ミュージカル映画:感情が音楽となり、物語が踊り出す
ミュージカル映画は、登場人物の心情や物語の展開を歌とダンスによって表現するジャンルである。音楽がセリフや演出の一部として組み込まれることで、現実を超えた表現力と高揚感を生み出す。
ジャンルの代表作としてまず挙げられるのが、1965年公開の『サウンド・オブ・ミュージック』である。第二次世界大戦前夜のオーストリアを舞台に、家庭教師と子どもたち、そして音楽によって結ばれていく家族の物語が描かれ、劇中歌と風景美が今なお広く愛され続けている。続いて、1961年の『ウエスト・サイド物語』は、ニューヨークの若者たちの対立と悲恋をモチーフに、社会問題をダイナミックな群舞と旋律で昇華した。そして、2016年の『ラ・ラ・ランド』では、夢を追う若者たちの葛藤と恋が現代のロサンゼルスを舞台に描かれ、ミュージカル映画の再評価を牽引した。
ミュージカル映画は、現実の制約を一時的に解き放ち、人間の感情をストレートに表現する手段として独自の地位を築いている。近年では、舞台作品の映像化やアニメーションとの融合、配信プラットフォーム向けの新作など、表現領域が広がりを見せており、ジャンルとしての存在感は再び高まりつつある。ミュージカルは今もなお、音楽と映像が響き合う“体験型の映画”として、多くの視聴者を魅了している。