エルヴィス(2022)の解説・評価・レビュー

エルヴィス ヒューマンドラマ
ヒューマンドラマロック・大衆音楽伝記映画

ロック創始者の伝記映画 ---

『エルヴィス(Elvis)』は、2022年に公開された伝記映画で、ロックンロールの王様と称されるエルヴィス・プレスリーの半生を描く。監督はバズ・ラーマン、主演はオースティン・バトラーが務め、プレスリーの生涯を鮮烈に表現した。物語はエルヴィスと彼のマネージャーであるトム・パーカー大佐の複雑な関係性を軸に、音楽界での成功や個人的な苦悩を描き出す。トム・ハンクスがパーカー大佐役で出演し、独特の存在感を放った。本作は第95回アカデミー賞で8部門にノミネートされ、主演男優賞を含む多くの賞レースで注目を集めた。興行的にも成功を収め、世界中のエルヴィス・ファンや新たな世代に彼の音楽の魅力を再認識させた。撮影はオーストラリアで行われ、エルヴィスの名曲を現代的にアレンジしたサウンドトラックも話題となった。

『エルヴィス』のあらすじ


エルヴィス・プレスリーの生涯を、彼のマネージャーであるトム・パーカー大佐の視点から描いた本作は、音楽の革新と名声の代償を鮮やかに映し出す。

1950年代、無名の青年だったエルヴィスは、黒人音楽に影響を受けた斬新なスタイルと情熱的なパフォーマンスで一躍スターダムにのし上がる。トム・パーカーとの出会いは彼に飛躍のチャンスを与え、プレスリーは「ロックンロールの王様」として世界的なアイコンとなる。しかし、その裏側では、家族との関係やプライベートの混乱、社会の反発、そして絶え間ない名声へのプレッシャーが彼の人生を蝕んでいく。さらに、成功の影に隠れたトム・パーカーとの複雑な関係が、彼のキャリアと精神的自由に大きな影響を与えることになる。
栄光、苦悩、愛、そして失意の果てに、エルヴィスが残した永遠の音楽とその魂の物語が観る者の胸を打つ。

『エルヴィス』の監督・主要キャスト

  • バズ・ラーマン(60)監督
  • オースティン・バトラー(31)エルヴィス・プレスリー
  • トム・ハンクス(66)トム・パーカー大佐
  • オリヴィア・デヨング(24)プリシラ・プレスリー
  • ヘレン・トムソン(65)グラディス・プレスリー
  • リチャード・ロクスバーグ(60)ヴァーノン・プレスリー
  • アルトン・メイソン(24)リトル・リチャード
  • ケルヴィン・ハリソン・ジュニア(28)B.B.キング

(役者の年齢は公開時点のもの)

『エルヴィス』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 3.0 ★★★☆☆
・大切な人と観たい 3.0 ★★★☆☆
・ひとりでじっくり 4.0 ★★★★☆
・ロックの迫力 5.0 ★★★★★
・エルヴィス本人!? 5.0 ★★★★★

エルヴィス時代を華やかに再現

『エルヴィス』は、キング・オブ・ロックンロールと称されるエルヴィス・プレスリーの生涯を鮮やかに描き、観客に強烈な印象を与える作品である。バズ・ラーマン監督ならではの華やかでエネルギッシュな演出は、エルヴィスの時代を象徴する音楽や文化のダイナミズムを忠実に再現することに成功している。映画全体を貫くリズミカルな編集と、色彩豊かな映像美は、彼の生きた1950年代から1970年代にかけての社会的変化や音楽シーンをリアルに蘇らせる。
特に、オースティン・バトラーの熱演が光る。彼は、エルヴィスの歌声や独特の動きを見事に再現しつつ、内面の葛藤や孤独を体現し、単なる音楽伝記映画に留まらない奥深さを生み出している。

音楽面でも、現代アーティストによるリミックスやアレンジが加えられ、視聴者に新鮮な驚きを与えた。これにより、往年のファンだけでなく若い世代にも彼の魅力を再発見させる仕上がりとなっている。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

否定派の意見は、概ね「容姿がプレスリーに似てない」に集約される。しかしながら、この映画はそっくりさん選手権ではない。その奥にあるイズムを感じる芸術として、所作、雰囲気が完璧だという意見もまた多い。

こぼれ話

本作でオースティン・バトラーが見せた演技力は、撮影前からの徹底した準備の成果と言える。バトラーは役作りのために2年以上にわたりエルヴィスの映像やインタビューを研究し、声のトーンから身のこなしまでを忠実に再現。また、映画で使用された歌声はバトラー本人の歌唱とエルヴィスの実際の録音を巧妙にミックスしたもので、劇中のライブシーンにリアリティを与えた。

また、監督のバズ・ラーマンは、エルヴィスの音楽が生まれた文化的背景を深く掘り下げることを重視した。そのため、撮影では1950年代のアメリカ南部を忠実に再現するための美術セットが作り込まれ、エルヴィスが育ったテューペロやメンフィスの雰囲気が見事に再現された。さらに、エルヴィスの音楽と現代のアーティストを融合させるために、ラーマン監督はドージャ・キャットやエミネムらによる新たな楽曲をサウンドトラックに加え、プレスリーの音楽が現代的に響くよう工夫している。

衣装デザインはエルヴィスの特徴的なスタイルを蘇らせるだけでなく、時代ごとのファッション変遷をも視覚的に表現している。撮影の舞台裏では、エルヴィスの元妻プリシラ・プレスリーも監修に関与し、彼女が持つ思い出や視点が物語の重要な要素に反映されている。

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