マーベル映画:ヒーローたちは、世界を超えて集結する
マーベル映画は、スパイダーマンやアイアンマン、キャプテン・アメリカといった個性豊かなヒーローたちが活躍する、現代アメリカのポップカルチャーをけん引するジャンルである。原点となるマーベル・コミックスは1939年、前身である「タイムリー・コミックス」から始まり、1960年代にスタン・リーとジャック・カービーらの手によって“等身大のヒーロー”を特徴とする数々のキャラクターが誕生した。現実の社会問題や個人の葛藤を描き込む手法は、それまでの勧善懲悪のヒーロー像を刷新し、次第に映画界にもその波が広がっていった。
ジャンルの爆発的な転機となったのが、2008年の『アイアンマン』である。ロバート・ダウニー・Jr.演じるトニー・スタークのカリスマ性と、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の幕開けを告げるエンディングは、以降の映画産業の構造をも変える影響を及ぼした。その後の『アベンジャーズ』では、複数のヒーロー映画をクロスオーバーさせる試みが成功し、ジャンルとしての「マーベル映画」の基盤を確立した。そして『ブラックパンサー』は、アフリカ文化をベースにした独自の世界観と社会的テーマを融合させ、ヒーロー映画の多様性と文化的意義を一段階押し広げた作品として高く評価された。
マーベル映画は今や、単なるアクションエンタメではなく、ユーモア、政治性、文化的背景を内包するジャンルへと進化している。フェーズごとの構成やシリーズ内での整合性、そして多様なキャラクター展開によって、映画シリーズとして前例のない拡張性を持つ。マルチバースを中心とした近年の展開は、ヒーロー映画の常識そのものを問い直す試みであり、マーベル映画は依然として最前線で変化を牽引し続けている。