ロック・大衆音楽映画:音が鳴るたび、魂が火を吹く
ロック・大衆音楽映画は、ロック、ポップス、R&Bなど広義の大衆音楽を題材に、アーティストの伝記、バンドの興亡、音楽と人生の交錯を描くジャンルである。舞台となるのはスタジオやライブ会場、時には時代そのもの。音楽が物語の主役であり、同時に登場人物の声でもある。
このジャンルの代表作としてまず挙げられるのが、『ボヘミアン・ラプソディ』である。伝説的バンド「クイーン」のボーカル、フレディ・マーキュリーの生涯を軸に、音楽と個のアイデンティティがどのように響き合うかを描き、多くの視聴者を熱狂させた。続いて『ロケットマン』では、エルトン・ジョンの破天荒で繊細な人生を、ファンタジー的演出とミュージカル形式で描き、音楽映画としての新しい語り口を提示した。そして『あの頃ペニー・レインと』は、1970年代ロック黄金期のツアー取材を通じて、音楽に魅了される若者の視点から業界と夢のはざまを見つめた作品として知られる。
ロック・大衆音楽映画は、単なる音楽再現ではなく、「音楽に人生を懸けた人々の物語」を映し出すジャンルである。懐かしさや熱狂だけでなく、名声、孤独、中毒、復活といった音楽産業の裏側にあるリアルが描かれることも多く、その生々しさこそが魅力とも言える。爆音と共に人生が走り出す――ロック・大衆音楽映画は、視聴者の感情を直撃する映像と音のドラマである。