『シカゴ』(原題:Chicago)は、2002年に公開されたロブ・マーシャル監督によるミュージカル映画で、1920年代のシカゴを舞台に、名声とスキャンダルを描いた作品である。原作は1975年初演の同名ブロードウェイミュージカルで、映画版ではレネー・ゼルウィガー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、リチャード・ギアが主要キャストを務めた。物語は、殺人で収監された若い女性ロキシー・ハートが、名声を得るために弁護士やメディアを利用して奔走する姿を描く。
映画は独創的なミュージカルシーンと洗練された映像美が評価され、第75回アカデミー賞で作品賞を含む6部門を受賞した。興行収入は世界で3億ドル(当時のレートで約380億円)を超える大ヒットを記録し、ミュージカル映画の復権を象徴する作品となった。また、セクシーかつ大胆なダンスや、ジャズを基調とした音楽が観客を魅了し、スタイリッシュな演出と社会風刺が際立つエンターテインメント作品として今なお高い評価を受けている。
『シカゴ』あらすじ紹介(ネタバレなし)
1920年代のシカゴ。平凡な主婦でありながらスターになる夢を抱くロキシー・ハート(レネー・ゼルウィガー)は、不倫相手を殺害した罪で逮捕される。彼女が収監された刑務所では、同じく殺人の罪で収監された元ヴォードヴィルスターのヴェルマ・ケリー(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)が名声を武器に注目を浴びていた。ロキシーもその注目を集めようと、有名弁護士ビリー・フリンを雇い、裁判を一大ショーとして演出する作戦を練る。
メディアを利用して人気を集めるロキシーに対し、ヴェルマは苛立ちを募らせるが、次第に2人の関係は変化していく。一方で、ロキシーの裁判は予測不能な展開を迎え、彼女の夢と名声への執着が彼女自身を大きく変えていく。権力、名声、そしてスキャンダルが渦巻く中、ロキシーとヴェルマは華麗なダンスと音楽でそれぞれの未来を掴もうと奮闘する。華やかなショービジネスの裏に潜む皮肉と虚栄心を描きながら物語はクライマックスへと進む。
『シカゴ』の監督・主要キャスト
- ロブ・マーシャル(42)監督
- レネー・ゼルウィガー(33)ロキシー・ハート
- キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(33)ヴェルマ・ケリー
- リチャード・ギア(53)ビリー・フリン
- クイーン・ラティファ(32)ママ・モートン
- ジョン・C・ライリー(37)エイモス・ハート
- クリスティーン・バランスキー(50)メアリー・サンシャイン
- ルーシー・リュー(34)キティ・バクスター
(年齢は映画公開当時のもの)
『シカゴ』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 5.0 ★★★★★ |
・大切な人と観たい | 3.0 ★★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 2.0 ★★☆☆☆ |
・ダンスシーンに注目 | 5.0 ★★★★★ |
・1920年代のジャズ文化 | 5.0 ★★★★★ |
ポジティブ評価
映画『シカゴ』は、1975年のブロードウェイミュージカルを基にした作品。ミュージカルナンバーと現実のシーンを巧みに交錯させる編集技術が印象的で、舞台的な演出を映画ならではのダイナミックな映像表現に昇華させている。ロブ・マーシャル監督は、各楽曲を登場人物の心理描写と連動させることで、単なる歌唱シーンではなく、物語の一部として成立させた。
キャサリン・ゼタ=ジョーンズとレニー・ゼルウィガーの競演は、キャラクターの対比を描く。特にゼタ=ジョーンズはダンサーとしての実力を存分に発揮し、これによりアカデミー助演女優賞を受賞した。リチャード・ギア演じる弁護士ビリー・フリンも、巧みな話術と軽妙な演技で作品にユーモアを加えている。
1920年代のジャズ文化を背景にした美術や衣装デザインも高く評価され、それぞれオスカーを手にしている。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
とにかく完成度も評判も良い『シカゴ』。この映画の唯一のツッコミどころは、公開時にも話題になったが、リチャード・ギアのキャスティングがどうかという点(主に歌唱について)。軒並み高評価な作品の中のご愛敬といったところだが、やり手弁護士の”ダサさ”と見ればむしろ狙った演出と解釈することもできる。キャサリン・ゼタ=ジョーンズのパフォーマンスはとにかく圧倒的。
こぼれ話
本作の基となったブロードウェイミュージカル『シカゴ』は、1975年に初演されたが、当初の評価はそれほど高くなかった。しかし、1996年のリバイバル版が大成功を収め、以降はブロードウェイのロングラン作品として人気を博している。このリバイバル版の演出を手がけたのが、映画版の監督ロブ・マーシャルであり、舞台での手法を映画の映像表現へと巧みに応用した。
キャサリン・ゼタ=ジョーンズは元々ダンスの経験が豊富で、「Cell Block Tango」のパフォーマンスでは一切の妥協を許さないプロ意識を見せた。一方、レニー・ゼルウィガーはダンスや歌唱が未経験だったため、数カ月に及ぶトレーニングを重ねて役を体現した。
本作のダンスシーンは極力編集でごまかさない方針が取られ、俳優たちの実際のパフォーマンスがそのまま映し出されている。リチャード・ギアも例外ではなく、タップダンスのシーンはすべて本人がこなしている。ギアは撮影前に約半年間のトレーニングを受け、本人曰く「キャリアの中で最も大変な準備だった」というほどの努力を重ねた。
映画の音楽制作では、ブロードウェイ版の楽曲を映画用に新たに編曲。アカデミー賞の授賞式ではキャストが実際に「All That Jazz」を披露し、観客を沸かせた。
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