ア・フュー・グッドメン(1992)の解説・評価・レビュー

A Few Good Men クライムサスペンス
クライムサスペンス

若きトム・クルーズによる熱い海軍法定ドラマ ---

1992年公開の『ア・フュー・グッドメン』(原題:A Few Good Men)は、ロブ・ライナー監督による法廷サスペンス映画である。主演はトム・クルーズ、ジャック・ニコルソン、デミ・ムーア。アーロン・ソーキンが自身の戯曲を基に脚本を手がけ、軍内部の腐敗と正義を巡る攻防を描く。

物語は、米海軍の基地で発生した兵士の死亡事件を巡り、若き弁護士が真実を追求する姿を描く。緊張感あふれる法廷劇と、俳優たちの迫真の演技が高く評価され、アカデミー賞では作品賞、助演男優賞(ジャック・ニコルソン)を含む4部門にノミネートされた。興行的にも成功し、全世界で2億4,300万ドル(当時のレートで約300億円)を超える収益を記録。ニコルソン演じるジェセップ大佐による「You can’t handle the truth!(貴様に真実は語れん!)」というセリフが映画史に記憶され、現在も多くの作品で引用されている。

『ア・フュー・グッドメン』のあらすじ紹介(ネタバレなし)


米海軍のキューバ・グアンタナモ基地で、一人の海兵隊員が死亡する事件が発生する。事件の容疑者として二人の下級兵士が起訴されるが、彼らは「命令に従っただけ」と主張。真相を明らかにするため、若き海軍弁護士ダニエル・キャフィー(トム・クルーズ)が弁護を担当することになる。

経験は浅いが弁論の腕に定評のあるキャフィーは、同僚のジョアン・ギャロウェイ(デミ・ムーア)やサム・ワインバーグ(ケヴィン・ポラック)と共に調査を進めるうち、事件の背景には軍内部の隠された慣習が関係している可能性が浮上する。しかし、軍上層部への追及は容易ではなく、キャフィーは法廷での激しい攻防に挑むことになる。彼は証人たちの証言を引き出し、圧力に屈せず真実を追求することができるのか――。

『ア・フュー・グッドメン』の監督・主要キャスト

  • ロブ・ライナー(45)監督
  • トム・クルーズ(30)ダニエル・キャフィ中尉
  • ジャック・ニコルソン(55)ネイサン・R・ジェセップ大佐
  • デミ・ムーア(30)ジョアン・ギャロウェイ少佐
  • ケヴィン・ベーコン(34)ジャック・ロス大尉
  • キーファー・サザーランド(25)ジョナサン・ケンドリック中尉
  • ケヴィン・ポラック(35)サム・ワインバーグ中尉
  • ジェームズ・マーシャル(25)ローデン・ダウニー一等兵

(年齢は映画公開当時のもの)

『ア・フュー・グッドメン』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 2.0 ★★☆☆☆
・大切な人と観たい 3.0 ★★★☆☆
・ひとりでじっくり 4.0 ★★★★☆
・豪華キャスト 5.0 ★★★★★
・法廷ドラマ 5.0 ★★★★★

ポジティブ評価

『ア・フュー・グッドメン』は、緊迫感あふれる法廷劇と一流キャストの演技が光る作品。トム・クルーズ演じる若き弁護士キャフィーの成長と奮闘が視聴者に感動を与える。彼が最初は軽い態度を取りながらも、次第に使命感を持ち真実を追い求める姿は見応えがあり、トム・クルーズの持ち味であるカリスマ性が存分に発揮されている。
最大の見どころは、ジャック・ニコルソン演じるジェセップ大佐との法廷での対決だろう。ニコルソンの迫力ある演技は圧巻で、限られた出演時間ながら強烈な印象を残す。法廷シーンの会話の応酬は、裁判劇でありながら専門用語に頼りすぎず視聴者に分かりやすい。

軍の規律と個人の正義がぶつかり合う本作は、権力や倫理についても考えさせられる作品である。スリリングな法廷ドラマを楽しみたい人にも、俳優たちの名演を堪能したい人にもおすすめの一本だ。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

低評価ということではないが、登場人物が多く、事件も様々な要素が投げ込まれるため、初見で字幕を追って理解するのにやや難解なプロット。手厚く背景を描いたため、結果としてリアリティ(と感じさせる展開)を生み出すことになり、繰り返し視聴するファンを獲得するほどの名作となった。
とくに派手なアクションがあるわけではないので、そこを期待するのは違う。トム・クルーズは安定のヒーロー。法廷ドラマにあまり慣れていない人にはやや疲れを感じるかもしれない。

こぼれ話

『ア・フュー・グッドメン』の名シーンの一つである法廷での対決は、実際には何度も撮り直しが行われた。ジャック・ニコルソンは「You can’t handle the truth!(貴様に真実は語れん!)」という名セリフを何度も完璧に演じ、トム・クルーズやデミ・ムーアのリアクションを撮るために、彼のカットが終わった後も同じ熱量でセリフを繰り返したという。その結果、ニコルソンは1シーンだけで数時間も全力演技を続けることになり、撮影後に「さすがに疲れた」とこぼしていたとか。
ジャック・ニコルソンは、実際の撮影日数はわずか10日間だった。それにもかかわらず、彼は約500万ドルという高額なギャラを受け取っており、「1日あたり50万ドルの男」と話題になった。とはいえ、その短期間で映画史に残る名演を披露したのだから、やはり大御所の貫禄は違うというべきだろう。

脚本を手がけたアーロン・ソーキンは、本作の原作となる戯曲を自身の姉の経験から着想を得て書いた。彼の姉は実際に海軍の弁護士として働いており、グアンタナモ基地での事件を扱ったことがあったという。このリアルな背景が、作品の法定での応酬につながっている。

当初、ダニエル・キャフィー役にはトム・クルーズではなく、ハリソン・フォードやジョン・トラボルタが候補に挙がっていたという。しかし、クルーズが脚本を読んで即座に興味を示し、最終的に彼が主演に決定。結果として、彼の若いエネルギーがキャフィーの成長物語をより印象的なものにした。

みんなのレビュー