ビバリーヒルズ・コップ (1984)の解説・評価・レビュー

Beverly Hills Cop コメディ(全般)
コメディ(全般)ポリスアクション

笑いと銃声が交差する、80年代アクション・コメディの決定版 ---

1984年公開の『ビバリーヒルズ・コップ』は、マーティン・ブレストが監督し、エディ・マーフィが主演を務めたアクション・コメディ映画である。
本作はエディ・マーフィのスター性を決定づけ、1980年代を代表するエンターテインメント作品として高く評価された。製作総指揮を務めたドン・シンプソンとジェリー・ブラッカイマーは、当初シリアスなアクション映画として企画を進めていたが、エディ・マーフィの起用により、彼の即興演技と軽妙なユーモアを活かしたコメディ色の強い作品に方向転換。これが功を奏し、観客と批評家双方から好評を得ることとなった。

公開後、本作は全世界で約3億1,600万ドル(当時のレートで約770億円)の興行収入を記録し、1984年の北米年間興行収入で第1位に輝いた。特に、エディ・マーフィの独特なトークスタイルとアクションの融合は、後のアクション・コメディ映画に多大な影響を与えた。また、ハロルド・フォルターメイヤーが作曲した主題曲「Axel F」は、シンセサイザーの印象的なメロディで映画と共に世界的なヒットを記録。現在でも80年代の象徴的な楽曲として知られている。1985年のアカデミー賞では脚本賞にノミネートされ、ゴールデングローブ賞でも作品賞(コメディ・ミュージカル部門)と主演男優賞(エディ・マーフィ)にノミネートされた。
1987年に『ビバリーヒルズ・コップ2』、1994年に『ビバリーヒルズ・コップ3』が公開。さらに、2024年にはNetflixで第4作『ビバリーヒルズ・コップ: アクセル・フォーリー』が配信され、40年近く経った現在でも愛され続けるシリーズとなっている。

『ビバリーヒルズ・コップ』のあらすじ紹介(ネタバレなし)


デトロイト市警の刑事アクセル・フォーリー(エディ・マーフィ)は、型破りな捜査スタイルで上司を困らせながらも、抜群の洞察力と機転で事件を解決してきた。そんな彼のもとに、幼なじみのマイキー(ジェームズ・ルッソ)が久しぶりに訪れる。マイキーはビバリーヒルズで仕事をしていたが、何者かに襲撃され、アクセルの目の前で無惨にも射殺されてしまう。

親友の死に怒りを覚えたアクセルは、独自に捜査を開始。上司から止められるも意に介さず、単身ビバリーヒルズへ向かう。手がかりを追う中で、マイキーの元雇い主である高級画廊の経営者ヴィクター・メイトランド(スティーヴン・バーコフ)に辿り着くが、アクセルは不審な行動を見せたことでメイトランドの部下に乱暴に排除され、地元警察に目をつけられることになる。

ビバリーヒルズ警察は、アクセルの行動を監視するために真面目な刑事ビリー・ローズウッド(ジャッジ・ラインホルド)とベテラン刑事ジョン・タガート(ジョン・アシュトン)を張り付ける。しかし、アクセルは彼らを翻弄しながら独自の捜査を進め、メイトランドが単なる画廊経営者ではなく、裏で麻薬密売に関与していることを突き止める。

アクセルは、親友の仇を討つため、そしてビバリーヒルズの平和を守るため、ローズウッドとタガートを巻き込みながら、型破りかつ痛快な方法でメイトランドの陰謀に立ち向かう。エレガントな街並みに不釣り合いなアクセルの破天荒な捜査は、周囲を巻き込みながらも確実に真相へと近づいていく。
果たしてアクセルは、法と秩序に縛られたビバリーヒルズで、独自のやり方を貫き通しながら事件を解決できるのか——? スリルとユーモアが絶妙に絡み合った、爽快なアクション・コメディが幕を開ける。

『ビバリーヒルズ・コップ』の監督・主要キャスト

  • マーティン・ブレスト(33)監督
  • エディ・マーフィ(23)アクセル・フォーリー
  • ジャッジ・ラインホルド(27)ビリー・ローズウッド
  • ジョン・アシュトン(36)ジョン・タガート
  • リサ・アイルバッハー(28)ジェニー・サマーズ
  • スティーヴン・バーコフ(47)ヴィクター・メイトランド
  • ロンニー・コックス(46)アンドリュー・ボゴミル警部
  • ジェームズ・ルッソ(31)マイキー・タンデューノ

(年齢は映画公開当時のもの)

『ビバリーヒルズ・コップ』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 5.0 ★★★★★
・大切な人と観たい 3.0 ★★★☆☆
・ひとりでじっくり 2.0 ★★☆☆☆
・アクセルのマシンガントーク 5.0 ★★★★★
・テンポ抜群のアクションコメディ 5.0 ★★★★★

ポジティブ評価

『ビバリーヒルズ・コップ』は、エディ・マーフィの即興演技が光る、アクション・コメディの傑作。本作の最大の魅力は、マーフィ演じるアクセル・フォーリーの軽妙なトークと型破りな行動であり、彼の存在が映画全体を引き締めつつ、笑いとスリルを両立させている点にある。
アクセルは、デトロイトの下町育ちの刑事として、ビバリーヒルズの洗練された警察官たちを翻弄しながら、独自のやり方で事件を追う。彼の無鉄砲な行動と、それに振り回される真面目な刑事ビリー・ローズウッド(ジャッジ・ラインホルド)、堅物のタガート(ジョン・アシュトン)の「凸凹トリオ」は、映画のユーモアを支える重要な要素だ。

アクション面でも、ビバリーヒルズの華やかな街並みを舞台に、カーチェイスや銃撃戦が繰り広げられ、テンポ良く物語が進行する。特に、アクセルが何気なくトラブルに首を突っ込みつつも、持ち前の頭の回転と度胸で切り抜けていく様子は痛快そのものだ。

音楽も映画の成功を後押しした要素の一つである。ハロルド・フォルターメイヤー作曲の主題曲「Axel F」は、シンセサイザーを基調としたキャッチーなメロディが印象的で、映画のポップな雰囲気を象徴するものとなった。この曲は映画のヒットとともに世界中で愛され、日本のバラエティ番組でもたびたび挿入歌として使用されている。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

この作品に対するネガティブ評価を見つけるのは本当に難しい。強いて挙げるとすれば、本作があくまで「エディ・マーフィの魅力を最大限に活かすコメディ作品」であるため、彼の持ち味に馴染めない視聴者にとっては作品の魅力が伝わりにくい。リアルな刑事ドラマやシリアスな犯罪映画を求めるなら別の作品を選んだ方が期待に沿うかもしれない。

こぼれ話

『ビバリーヒルズ・コップ』は、エディ・マーフィの代表作として知られているが、実は彼が主演する予定ではなかったことは意外と知られていない。
当初、アクセル・フォーリー役にはシルベスター・スタローンがキャスティングされていた。しかも、スタローンは脚本にも手を加え、よりシリアスでアクション重視の内容に変更。しかし、制作費の問題やクリエイティブの方向性の違いからスタローンは降板し、代わりに当時『サタデー・ナイト・ライブ』で人気を博していたエディ・マーフィに白羽の矢が立った。
マーフィが主演に決まると、映画のトーンは大きく変更され、アクションよりもコメディを前面に押し出した作品へと生まれ変わった。マーフィは多くのセリフを即興でアドリブし、その軽妙なトークが作品の魅力を一気に引き上げた。
スタローン版が制作されていたら、今とはまったく異なる「シリアスでハードボイルドなビバリーヒルズ・コップ」が誕生していただろう。
ちなみに、スタローンは自身が変更した脚本を基に『コブラ』(1986年)を制作しており、こちらはまさに「もしスタローン版『ビバリーヒルズ・コップ』が作られていたら…」を体現した作品と言える。

撮影中、マーフィのアドリブは共演者を何度も笑わせ、NG連発となることも珍しくなかった。特に、ローズウッド役のジャッジ・ラインホルドとタガート役のジョン・アシュトンは、マーフィの即興演技に真面目な表情を保てず、何度も撮り直しを余儀なくされたという。
監督のマーティン・ブレストは「撮影を進めることが最大の挑戦だった」と振り返っており、撮影現場は常に笑いに包まれていたようだ。

映画を象徴する主題曲「Axel F」も、制作の舞台裏では偶然の産物だった。作曲を担当したハロルド・フォルターメイヤーは、監督から「アクセル・フォーリーのキャラクターを反映したシンプルでクールなテーマを」と依頼され、わずか3日間であの有名なシンセサイザーメロディを完成させた。
フォルターメイヤー自身も「こんなに世界中で愛される曲になるとは思わなかった」と語っており、映画と共に音楽も80年代を象徴する存在となった。
また、撮影は主にカリフォルニア州ロサンゼルスで行われ、劇中に登場する「ビバリーヒルズ警察署」は実際にはビバリーヒルズ市庁舎を使用して撮影された。さらに、アクセルが宿泊する高級ホテル「ビバリーヒルズ・ホテル」の外観も実在するホテルであり、映画のヒットにより観光名所として人気が高まった。

興行的な成功も目覚ましく、全世界で約3億1,600万ドル(当時のレートで770億円)を記録し、1984年の北米興行収入では『ゴーストバスターズ』を抑えて第1位に輝いた。この成功により、エディ・マーフィは「ハリウッドで最も稼ぐ俳優の一人」となり、彼のキャリアは一気に上昇。
以降、『ナッティ・プロフェッサー』や『シュレック』シリーズなど、数々のヒット作に出演するきっかけとなった。

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