DCコミック映画:神々と人間のあいだで揺れる、正義のかたち
DCコミック映画は、スーパーマンやバットマン、ワンダーウーマンをはじめとする象徴的なヒーローたちの活躍を描くジャンルである。原作となるDCコミックスは1930年代末に創刊され、アメリカン・コミックスの黄金期を牽引したレーベルの一つとして知られている。1941年に登場したワンダーウーマンを含め、社会不安や戦時体制の中で“正義”の理想像を可視化してきた歴史は長く、映画化の流れも1978年の『スーパーマン』から脈々と続いている。
ジャンルの基盤を築いたのは、ザック・スナイダー監督による『マン・オブ・スティール』である。神話的スケールで描かれるスーパーマン像は、現代における“異物としての英雄”の苦悩を鮮烈に提示した。また、ヒーロー集結の物語である『ジャスティス・リーグ』は、個々の能力や信念の違いを超えてひとつの目的に向かう姿を描き、ヒーローチーム映画の流れにDC的重厚感を加えた。そして『ジョーカー』は、ヴィランを主人公とする異色作としてジャンルの枠を超えた評価を受け、DC映画の多様性と作家性の可能性を示す存在となった。
近年のDC映画は、明確なユニバース構築と並行して、多様な世界観と語り口でヒーロー像を再定義する動きが活発化している。単なる勧善懲悪を超えた人間性や社会性の掘り下げが試みられており、従来のファン層に加えて、シリアスなドラマとしての評価も高まりを見せている。DCコミック映画は今、かつてない柔軟性と野心をもって、新たなフェーズへと突入している。