海洋パニックアクション・エンターテイメント ---
1999年公開の『ディープ・ブルー』(原題:Deep Blue Sea)は、レニー・ハーリン監督による海洋パニック映画で、遺伝子操作によって高い知能を持つようになったサメが引き起こす恐怖を描くスリラー作品である。海上研究施設「アクアティカ」を舞台に、科学者たちがアルツハイマー病の治療薬開発のために遺伝子操作を施したサメと対峙する姿が描かれる。サミュエル・L・ジャクソン、トーマス・ジェーン、サフロン・バロウズらが出演し、迫力あるサメの描写と緊張感あふれる展開が特徴的だ。
物語は、アルツハイマー病治療のために巨大なマコサメの脳を遺伝子操作で拡大し、知能を高めたことで始まる。だがその結果、サメたちは予測不能な攻撃性を持つようになり、研究施設を壊滅させようと暴れ出す。閉鎖空間の中で生き残りをかけた戦いが繰り広げられる中、科学者たちは己の過ちと向き合いながら、命がけでサメに立ち向かう。
本作は、緻密に設計された水中アクションや、CGと実物の特殊効果を組み合わせたリアルなサメの描写が高く評価された一方で、その大胆な設定やスリラー要素が話題を呼び、公開当時大きな注目を集めた。興行収入は全世界で約1億6,500万ドル(当時のレートで約200億円)を記録し、海洋パニック映画の中でも特異な存在として映画ファンに愛され続けている。
『ディープ・ブルー』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
海上に浮かぶ研究施設「アクアティカ」。そこでは、アルツハイマー病治療のために、巨大なマコサメの脳を遺伝子操作で拡大し、治療薬を抽出する研究が進められていた。研究チームを率いるのは冷静な科学者スーザン(サフロン・バロウズ)と、施設の責任者ラッセル(サミュエル・L・ジャクソン)。しかし、知能を高められたサメたちは次第に研究者たちの制御を超え、攻撃性をむき出しにしていく。
嵐の夜、実験中の事故をきっかけにサメたちが暴れ始め、研究施設の一部が破壊される。施設は水没の危機に陥り、科学者や作業員たちは閉鎖された空間の中で、次々とサメの餌食になっていく。生き残ったメンバーは、サメの知能を過小評価していた自らの過ちに気づき、命がけで生き延びようと協力する。しかし、サメたちはその驚異的な知能を駆使して人間を巧妙に追い詰めていく。
『ディープ・ブルー』の監督・主要キャスト
- レニー・ハーリン(40)監督
- サフロン・バロウズ(27)スーザン・マカルスター博士
- トーマス・ジェーン(30)カーター・ブレイク
- サミュエル・L・ジャクソン(50)ラッセル・フランクリン
- LL・クール・J(31)シャーマン・“プリーチャー”・ダドリー
- ジャクリーン・マッケンジー(32)ジャニス・ヒギンズ
- マイケル・ラパポート(29)トム・スコッグス
- ステラン・スカルスガルド(47)ジム・ホイットロック
(年齢は映画公開当時のもの)
『ディープ・ブルー』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 5.0 ★★★★★ |
・大切な人と観たい | 3.0 ★★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 2.0 ★★☆☆☆ |
・テンポが速い”ジョーズ” | 5.0 ★★★★★ |
・サメ怖い | 4.0 ★★★★☆ |
ポジティブ評価
『ディープ・ブルー』は、迫力あるアクションが魅力の海洋パニック映画。サメを題材とした映画が数多ある中、とくに評価が高いのがクラシックの名作『ジョーズ』と、このディープ・ブルーである。
「知能を持つサメ」という設定が異色の緊張感をもたらす。水中でのアクションシーンは緻密に作られており、研究施設という閉鎖空間の恐怖を表現。CGと実物の特殊効果を巧みに組み合わせたサメの描写は1999年当時の技術としては驚くべきクオリティで、知能を持つサメの恐ろしさを感じさせる。
サフロン・バロウズ、トーマス・ジェーン、サミュエル・L・ジャクソンといった俳優陣の確かな演技も作品の魅力。特にサミュエル・L・ジャクソンのスピーチシーンは、予想外の展開と相まって映画全体の中でも強烈な印象を残す名場面だ。
『ディープ・ブルー』は、典型的なパニック映画のフォーマットに独自のアイデアを加えた作品であり、エンターテインメント性の高さと視覚的な迫力で多くの視聴者を魅了した。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
『ディープ・ブルー』は、予測可能なストーリー展開と娯楽性の高さから、「よく出来たB級映画」のような雰囲気を持つ。それが大ヒットしたため、海外レビューサイトを見渡すと、物語の深みを期待する視聴者からはネガティブなコメントもちらほら。技術的な制約がある時代の作品であるから、CGの粗さも所々目立つ。
本作の監督は、『ダイ・ハード2』『クリフハンガー』などを手掛けたレニー・ハーリン。大衆娯楽を手掛ける巨匠のような存在で、公開から25年が過ぎた今でも、悪意が無いエンターテイメントとして日曜日の午後にお勧めの一作だ。
こぼれ話
本作で特に印象的な巨大マコサメの描写は、CGと実物の特殊効果を組み合わせて撮影された。巨大なサメの模型は非常にリアルに作られており、水中での動きもサメの生態が忠実に再現されている。海洋生物学者の協力を仰ぎ、サメの動きを研究しながらデザインを仕上げたという。
また、キャストの中でも特に注目を集めたLL・クール・J(プリ―チャー役)は、実際のヒップホップMC。彼のキャラクターが歌う楽曲「Deepest Bluest(Shark’s Fin)」は、映画の主題歌としても話題となり、彼の音楽キャリアにおいても特別な位置を占めている。
サミュエル・L・ジャクソンが演じたラッセルの役どころは、本作でも特に印象的なキャラクターの一人であり、劇中のスピーチシーンは観客に強烈な衝撃を与えた。しかし、このシーンでの彼の「予想外の結末」は、制作側が意図的に観客の期待を裏切るために仕込んだ演出であり、映画の中でも最も話題を呼ぶ瞬間となった。
さらに、映画の舞台である研究施設「アクアティカ」の撮影は、主に巨大なプールセットを使用して行われた。スタッフたちは水中シーンのリアリティを高めるために、俳優たちに水中での演技訓練を施し、全体的な完成度を高めたという。特にトーマス・ジェーンは、水中でのアクションシーンをほとんどスタントなしで演じ切り、その身体能力とプロ意識が高く評価された。
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