カクテル (1988)の解説・評価・レビュー

Cocktail 青春・学校ドラマ
青春・学校ドラマ

トム・クルーズ主演!青春バーテンダー映画 ---

1988年公開の『カクテル』(原題:Cocktail)は、ロジャー・ドナルドソン監督 による青春ドラマ映画で、トム・クルーズ が主演を務めた。バーテンダーの世界を舞台に、成功を夢見る若者の成長と恋愛を描く作品であり、トム・クルーズのスター性を決定づけた一作として知られる。

物語は、野心的な青年 ブライアン・フラナガン(トム・クルーズ) が、成功を求めてニューヨークにやってくるところから始まる。ビジネスマンを目指していた彼は、学費を稼ぐためにバーで働き始め、カリスマ的なバーテンダー、ダグ(ブライアン・ブラウン) からカクテル作りの技術や人生哲学を学ぶ。やがて、二人は派手なパフォーマンスで人気バーテンダーとして名を馳せるが、ブライアンは自らの夢と現実のギャップに直面し、新たな人生の選択を迫られる。

本作は、トム・クルーズの魅力を前面に押し出した作品であり、彼のバーテンダーパフォーマンスが話題を呼んだ。劇中で使用された ザ・ビーチ・ボーイズの「Kokomo」 も大ヒットし、映画とともに80年代の象徴的な楽曲となった。興行的には成功を収めたものの、批評家からの評価は賛否が分かれた。しかし、トム・クルーズ主演のエンターテインメント作品として、多くの視聴者に愛され続けている。

『カクテル』のあらすじ紹介(ネタバレなし)


ニューヨークにやってきた青年 ブライアン・フラナガン(トム・クルーズ) は、大成功を夢見る野心家。ビジネスの世界での成功を目指していたが、学費を稼ぐためにバーでアルバイトを始める。そこで出会ったのが、経験豊富なバーテンダー ダグ・コグリン(ブライアン・ブラウン) だった。ダグはブライアンにカクテル作りの技術だけでなく、「人生をどう渡り歩くか」という哲学を教え、二人は パフォーマンスバーテンディング で一躍人気者となる。

しかし、やがてブライアンはダグとの間に対立を抱え、独り立ちを決意。新たなチャンスを求めてカリブ海のリゾート地へと渡る。そこで彼は 美しいアーティスト、ジョーダン・ムーニー(エリザベス・シュー) と出会い、恋に落ちる。しかし、成功への欲望を捨てきれないブライアンは、ジョーダンとの間に亀裂が生まれる。
自分の生き方を見つめ直しながら、成功か愛か、ブライアンはどちらを選ぶのか——。

『カクテル』の監督・主要キャスト

  • ロジャー・ドナルドソン(42)監督
  • トム・クルーズ(26) ブライアン・フラナガン
  • ブライアン・ブラウン(41) ダグ・コグリン
  • エリザベス・シュー(25) ジョーダン・ムーニー
  • リサ・バネス(32) ボニー
  • ローレンス・ラッキンビル(54) リチャード・ムーニー
  • ケリー・リンチ(29) ケリー

(年齢は映画公開当時のもの)

『カクテル』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 3.0 ★★★☆☆
・大切な人と観たい 4.0 ★★★★☆
・ひとりでじっくり 4.0 ★★★★☆
・瑞々しい青春 5.0 ★★★★★
・成功と挫折 5.0 ★★★★★

ポジティブ評価

『カクテル』は、トム・クルーズの魅力を存分に楽しめる青春ドラマ であり、彼のスター性が最大限に発揮された作品の一つである。本作の最大の見どころは、ブライアン・フラナガンが繰り広げる華麗なバーテンダーパフォーマンス にある。ボトルを自在に操るフレアバーテンディングは、単なる演出ではなく、トム・クルーズ自身が猛特訓して習得した技術であり、これによりキャラクターの説得力が増している。

また、80年代らしいエネルギッシュな映像と音楽 も、本作の魅力を引き立てている。特に、ザ・ビーチ・ボーイズの「Kokomo」 は、本作とともに大ヒットし、映画のカリブ海のシーンと完璧にマッチした爽やかな雰囲気を演出している。バーのシーンでは、活気あふれる当時のニューヨークのナイトライフがスタイリッシュに描かれており、視聴者を非日常的な世界へと引き込む。

物語のテーマも、単なるバーテンダーの青春物語にとどまらず、「夢と現実」「野心と人間関係」といった若者が持つ普遍的なテーマを扱う。主人公ブライアンが、成功への欲望と愛の狭間で葛藤しながら成長していく過程は、単なるサクセスストーリーではなく、自己のアイデンティティを探るドラマとしての側面も持っている。

さらに、ブライアン・ブラウン演じるダグとの師弟関係も見どころ。彼の皮肉交じりのアドバイスや人生哲学はブライアンに影響を与えつつも、彼自身の運命をも左右していく。いやらしい中年成功者を華麗に演じ切った。二人の関係性が、ただの師弟ではなく、競争を含んだ複雑なものとして描かれている点も物語に奥行きを持たせる。

『カクテル』は、80年代のポップカルチャーを象徴する作品のひとつ であり、トム・クルーズの魅力を存分に楽しめるエンターテインメント作品。バーテンダーという職業の魅力を世に伝え、若者の夢や挫折、成長を爽やかに描いた。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

興行的なヒットに反発する形で、批評家から「トム・クルーズのアイドル映画」と揶揄されたこの映画は、ゴールドラズベリー賞(ラジー賞=アカデミー賞前夜に最低な作品を選定する賞)において最低映画賞、最低脚本賞の2部門を受賞してしまう。登場人物の内面や動機の掘り下げが不充分で下品という評価。

公開から40年を迎えようとする今筆者が感じることとしては、大した理由なく何かを目指し、周囲を振り回し、衝動的に人を裏切る若い登場人物たちの姿は現実の世界で度々目にする光景であるし、ある意味リアルなのでは?とも思える。青春の一幕という感想である。
トム・クルーズの瑞々しさと青春を見て、甘酸っぱい気持ちになれるかどうかで評価が分かれそうな作品。80年代を記憶している読者の方はノスタルジーに浸れるのではなかろうか。

こぼれ話

『カクテル』はトム・クルーズの人気をさらに高めた作品だが、もともと本作は、よりシリアスなドラマとして企画されていた。原作小説では、バーテンダー業界の光と影をリアルに描き、主人公の人生がより過酷な道をたどる内容だった。しかし、映画化の際にトム・クルーズ主演ということもあり、エンターテインメント性を重視した作風に変更された。そのため、原作の持つ重厚なドラマ性を期待していた一部のファンや批評家からは「軽すぎる」という意見も出た。ラジー賞に繋がる所以。

トム・クルーズは本作のために 本物のバーテンダーから猛特訓を受け、フレアバーテンディング(ボトルを操る技術)を習得した。劇中で披露される華麗なパフォーマンスは、スタントではなく彼自身が行っているものであり、撮影中に何度もボトルを割りながらも練習を続けたという。クルーズの努力の結果、本作はバーテンダー業界にも影響を与え、以降、フレアバーテンディングを取り入れるバーが増えるきっかけとなった。

劇中で流れる ザ・ビーチ・ボーイズの「Kokomo」 は、本作の公開と同時に大ヒットし、ビルボードチャートで1位を獲得した。ビーチ・ボーイズにとっては、なんと22年ぶりの全米No.1ヒットとなり、映画以上にこの曲を記憶している人も多いかもしれない。ちなみに、クルーズが演じるブライアンがカリブ海のバーで働くシーンは、美しいロケーションが印象的だが、実際にはジャマイカで撮影され、観光地としての注目度も上がった。

『カクテル』は、ストーリーの評価は分かれるものの、トム・クルーズの若き日のエネルギッシュな演技と華やかなバーテンダーパフォーマンスは、今見ても十分に楽しめる見どころとなっている。

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