ブラッド・ピット&エドワード・ノートンW主演の暴力映画 ---
1999年公開の『ファイト・クラブ』(原題:Fight Club)は、デヴィッド・フィンチャー監督が手がけたサスペンス映画で、チャック・パラニュークの同名小説を原作としている。エドワード・ノートン演じる平凡なサラリーマンが、ブラッド・ピット演じる謎めいた男タイラー・ダーデンと出会い、過激な秘密組織「ファイト・クラブ」に巻き込まれていく。社会に対する反抗や自己破壊の哲学をテーマにした本作は、公開当時、暴力的な描写や過激な思想が物議を醸し、賛否両論を呼んだ。一方で、映像表現や独創的なストーリー展開が高く評価され、現在ではカルト的な人気を誇る作品となっている。
興行収入は1億ドル(当時のレートで約120億円)を超えたものの、当初は期待されたほどの成功には至らなかった。しかし、DVDのリリース後に再評価が進み、1990年代を代表する映画のひとつとして語り継がれている。
『ファイト・クラブ』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
主人公の“僕”は、大手自動車会社に勤務するサラリーマンで、退屈な日常と不眠症に悩まされていた。医師の勧めでガン患者の集会に参加すると、そこで涙を流すことで眠れるようになり、以降、様々なセルフヘルプ・グループに出入りするようになる。しかし、マーロ・シンガーという女性が同じように偽って参加していることに気づき、自分の嘘を直視せざるを得なくなる。そんなある日、出張帰りの飛行機でタイラー・ダーデンと名乗る男と出会い、奇妙な友情を築く。彼の独特な価値観に惹かれた“僕”は、アパートの爆発事故をきっかけにタイラーの家に転がり込むことに。
タイラーの提案で2人はストリートファイトを始め、それが「ファイト・クラブ」という秘密の格闘集会へと発展していく。クラブの人気は高まり、参加者は増え続けるが、やがてその活動は暴力的な破壊工作「プロジェクト・メイヘム」へと変貌していく。タイラーは次第にカリスマ的な指導者として崇拝され、“僕”は彼の影響力の拡大に困惑するようになる。そして、タイラーが突然姿を消したことをきっかけに、“僕”は彼の正体に疑問を抱き始めるーーー。
『ファイト・クラブ』の監督・主要キャスト
- デヴィッド・フィンチャー(37)監督
- エドワード・ノートン(30)ナレーター(主人公)
- ブラッド・ピット(35)タイラー・ダーデン
- ヘレナ・ボナム=カーター(33)マーラ・シンガー
- ミート・ローフ(52)ロバート・”ボブ”・ポールセン
- ジャレッド・レト(27)エンジェル・フェイス
- ザック・グルニエ(45)リチャード・チェスラー
- ホルト・マッキャラニー(35)メカニック
(年齢は映画公開当時のもの)
『ファイト・クラブ』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 4.0 ★★★★☆ |
・大切な人と観たい | 1.0 ★★☆☆☆ |
・ひとりでじっくり | 5.0 ★★★★★ |
・心理サスペンス | 5.0 ★★★★★ |
・リアルな喧嘩描写 | 5.0 ★★★★★ |
ポジティブ評価
『ファイト・クラブ』は、単なる暴力映画ではなく、現代社会の消費主義や自己喪失に対する鋭い批判を含んだ作品として評価されている。高級ブランドに囲まれて生きることが本当に幸せなのか? 人間の本能的な衝動はどこへ向かうのか? こうした問いかけが散りばめられ、視聴者に考えさせる余地を残す。
エドワード・ノートンは、理不尽な社会の中で疲弊する平凡な男を演じ、対照的にブラッド・ピットは圧倒的なカリスマ性と破天荒な魅力を持つタイラー・ダーデンを熱演した。2人の対比が鮮明であるほど、物語の緊張感が増していく。
ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素
『ファイト・クラブ』は、刺激的なテーマがカルト的人気を誇る作品だが、万人向けとは言いがたい側面もある。それまで甘いビジュアル推しの作品が多かったブラッド・ピット出演の映画だが、そのイメージで本作を視聴すると暴力描写の多さに面食らうだろう。デヴィッド・フィンチャー監督ならではの陰鬱な世界観は、明るく爽快な作品を求めている人には向かないかもしれない。
その暴力描写も生々しく、格闘シーンは「かっこいいアクション」というよりは「痛々しいリアリズム」に寄っているため、苦手な人にはやや過酷な内容になっている。
筆者の個人的な経験だが、本作を鹿児島の地下映画館で視聴した後に階段を上っていると、影響を受けて?殺気立った学生さんに睨まれた(気のせいではない筈!ご本人が覚えていたら面白い笑)。若い人にとってそれほどインパクトがある映画で、「影響を受けすぎて、翌日会社を辞めたくなる」ようなら、少し落ち着いて考え直したほうがいい。
こぼれ話
デヴィッド・フィンチャー監督は、過去に『エイリアン3』の制作でスタジオ側と激しく対立した経験があったため、本作では「スタジオに口出しさせない」ことを徹底。結果として、過激なテーマと挑戦的な演出がそのままスクリーンに反映された。ただし、スタジオ側は最初「この映画、どうやって宣伝すればいいんだ?」と頭を抱えたらしい。
さらに、デヴィッド・フィンチャー監督は映画の細部にこだわることで有名だが、本作でもその職人技が発揮されている。たとえば、映画の随所には「企業ロゴ」が意図的に散りばめられており、消費社会に対する皮肉が込められている。ただし、某コーヒーチェーンのロゴはさすがにやりすぎだったのか、後に訴訟を避けるために一部修正が入ったらしい。
キャスト陣も本作のために相当な準備を行った。ブラッド・ピットは、よりリアルな役作りのために歯をわざと削るという驚きの決断をした。撮影後に元の状態に戻したものの、「俳優の覚悟とはここまでやるものなのか」と関係者も驚いたという。一方で、エドワード・ノートンは本作のためにボクシングと格闘技のトレーニングを受けたが、「撮影が終わる頃にはあちこちが痛かった」と語っている。
また、映画の中で印象的に登場する石鹸作りのシーンは、実際に専門家の指導のもとで再現されたもの。撮影当時、ブラッド・ピットは「もう俺、石鹸職人になれるんじゃないか?」と冗談を言っていたが、現場スタッフは「絶対にやめたほうがいい」と真顔で止めたという。
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