1996年公開のSFパニック映画『インデペンデンス・デイ』(原題:Independence Day)は、ローランド・エメリッヒ監督が手がけ、ウィル・スミス、ジェフ・ゴールドブラム、ビル・プルマンらが出演する超大作である。本作は、地球侵略を企む巨大宇宙船群と人類の戦いを描いたスペクタクルで、当時の最新VFXを駆使した大規模な破壊シーンと、王道のハリウッド式ストーリーが特徴となっている。
映画は、アメリカ独立記念日(7月4日)を舞台に、ホワイトハウスをはじめとする世界各地の都市がエイリアンによって次々と破壊される中、戦闘機パイロットのスティーブン(ウィル・スミス)、科学者のデイヴィッド(ジェフ・ゴールドブラム)、大統領のホイットモア(ビル・プルマン)らが一致団結し、地球の存亡をかけて決死の反撃を繰り広げるというもの。
全世界で約8億1,700万ドル(当時のレートで約770億円)の興行収入を記録し、1996年の年間興行収入第1位を獲得。さらに、第69回アカデミー賞では視覚効果賞を受賞し、ハリウッドのSF大作としての地位を確立した。
『インデペンデンス・デイ』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
アメリカ独立記念日を目前に控えた7月2日、地球の上空に突如として直径24kmもの巨大宇宙船が出現する。各国政府は混乱に陥るが、科学者デイヴィッド・レヴィンソン(ジェフ・ゴールドブラム)は、宇宙船が地球に向けて攻撃信号を発していることを察知。彼の警告もむなしく、エイリアンはロサンゼルスやワシントンD.C.など主要都市を次々と壊滅させる。
生存者たちは必死に逃げ延びる中、アメリカ合衆国大統領トーマス・J・ホイットモア(ビル・プルマン)は、エイリアンへの反撃を決意。しかし、地球の兵器は高度な防御シールドを持つ敵にはまったく通用せず、人類は絶望的な状況に追い込まれる。そんな中、戦闘機パイロットのスティーブン・ヒラー大尉(ウィル・スミス)は、敵の戦闘機を撃墜し、そのパイロットを捕虜にすることに成功する。残された戦力を結集して反撃作戦を立案し、人類の存亡をかけた決戦が迫る——。
『インデペンデンス・デイ』の監督・主要キャスト
- ローランド・エメリッヒ(40)監督
- ウィル・スミス(28)スティーブン・ヒラー大尉
- ビル・プルマン(42)トーマス・J・ホイットモア大統領
- ジェフ・ゴールドブラム(44)デイヴィッド・レヴィンソン
- メアリー・マクドネル(44)マリリン・ホイットモア
- ジャド・ハーシュ(61)ジュリアス・レヴィンソン
- ロバート・ロッジア(66)ウィリアム・グレイ将軍
- ランディ・クエイド(46)ラッセル・ケイス
(年齢は映画公開当時のもの)
『インデペンデンス・デイ』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 5.0 ★★★★★ |
・大切な人と観たい | 3.0 ★★★☆☆ |
・ひとりでじっくり | 2.0 ★★☆☆☆ |
・王道!ハリウッドムービー | 5.0 ★★★★★ |
・大規模な破壊シーンに注目! | 4.0 ★★★★☆ |
ポジティブ評価
『インデペンデンス・デイ』は、90年代を代表するSF超大作で「ド派手な破壊」と「熱い人間ドラマ」が特徴の映画。巨大宇宙船の出現から、ホワイトハウスを含む都市の壊滅、そして人類の反撃へと至る流れは、まさに王道のアメリカエンターテインメント。1996年当時の最先端VFXを駆使した破壊シーンはインパクトが抜群である。
キャスト陣のバランスも秀逸で、軍人、科学者、市民など、多くのキャラクターがそれぞれの役割を果たしながら、人類が一致団結して敵に立ち向かう。ウィル・スミス、ジェフ・ゴールドブラム、ビル・プルマンといった個性豊かな俳優たちが、それぞれ異なる立場から地球の危機に立ち向かう。ウィル・スミスは、軽妙なジョークを交えつつも頼れるヒーロー像を確立し、ジェフ・ゴールドブラム演じるデイヴィッドは、科学者らしい頭脳戦で戦いに貢献し、ビル・プルマン演じる大統領は、歴史に残る名演説で視聴者の胸を熱くさせた。
『インデペンデンス・デイ』は、シリアスなSFというよりも、エメリッヒ流の「楽しんだ者勝ち」のエンタメ映画であり、細かい理屈を抜きにして、壮大なスケールの戦いと胸が熱くなる展開を存分に楽しめる作品だ。
ネガティブ評価
『インデペンデンス・デイ』は、科学的な整合性についてはほぼ度外視されており、「あまりにもご都合主義では?」と思う場面も多い。特に、エイリアンの高度な技術に対し、ある「シンプルすぎる方法」で反撃するクライマックスは、SF的なリアリティを求める視聴者には納得しがたい(ただし、娯楽映画として割り切れば、それも魅力の一部とも言える)。ポップコーン片手に「細かいことは気にせず楽しむ」のが正しい鑑賞スタイルかもしれない。
演出の面では「とにかくアメリカ万歳!」な要素が前面に押し出されている点も特徴的であり、描かれるのはアメリカ人によるアメリカ人のためのヒーローである。これが作品の熱さを盛り上げる一方でハリウッドアクションの醍醐味なのだが気になる人には気になるかも。
こぼれ話
『インデペンデンス・デイ』の企画は、ローランド・エメリッヒ監督が前作『スターゲイト』(1994年)の宣伝ツアー中に「エイリアンの襲来を描いた映画は数多いが、地球規模での戦いを描いた作品は少ない」と考えたことから始まったという。当初の脚本では、宇宙人の侵攻はより段階的に進む予定だったが、エメリッヒ監督は「最初からド派手に都市を破壊しよう」と方向転換し、あの象徴的なホワイトハウス爆破シーンが生まれた。ちなみに、このシーンはミニチュアセットを使用して撮影されており、CGではない実写の爆破映像が迫力を生んでいる。
ウィル・スミスのキャスティングについても、当初はスタジオ側が難色を示していた。1996年当時、彼は『バッドボーイズ』(1995年)で注目され始めたばかりで、SF映画の主演を務めるにはまだ経験が浅いと考えられていた。しかし、エメリッヒ監督と製作陣は彼の存在感と持ち前の明るさを評価し、押し切る形で主演に決定。結果として、ウィル・スミスは本作を機にハリウッドのトップスターへと駆け上がることになった。
公開直後、アメリカ海軍や空軍がこの映画を「士気を高めるのに最適な作品」と評価し、新兵募集のプロモーションで活用したという逸話もある。実際に、アメリカ軍は本作の撮影にも協力し、戦闘機の映像提供や基地でのロケを許可した。なお、映画に登場するエイリアンのデザインは『スターゲイト』にも携わったアーティストによるもので、「クラシックなUFO映画のエイリアン像」に近づけている。
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