実話映画(ビジネス題材):成功も失敗も、数字の向こうに人間がいる
実話映画(ビジネス題材)は、企業の誕生、商品開発、経済危機、法廷闘争、そして業界の裏側など、実際に起きたビジネス上の出来事を描くジャンルである。個人の野心や信念、倫理と利益の衝突など、人間ドラマとしての厚みが加わることで、ビジネスの世界が単なる金と戦略の話に留まらず、社会や文化の動きと密接に結びついた領域として立ち上がってくる。数字や市場では測れない、人間の意思決定のドラマがこのジャンルの核心である。
このジャンルの代表作としてまず挙げられるのが、2010年の『ソーシャル・ネットワーク』である。世界最大のSNS、Facebookの誕生とその背後にある友情と裏切りを、現実の訴訟劇を通じて描き、テクノロジー企業の成功神話に潜む人間の複雑さをあぶり出した。次に2015年の『マネー・ショート 華麗なる大逆転』では、リーマン・ショックの前夜に金融市場の崩壊を予見した少数の投資家たちの行動を描き、金融の仕組みと狂気が視覚的にスリリングに再現された。そして2023年の『AIR/エア』は、ナイキがマイケル・ジョーダンと契約し「エア ジョーダン」を誕生させるまでの交渉と戦略を通じて、ブランドと文化、個と企業の新しい関係を描いた。
実話映画(ビジネス題材)は、数字の向こうにある決断の重みと、その裏で揺れる人間模様に焦点を当てる。勝者と敗者、革新と妥協、理想と現実――そのすべてが企業ドラマとしてスクリーンに投影されるとき、ビジネスは最も現代的な物語装置となる。経済や商品に興味がなくとも、人間がどのようにして「動く」のかに興味があるなら、このジャンルは極めて刺激的な視点を提供してくれる。