フロム・ダスク・ティル・ドーン(1996)の解説・評価・レビュー

From Dusk Till Dawn クライムサスペンス
クライムサスペンススプラッター

クライムサスペンスからホラーへの急展開!唯一無二の娯楽作 ---

1996年公開の『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(原題:From Dusk Till Dawn)は、ロバート・ロドリゲス監督、クエンティン・タランティーノ脚本・出演によるアクション・ホラー映画。前半はクライム・スリラー、後半はヴァンパイア・ホラーへと急展開する異色の作風で話題を呼んだ。

物語は、凶悪な強盗犯のゲッコー兄弟(ジョージ・クルーニー&クエンティン・タランティーノ)が逃亡中に、人質となった牧師一家とともにメキシコのバー「ティティ・ツイスター」に逃げ込むところから始まる。しかし、そこは単なる酒場ではなく、日没後に恐るべきヴァンパイアの巣窟へと変貌し、生存者たちは壮絶な戦いを強いられることになる。

主演のジョージ・クルーニーは、本作で映画スターとしての地位を確立し、サルマ・ハエック演じる妖艶なダンサー・サンタニコのパフォーマンスも印象的なシーンのひとつとなっている。興行成績は全世界で約2,500万ドル(当時のレートで約23億円)を記録し、後に続編やTVシリーズも制作された。

『フロム・ダスク・ティル・ドーン』あらすじ紹介(ネタバレなし)

凶悪な銀行強盗のゲッコー兄弟、冷静沈着な兄セス(ジョージ・クルーニー)と暴力的な弟リッチー(クエンティン・タランティーノ)は、犯罪を重ねながらメキシコへの逃亡を図っていた。彼らはFBIに追われる中、人質として元牧師のジェイコブ(ハーヴェイ・カイテル)とその子どもたちを拉致し、国境越えを手助けさせることにする。

一行はメキシコにたどり着き、指定された待ち合わせ場所「ティティ・ツイスター」という酒場で夜を明かすことになる。荒々しいトラック運転手やならず者たちが集うこのバーは、どこか不穏な雰囲気を漂わせていた。

やがて、バーの妖艶なダンサー、サンタニコ(サルマ・ハエック)が登場し、官能的なショーが始まる。しかし、彼女が突如として恐るべきヴァンパイアの姿に変貌すると、店内の客やスタッフも次々と吸血鬼の正体を現し、地獄のような惨劇が幕を開ける。

ゲッコー兄弟と人質たちは、即席の武器を手に取って生き残りを懸けた戦いに挑むが、夜が明けるまで生き延びることができるのか——。

『フロム・ダスク・ティル・ドーン』の監督・主要キャスト

  • ロバート・ロドリゲス(28)監督
  • ジョージ・クルーニー(35)セス・ゲッコー
  • クエンティン・タランティーノ(33)リチャード・“リッチー”・ゲッコー
  • ハーヴェイ・カイテル(56)ジェイコブ・フラー
  • ジュリエット・ルイス(22)ケイト・フラー
  • アーネスト・リュー(23)スコット・フラー
  • サルマ・ハエック(29)サンタニコ・パンデモニウム
  • ダニー・トレホ(52)レイザー・チャーリー

(年齢は映画公開当時のもの)

『フロム・ダスク・ティル・ドーン』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 5.0 ★★★★★
・大切な人と観たい 2.0 ★★☆☆☆
・ひとりでじっくり 3.0 ★★★☆☆
・タランティーノ 4.0 ★★★★☆
・急展開! 5.0 ★★★★★

ポジティブ評価

『フロム・ダスク・ティル・ドーン』は、前半と後半でまったく異なるジャンルに変貌するユニークな構成が魅力。序盤はクエンティン・タランティーノ脚本らしい、緊迫感のあるクライム・スリラーとして展開し、登場人物たちの個性的なセリフやブラックユーモアが炸裂する。しかし、中盤で一気にヴァンパイア・ホラーへと変貌し、ロバート・ロドリゲス監督のスピーディーでスタイリッシュなアクションが全開になる。このジャンルの急展開は強烈なインパクトを与えること間違いなしだ。

主演のジョージ・クルーニーは、本作でそれまでのテレビドラマ『ER』のクリーンなイメージを覆し、ワイルドでタフな犯罪者を熱演。セリフの言い回しやアクションの動きにキレがあり、彼のスター性を決定づけた作品となった。一方、クエンティン・タランティーノは脚本だけでなく、独特な存在感を放つ弟リッチー役として出演し、狂気を孕んだキャラクターを見事に演じている。
さらに、サルマ・ハエック演じるサンタニコ・パンデモニウムのダンスシーンは、本作の象徴的な瞬間のひとつだ。彼女の魅惑的なパフォーマンスと、そこからの怒涛の展開へのギャップが作品の衝撃度をさらに高めている。

また、ヴァンパイアとの戦いが始まると、ロドリゲス監督らしいB級テイスト満載のクリーチャーデザインと、ユーモアを交えた過剰なバイオレンスが炸裂。90年代のアクションホラーとしては異例のスタイリッシュな映像美も際立っており、単なるホラー映画とは一線を画す作風となっている。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

『フロム・ダスク・ティル・ドーン』は、前半のクライム・スリラーから後半のヴァンパイア・ホラーへと激変する構成が特徴的だが、それがそのまま好みの分かれるポイントにもなっている。序盤はタランティーノ脚本らしい緊張感のある犯罪劇が展開され、キャラクター同士の掛け合いが魅力的だが、中盤で突然テイストが違う物語にシフトするため「最初に期待していたものと違う」と感じる人もいるかもしれない。逆に、ホラー映画を期待して観ると前半の犯罪ドラマが長く感じる可能性もある。
ヴァンパイアの造形や戦闘シーンは意図的にコミカルな要素が強く、「シリアスなホラー映画」ではないので留意したい。

こぼれ話

『フロム・ダスク・ティル・ドーン』は、クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスという二人の才能が結合した、まさに90年代らしいエンタメ作品だ。
本作の脚本はタランティーノが1980年代後半に書いたもので、彼がまだ映画業界で名を馳せる前から構想していた。タランティーノは当初、脚本家として映画を売り込みたかったが、やがて『レザボア・ドッグス』(1992年)や『パルプ・フィクション』(1994年)で監督として成功を収めたことで、本作も彼の名とともに注目されるようになった。とはいえ、タランティーノは本作では監督を務めず、親友であり『デスペラード』(1995年)などで知られるロドリゲスにその役割を託した。結果として、タランティーノの脚本とロドリゲスのアクション演出という最強タッグが生まれることになった。

主演のジョージ・クルーニーは、本作が本格的な映画デビュー作であり、それまでのドラマ『ER緊急救命室』で築いたクリーンなイメージとは一線を画す役柄に挑戦した。セス・ゲッコーのタフで冷酷だが兄貴分らしい一面もあるキャラクターは、ジョージ・クルーニーのスター性を引き立てるものとなり、後の『ピースメーカー』(1997年)や『アウト・オブ・サイト』(1998年)といったアクション映画への道を開くきっかけになった。

さらに、本作にはタランティーノ作品でおなじみの俳優陣が数多く出演している。例えば、バーテンダー役のダニー・トレホはロドリゲス映画の常連であり、のちに『マチェーテ』(2010年)で主演を務めることになる。また、ゲッコー兄弟が立ち寄るコンビニの店員役のマイケル・パークスは、『キル・ビル』(2003年)や『デス・プルーフ』(2007年)など、後のタランティーノ作品にも登場している。こうしたキャストのつながりを探しながら観るのも、本作の楽しみ方のひとつかもしれない。

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