スペイン、フランスなど複数の国で行われ、美術セットや衣装も当時の雰囲気を忠実に再現するために綿密にデザインされた。
無名の新人だったベン・ウィショーがこの重要な役に選ばれたのは、オーディションで見せた独特な雰囲気と存在感が監督の目に留まったためだという。ダスティン・ホフマンとアラン・リックマンといった大物俳優が、若手俳優を支える形で脇を固めた点も、映画に一層の深みを加えている。
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