永遠に美しく…(1992)の解説・評価・レビュー

Death Becomes Her ブラックコメディ
ブラックコメディ

名女優による、中年の悲哀を描いた傑作コメディ! ーーー

1992年公開の『永遠に美しく…』(原題:Death Becomes Her)は、ロバート・ゼメキス監督によるブラック・コメディ映画である。主演はメリル・ストリープ、ゴールディ・ホーン、ブルース・ウィリス。老いと美への執着をテーマに不老不死の薬を巡る奇想天外な物語が展開される。脚本はマーティン・ドノヴァンとデヴィッド・コープが手がけた。

本作は、特殊効果を駆使したユーモラスな映像表現が大きな話題となり、アカデミー賞視覚効果賞を受賞。特に、キャラクターの体がねじれたり穴が開いたりするCG表現は、当時としては画期的な技術だった。ブラックユーモアあふれるストーリーと、豪華キャストの熱演が融合し、風刺の効いたコメディ映画として今なお人気の作品。興行収入は全世界で約1億4,900万ドル(当時のレートで約186億円)を記録し、ゼメキス監督の異色作として記憶されている。

『永遠に美しく…』のあらすじ紹介(ネタバレなし)


売れない作家のヘレン(ゴールディ・ホーン)は、婚約者の外科医アーネスト(ブルース・ウィリス)を親友で人気女優のマデリーン(メリル・ストリープ)に奪われ、絶望のあまり引きこもってしまう。しかし、数年後、驚くべき美貌を手に入れたヘレンがアーネストとマデリーンの前に現れる。

一方、加齢による衰えに悩むマデリーンは、謎めいた女性リスル(イザベラ・ロッセリーニ)から「永遠の美」を約束する秘薬を手に入れる。しかし、この薬には想像を超える副作用があり、やがて彼女の身体に異変が起こり始める。さらに、同じく秘薬を手に入れたヘレンとの因縁が再燃し、不老不死となった二人は壮絶な対決を繰り広げる。巻き込まれたアーネストは、彼女たちの異常な執着に翻弄されながらも、自らの人生の選択を迫られることになる。

『永遠に美しく…』の監督・主要キャスト

  • ロバート・ゼメキス(40)監督
  • メリル・ストリープ(43)マデリーン・アシュトン
  • ゴールディ・ホーン(46)ヘレン・シャープ
  • ブルース・ウィリス(37)アーネスト・メンヴィル
  • イザベラ・ロッセリーニ(40)リスル・フォン・ローマン
  • イアン・オギルビー(49)シャガール
  • アダム・ストーク(30)ダコタ
  • ナンシー・フィッシュ(55)ローズ

(年齢は映画公開当時のもの)

『永遠に美しく…』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 5.0 ★★★★★
・大切な人と観たい 3.0 ★★★☆☆
・ひとりでじっくり 2.0 ★★☆☆☆
・美女優たちの熾烈な争い 5.0 ★★★★★
・ブルース・ウィリスの意外な演技 4.0 ★★★★☆

ポジティブ評価

『永遠に美しく…』は、ブラックユーモアが効いたコメディ・ファンタジー作品として高く評価されている。美と若さへの執着を風刺しながら、テンポよく物語が展開する。登場人物たちの掛け合いも絶妙で、特にマデリーン(メリル・ストリープ)とヘレン(ゴールディ・ホーン)の火花を散らす関係は、コメディ映画としての見どころの一つだ。
ライバル同士のやりとりは、コメディ要素とシリアスな演技が絶妙に絡み合い、ブルース・ウィリスが演じる冴えない外科医アーネストの困惑ぶりがそれに拍車をかける。この三角関係が、物語をコミカルかつスリリングに進める原動力となっている。

本作は、視覚効果の面でも革新的だった。CG技術がまだ発展途上だった1992年において、不老不死となったキャラクターたちの奇妙な肉体変化をリアルに描き出し、アカデミー賞視覚効果賞を受賞。首がねじれたり、穴が開いたりと、ブラックジョーク満載のビジュアルはインパクト抜群で、当時の視聴者を驚かせた。現代の視点で見ても、このユニークな特殊効果は本作ならではの魅力となっている。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

メリル・ストリープの怪演技が光るこの作品、ブラックコメディが過ぎるとホラーに見えてくる。
物語のテンポが前後半で大きく異なり、前半は人物の関係性や状況をテンポよく描く一方で、後半はブラックコメディの要素が強まり、最終どこへ向かうのか分からない展開に。ラストの方向性についても賛否が分かれやすく、「オチがあっさりしすぎでは?」と感じる人もいるかもしれない。もう少しドラマ性が強ければ、より広い層に受け入れられたかもしれない。

こぼれ話

『永遠に美しく…』の撮影では、メリル・ストリープとゴールディ・ホーンの対立シーンが多いが、実際の二人は長年の友人関係にあり、撮影現場では和気あいあいとしていたという。もっとも、メリル・ストリープは撮影後、「特殊効果が多すぎて、まるでブルース・ウィリスとCGキャラクターを相手に演技している気分だった」と冗談交じりに語っている。特殊効果の多用により、俳優たちは「見えないものに向かって演技する」機会が多く、ゼメキス監督の細かい指示に従いながら演技をしていたらしい。

本作のブルース・ウィリスは、普段のアクションスターのイメージとは異なり、気弱で振り回される外科医アーネストを演じている。しかし、実はこの役はもともとハリソン・フォードやアル・パチーノ、ダスティン・ホフマンにオファーされていたという。しかし、最終的にキャスティングされた彼が予想以上にコミカルな演技を披露し、結果的に作品のユーモアを引き立てることになった。

本作には当初、別のエンディングが存在していた。オリジナル版では、アーネストが不老不死の薬を飲んでしまい、その後の人生が描かれる展開だった。しかし、テスト試写で観客の反応が悪かったため、現在のエンディングに差し替えられたという。ゼメキス監督らしい風刺の効いた結末は、結果的に作品のブラックユーモアをより強調するものとなった。

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