アーティスト出演映画:音楽とスクリーンが交わる、一度きりの奇跡
実在の音楽アーティストが自ら出演し、演技・パフォーマンスを披露した映画作品の特集。ドキュメンタリー、コンサートフィルム、劇映画のいずれにおいても、アーティスト本人の存在が物語の核心を担う。
ジャンルの代表作としてまず挙げられるのが、1992年公開の『ボディガード』である。ホイットニー・ヒューストンが人気歌手役を演じ、自身の代表曲「I Will Always Love You」を劇中で披露しながら、ラブストーリーとサスペンスの要素を融合させた。その約10年後に登場した『8 Mile』では、エミネムがデトロイトのラッパー志望青年を熱演。自身の半生を色濃く反映した物語とともに、音楽と社会階層をめぐるリアルな葛藤が描かれた。さらに2009年の『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』は、ロンドン公演に向けたリハーサル映像を中心に構成され、未完に終わったステージへの執念とプロ意識を鮮烈に映し出した。最新作としては、2023年の『アメリカン・ユートピア』が挙げられる。トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンがブロードウェイ舞台を自らの手で映画化し、音楽、ダンス、メッセージを一体化させたライブ映画の新たな形を提示した。