『アメリカン・ギャングスター』(原題: American Gangster)は、2007年公開のアメリカ映画。リドリー・スコットが監督を務め、デンゼル・ワシントンとラッセル・クロウが主演を務めた実録犯罪ドラマである。物語は、1960~70年代のニューヨークを舞台に、麻薬密売でのし上がった実在のギャング、フランク・ルーカスと彼を追う正義感あふれる刑事リッチー・ロバーツの対決を描く。
全世界で興行収入2億6,600万ドル(当時のレートで約320億円)を超えるヒットを記録。アカデミー賞では助演女優賞(ルビー・ディー)を含む2部門でノミネートされた。
『アメリカン・ギャングスター』あらすじ紹介(ネタバレなし)
1970年代初頭、ニューヨーク市ハーレム。麻薬組織のボスの死後、その運転手だったフランク・ルーカスは、自らの才覚と冷徹さを武器に、組織の支配権を掌握する。フランクはベトナム戦争中の混乱を利用し、純度の高いヘロインをアジアから直接仕入れることで、安価かつ高品質な商品を供給し、競争相手を次々と駆逐。短期間でハーレムを中心に麻薬市場を支配し、巨万の富を築き上げる。
一方、正義感あふれる刑事リッチー・ロバーツは、腐敗した警察内部と戦いながら、フランクの存在に気づき、彼の麻薬密売ルートを追う。フランクの巧妙な手法とリッチーの執念深い捜査が交錯する中、2人の運命は大きな衝突を迎えることとなる。実在した人物をモデルに描かれたこの物語は、犯罪の裏に潜むアメリカ社会の闇と、正義の複雑さを浮き彫りにする。
『アメリカン・ギャングスター』の監督・主要キャスト
・リドリー・スコット(69)監督
・デンゼル・ワシントン(52)フランク・ルーカス
・ラッセル・クロウ(43)リッチー・ロバーツ
・キウェテル・イジョフォー(30)ヒューイ・ルーカス
・ジョシュ・ブローリン(39)トルーポ刑事
・リュディ・ディー(83)フランクの母エヴァ・ルーカス
・カーロ・グギノ(35)ロリ・ロバーツ
・キューバ・グッディング・Jr.(39)ニッキー・バーンズ
(年齢は映画公開当時のもの)
『アメリカン・ギャングスター』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 2.0 ★★☆☆☆ |
・大切な人と観たい | 3.0 ★★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 5.0 ★★★★★ |
・ギャングのリアル | 5.0 ★★★★★ |
・ゆらぐ正義 | 4.0 ★★★★☆ |
ポジティブ評価
『アメリカン・ギャングスター』は、実在の人物を描いた犯罪映画として、緻密な時代描写とキャスト陣の演技が高く評価された作品。デンゼル・ワシントンが演じるフランク・ルーカスは、冷徹さとカリスマ性を併せ持つキャラクターとして存在感を放ち、ラッセル・クロウが演じる刑事リッチー・ロバーツは、不器用ながらも誠実に正義を追求する姿を体現。主人公ふたりの対比がこの作品の魅力。
リドリー・スコット監督は、1970年代のニューヨークを忠実に再現し、犯罪の裏にある社会的背景を視覚的に浮き彫りにした。麻薬取引の冷酷な現実と、腐敗した警察や司法制度の闇を描きながらも、単純な善悪の対立に終始しない深みを持たせた脚本が物語を支えている。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
フランク・ルーカスが逝去したのが2019年。この映画の公開された2007年当時はまだ存命だった人物を描いた作品ということで、「犯罪を美化している」という批判を受けることにもなった作品。
こぼれ話
本作のフランク・ルーカスを演じたデンゼル・ワシントンは、役作りのために実際のフランク・ルーカスと面会し、彼の話し方や仕草、性格を研究。刑事リッチー・ロバーツを演じたラッセル・クロウも、モデルとなった実在の人物と話し、役柄にリアリティを持たせたという。フランク・ルーカスが制作に協力し、自らの体験や麻薬取引の手法を詳細に伝えたことで、物語にリアリティが加わったというエピソードも知られている。
本作の公開後、ルーカスとロバーツは予想外の友好的な関係を築き、一緒にインタビューに応じる場面もあった。犯罪者と刑事という相対する立場ながらも、互いの人間性を認め合う関係性は、映画のテーマにも通じる興味深い事実と言えるだろう。
みんなのレビュー