コープスブライド(2005)の解説・評価・レビュー

コープスブライド ゴシックホラー
ゴシックホラーコメディ(全般)ラブコメディ

2005年公開の『コープスブライド』(原題:Corpse Bride)は、ティム・バートンとマイク・ジョンソンが共同監督を務めたストップモーションアニメーション映画である。19世紀のヨーロッパを舞台に、生者と死者の世界を結ぶ幻想的な物語が描かれる。声の出演にはジョニー・デップやヘレナ・ボナム=カーターなど、ティム・バートン作品ではおなじみの俳優が揃っている。
物語は、内気な青年ヴィクター(ジョニー・デップ)が、不慣れな結婚式のリハーサル中に起こした偶然の出来事で、美しい亡霊の花嫁エミリー(ヘレナ・ボナム=カーター)と誓いを交わしてしまうところから始まる。死者の世界に連れ去られたヴィクターは、生者の世界に戻り婚約者ビクトリア(エミリー・ワトソン)の元へ帰る方法を模索する中で、死者たちとの交流を通じて成長していく。

本作は、バートン特有のゴシック調の美術と、ユーモアを交えた独特の世界観が高く評価された。ダニー・エルフマンが手がけた音楽も重要な役割を果たし、物語に躍動感と感情を加えている。興行収入は全世界で1億1,800万ドル(当時のレートで約140億円)を超え、アカデミー賞長編アニメ映画部門にノミネートされるなど、批評家と視聴者の双方から高い評価を得た。『コープスブライド』は、死と愛というテーマを軽快かつ感動的に描いた、ティム・バートンならではの珠玉の作品である。

『コープスブライド』のあらすじ紹介(ネタバレなし)

19世紀のヨーロッパの小さな村。貧しい魚屋の息子ヴィクター(ジョニー・デップ)は、名門の家柄の娘ビクトリア(エミリー・ワトソン)との政略結婚を控えていた。不器用で内気なヴィクターは、結婚式のリハーサルで誓いの言葉をうまく言えず失敗し、気持ちを落ち着かせるために森へ向かう。そこで、誓いの練習をしていた彼は偶然、地面から突き出た枝に結婚の誓いをしてしまう。
しかし、その枝は実はエミリー(ヘレナ・ボナム=カーター)という若い女性の亡骸の指であり、彼女は自分が花嫁だと信じ、ヴィクターを死者の世界へと連れ去る。かつて結婚を夢見ていたエミリーは、自分を裏切り殺害した元婚約者に復讐を誓いながらも、死後の世界で孤独に過ごしていた。突然現れたヴィクターとの「結婚」に喜び、彼とともに新たな生活を始めようとする。

一方、生者の世界では、ヴィクトリアがヴィクターの帰りを待ち続けていたが、家族の反対により別の男との結婚を強制されそうになる。ヴィクターは生者の世界に戻る方法を探しながら、エミリーの過去を知り、彼女の想いと向き合うことになる。そして、生者と死者、二つの世界が交差する中で、ヴィクターは愛とは何かを深く考え、真実の選択を迫られる。

ゴシックな死者の世界と現世を行き来する冒険を通して、ヴィクターは愛と犠牲の意味を学び、心を成長させていく。果たして彼は、エミリーとヴィクトリア、それぞれの愛にどのような答えを出すのか。

『コープスブライド』の監督・主要キャスト

  • ティム・バートン(47歳)監督
  • マイク・ジョンソン(年齢不詳)共同監督
  • ジョニー・デップ(42歳)ヴィクター・バン・ドート役
  • ヘレナ・ボナム=カーター(39歳)エミリー(コープスブライド)役
  • エミリー・ワトソン(38歳)ビクトリア・エヴァーグロット役
  • アルバート・フィニー(69歳)フィニス・エヴァーグロット卿役
  • ジョアンナ・ラムレイ(59歳)モードライン・エヴァーグロット夫人役
  • リチャード・E・グラント(48歳)バーキス・ビターンズ役
  • クリストファー・リー(83歳)牧師グルート役

(年齢は映画公開当時のもの)

『コープスブライド』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 5.0 ★★★★★
・大切な人と観たい 4.0 ★★★★☆
・ひとりでじっくり 2.0 ★★☆☆☆
・声優ジョニー・デップ」 5.0 ★★★★★
・繊細な物語 4.0 ★★★★☆

感情豊かなストップモーションアニメ

『コープスブライド』は、ティム・バートンらしいゴシックな美学と繊細な感情表現が融合した珠玉のストップモーションアニメーションとして高い評価を受けている暗く冷たい色調の生者の世界と、明るく活気に満ちた死者の世界という対比が、物語のテーマを象徴的に描き出している。

ストップモーションアニメの技術は細部まで緻密に作り込まれ、不器用ながらも優しいヴィクターキャラクター、儚くも情熱的なエミリーらの、微妙な表情や動きが命を吹き込まれているように感じられる。
※用語:ストップモーションアニメとは、静止した物体を少しずつ動かしてコマ撮り撮影し、アニメーションとして見せる技法

死者の世界が明るくユーモアにあふれていることで、重くなりがちなテーマが軽快に描かれ、幅広い年齢層の観客が楽しめる作品だ。

本作は、ストップモーションアニメの特性上、制作に膨大な時間と労力を要するため、全体の上映時間が短く抑えられている(約77分)。

こぼれ話

『コープスブライド』の制作には、ティム・バートンならではの独特なクリエイティビティと数々のこだわりが込められている。まず、ストップモーションアニメーションとしての完成度の高さは、驚異的な技術と手間の賜物である。本作の人形は、1体あたり約40cmの大きさで作られており、特にヴィクターやエミリーといった主要キャラクターには複雑な内部構造が備えられていた。顔の表情を変えるために、小さな歯車や機械を内蔵するという革新的な技術が採用されており、これがキャラクターのリアルな感情表現に繋がった。

ティム・バートンは本作のアイデアを10年以上温めており、物語のベースには東ヨーロッパの古い民話が使われている。死者の花嫁という題材は、バートンが愛するゴシックホラーやダークファンタジーの世界観と絶妙に調和しており、彼の映画スタイルを象徴する作品となっている。
主演のジョニー・デップは、ティム・バートン作品への出演が本作で5作目となり、監督との強い信頼関係が再確認された。

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