ゾンビ映画:死者が歩き出すとき、世界は崩壊する
ゾンビ映画は、死者が甦り、生者を襲うというシンプルかつ根源的な恐怖を描くジャンルである。パンデミック、崩壊社会、生存戦略といったテーマを通じて、視聴者に極限状況での人間性を突きつける。
このジャンルの原点とも言えるのが、ジョージ・A・ロメロ監督による『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』だ。無名キャストとモノクロ映像ながら、ゾンビ映画の基本文法を確立し、同時に人種や暴力といった社会的問題を提示した。続いて、社会風刺を大胆に取り入れた『ゾンビ』では、ショッピングモールを舞台に消費社会への批評が展開される。そして21世紀に入り、ダニー・ボイル監督の『28日後…』が登場。俊敏な“感染者”という新たな脅威を導入し、ゾンビ映画をスリラーとして再構築した。
ゾンビ映画は、その都度の時代背景を色濃く反映しながら進化を遂げてきた。近年では、感染拡大やロックダウンといった現実とリンクするテーマも多く、単なる恐怖描写にとどまらず、社会性やドラマ性を強化した作品が注目を集めている。