フォードvsフェラーリ(2019)の解説・評価・レビュー

フォードvsフェラーリ カーアクション
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『フォードvsフェラーリ(Ford v Ferrari)』は、2019年に公開された伝記スポーツドラマで、1960年代のル・マン24時間耐久レースを舞台に、フォードとフェラーリという自動車業界の二大巨頭の熾烈な競争を描く。監督はジェームズ・マンゴールド、主演にはマット・デイモンとクリスチャン・ベールが名を連ねる。物語は、フォードがル・マン制覇を目指して開発した名車「フォードGT40」を中心に、敏腕デザイナーのキャロル・シェルビーと天才ドライバーのケン・マイルズの奮闘を描く。

第92回アカデミー賞では4部門にノミネートされ、編集賞と音響編集賞を受賞。レースシーンのリアルな映像表現と、友情や情熱を繊細に描いたストーリーが観客や批評家の心を掴んだ。

『フォードvsフェラーリ』のあらすじ(ネタバレなし)


1960年代、アメリカの自動車メーカー、フォードは売り上げの低迷に悩まされていた。若き副社長リー・アイアコッカの提案で、ヨーロッパの名門フェラーリを買収し、ブランドイメージを高めようとするが、交渉は破談に終わる。それどころかフェラーリから挑発的な言葉を受けたフォードの社長ヘンリー・フォード2世は、ル・マン24時間レースでフェラーリを打ち負かすことを決意する。

フォードはレーシングカー「GT40」の開発を進めるため、元レーサーで天才的なカーデザイナーのキャロル・シェルビーを起用。シェルビーはドライバーとして無骨で独創的なケン・マイルズを迎え、試行錯誤を重ねてプロジェクトを進める。しかし、組織の圧力や限られた時間の中で、彼らは様々な困難に直面する。極限の中、彼らは己の情熱と誇りをかけて、フェラーリに挑む準備を進めていくのだった。

『フォードvsフェラーリ』の監督・主要キャスト

  • ジェームズ・マンゴールド(55)監督
  • マット・デイモン(49)キャロル・シェルビー
  • クリスチャン・ベール(45)ケン・マイルズ
  • ジョン・バーンサル(43)リー・アイアコッカ
  • ジョシュ・ルーカス(48)レオ・ビーブ
  • ノア・ジュープ(14)ピーター・マイルズ
  • カトリーナ・バルフ(40)モリー・マイルズ
  • レイ・マッキノン(61)フィル・レミントン
  • トレイシー・レッツ(54)ヘンリー・フォード2世

(役者の年齢は公開時点のもの)

『フォードvsフェラーリ』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 4.0 ★★★★☆
・大切な人と観たい 2.0 ★★☆☆☆
・ひとりでじっくり 3.0 ★★★☆☆
・手に汗握る 5.0 ★★★★★
・男の友情 4.0 ★★★★☆

手に汗握る企業競争と友情

『フォードvsフェラーリ』は、実話に基づいたドラマ。契約を破棄されたヘンリー・フォード2世が、シェルビーを雇ってル・マン24時間耐久レースでフェラーリを打ち負かすという復讐劇を描いたアメリカ映画で、フォードとフェラーリの企業間競争が物語の背景にある。そんな中、主要キャスト2人の友情と、企業の論理に翻弄される人間の葛藤が人間味あふれる形で描かれるヒューマンドラマだ。

実車を使ったレースシーンは迫力満点。ル・マン24の再現が圧巻で、リアルなカメラワークとサウンドデザインが、観客をその場に引き込む臨場感を生み出している。編集賞と音響編集賞を受賞した技術的なクオリティも、本作の大きな魅力と言える。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

実話を題材にした映画では、たびたび「事実と異なる」論争が巻き起こり、本作も例外ではない。フォードが先に裏切ったという”説”などがその代表的なもので、立場が変われば事実の捉え方が多面的になる。
アメリカ視点の商業映画のため、フェラーリの母国ではどのような評価なのかと気になるところで、イタリアの映画プラットフォーム「Mymovies.it」を覗いて見てみると、、
「完璧な相性の俳優コンビによる、アドレナリン全開の痛烈で感動的な作品」(引用)、ということ!全く気にならない様子である。

こぼれ話

本作で描かれるフォードGT40の開発は、実際には極めて短期間で行われたが、これを支えたのはアメリカとイギリスの自動車エンジニアたちの連携だった。また、クリスチャン・ベールは役作りのために大幅な減量を行い、ケン・マイルズの痩せた体型を忠実に再現した。興味深いのが、映画で再現されたレースシーンのほとんどはCGではなく、実際の車とコースを使って撮影された点。さらに、劇中の音響デザインにはこだわりがあり、GT40のエンジン音やタイヤのきしむ音は、実際のル・マンカーの音を収録して使用することでリアルさを追求している。このようなこだわりが、本作の迫力と説得力を高めている。

この映画では描かれていないが、フォードが勝利を収めた背景には、当時のレース規則の隙を突いた戦略があった。具体的には、チーム戦術としてトップ3をほぼ同時にフィニッシュさせる「フォード陣営の演出」が功を奏した。しかし、この行為が規則解釈の曖昧さを露呈させ、翌年以降のレース運営に影響を与えたことも興味深い逸話だ。

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