インセプション(2010)の解説・評価・レビュー

inception SF(超・能力)
SF(超・能力)SF(近未来)アクション(その他)サスペンススリラー

『インセプション』は、2010年に公開されたクリストファー・ノーラン監督によるSFアクション映画である。主演はレオナルド・ディカプリオ、共演に渡辺謙、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、エレン・ペイジ(現:エリオット・ペイジ)など、国際色豊かなキャストが集結した。夢の中に潜り込み、潜在意識に情報を植え付ける「インセプション(植え付け)」を題材にした斬新なストーリーが話題となり、視覚効果や脚本の独創性が高い評価を得た。

物語は、ディカプリオ演じるコブが、不可能と言われる「インセプション」を依頼され、チームを組んでターゲットの夢の階層を次々に潜り抜けていくというもの。複雑なストーリー構造と圧倒的な映像美で観客を魅了した本作は、第83回アカデミー賞で撮影賞、視覚効果賞など4部門を受賞し、興行的にも大成功を収め、全世界で8億ドルを超える興行収入を記録した。夢と現実が交錯する緻密な世界観が、公開から10年以上経った今も語り継がれる名作である。

『インセプション』のあらすじ紹介(ネタバレなし)

ドム・コブ(レオナルド・ディカプリオ)は、人の夢の中に潜り込み、潜在意識から情報を盗み出す特殊なスキルを持つ「エクストラクター」として活動していた。過去の事件により国際指名手配犯となった彼は、家族と離れて逃亡生活を送っている。そんな彼に、日本の実業家サイトウ(渡辺謙)から「インセプション」と呼ばれる不可能な仕事の依頼が舞い込む。それは、ターゲットの潜在意識に情報を植え付けるという挑戦だった。成功すれば罪を帳消しにするという条件を引き受けたコブは、優秀なメンバーを集めてミッションに挑む。

彼らは複数の夢の階層を作り出し、ターゲットの心に潜り込んでいく。しかし、コブの心には亡き妻モルの記憶が深く根付いており、その影響でミッションが次第に危険なものになっていく。現実と夢の境界が曖昧になる中、果たして彼らはミッションを達成し、コブは家族の元に帰ることができるのか。時間と意識の狭間で繰り広げられるスリリングな物語が展開する。

『インセプション』の監督・主要キャスト

※人名の後の()カッコは公開当時の年齢を反映したもの

  • クリストファー・ノーラン(40)監督
  • レオナルド・ディカプリオ(35)ドム・コブ
  • 渡辺謙(50)サイトー
  • ジョセフ・ゴードン=レヴィット(29)アーサー
  • マリオン・コティヤール(34)モル・コブ
  • エリオット・ペイジ(23)アリアドネ
  • トム・ハーディ(32)イームス
  • キリアン・マーフィー(34)ロバート・フィッシャー
  • トム・ベレンジャー(61)ピーター・ブラウニング
  • マイケル・ケイン(77)マイルス教授

『インセプション』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 3.0 ★★★☆☆
・大切な人と観たい 3.0 ★★★☆☆
・ひとりでじっくり 5.0 ★★★★★
・ディカプリオが観たい! 5.0 ★★★★★
・解釈が分かれる 4.0 ★★★★☆

SF映画の新たな金字塔

『インセプション』は、観客を引き込む斬新なストーリーと圧倒的な映像美が絶賛されたSF映画の新たな金字塔だ。クリストファー・ノーラン監督は、夢と現実の境界を曖昧にする巧妙な脚本を作り上げ、観客に考察の余地を残すことで強い印象を与えた。
レオナルド・ディカプリオの野心的な演技と、渡辺謙をはじめとする国際色豊かなキャストの多彩な演技も見どころである。さらに、重力が崩れるホテルの戦闘シーンや、都市が折りたたまれる視覚効果など、革新的な映像技術が観客を驚嘆させ、第83回アカデミー賞で撮影賞や視覚効果賞などを受賞。全世界興行収入が8億ドル(当時のレートで880億円)を超え、批評家と観客双方から支持を得た。

賛否が分かれる評価として

一方で、複雑なストーリー構成が理解を難しくし、観客を選ぶ作品との意見もある。特に、夢の階層が進むにつれ、現実と虚構の区別が曖昧になる演出が混乱を招いている(筆者も一度挫折した)。
映画のラストシーンで独楽が回り続けるかどうかが曖昧に描かれていることは公開当時から大きな議論を呼び、このシーンについてノーラン監督は「現実か夢かは観客が解釈する余地を残すため」とコメントしている。映画そのものが”インセプション”(発端)なのである。

こぼれ話

『インセプション』の脚本は、クリストファー・ノーラン監督が10年以上をかけて練り上げたものである。当初はホラー作品として構想されていたが、複雑なストーリーを描くためにアクション要素が加えられ、現在の形になった。また、映画内の時間の進み方を象徴する楽曲、エディット・ピアフの「Non, Je Ne Regrette Rien」のテンポは、夢の階層ごとに遅くなる形で加工され、劇中の音楽にも影響を与えている。

渡辺謙が演じたサイトーは、当初は別の俳優が予定されていたが、ノーランが渡辺の国際的なキャリアを評価してキャスティングを変更したというエピソードもある。さらに、本作では極力CGを使用せず、物理的なセットやワイヤーアクションを多用してリアルな質感を追求した点が話題となった。

 

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