『ザ・エージェント』は、1996年に公開されたキャメロン・クロウ監督・脚本によるヒューマンドラマで、トム・クルーズが主演を務めた。主人公ジェリー・マグワイア(トム・クルーズ)は、スポーツエージェントとして成功を収めていたが、業界の非情なビジネス方針に疑問を抱き、大きな決断を下す。その結果、顧客や仲間のほとんどを失うが、1人のクライアントとともに再起を図る姿を描く。彼を支えるシングルマザーのドロシー(レネー・ゼルウィガー)との関係も物語の重要な軸となる。
興行収入は全世界で約2億7,300万ドル(当時のレートで約300億円)を記録し、批評家と観客の双方から高い評価を受けた。助演のキューバ・グッディング・Jrは、NFL選手ロッド・ティッドウェル役でアカデミー助演男優賞を受賞。トム・クルーズ自身も主演男優賞にノミネートされた。感動的なセリフや「ショー・ミー・ザ・マネー!」といった印象的なフレーズが話題を呼び、今なお愛され続けるクラシック映画のひとつである。
『ザ・エージェント』のあらすじ紹介(ネタバレなし)
ジェリー・マグワイア(トム・クルーズ)は、成功を収めている敏腕スポーツエージェント。しかし、業界の非情な利益優先の姿勢に疑問を感じた彼は、選手との誠実な関係を重視するマニフェストを発表する。しかし、この行動が原因で職を失い、クライアントや同僚たちもほとんど離れていく。失意の中、彼の元に残ったのは、わずかなクライアントのひとりであるNFL選手ロッド・ティッドウェル(キューバ・グッディング・Jr)と、会社を辞めて共に行動を選んだシングルマザーのドロシー・ボイド(レネー・ゼルウィガー)だけだった。
ジェリーはロッドの信頼を得ながら彼のキャリアを支え、同時に自分自身の価値観や人生の方向性を見直していく。一方で、ドロシーとの関係が深まり、彼女とその息子レイとの間に新たな絆が芽生える。仕事と私生活の間で葛藤する中で、ジェリーは真の成功とは何かを問い直し、彼自身の「愛」と「誠実」を見つけ出す旅に出る。
『ザ・エージェント』の監督と主要キャスト
- キャメロン・クロウ(39)監督
- トム・クルーズ(34)ジェリー・マグワイア
- キューバ・グッディング・Jr(28)ロッド・ティドウェル
- レネー・ゼルウィガー(27)ドロシー・ボイド
- ケリー・プレストン(34)アヴェリー・ビショップ
- ジェリー・オコンネル(22)フランク・クッシュマン
- ジェイ・モーア(26)ボブ・シュガー
- ボニー・ハント(35)ローレル・ボイド
- レジーナ・キング(25)マーシー・ティドウェル
- ジョナサン・リプニッキ(6)レイ・ボイド
『ザ・エージェント』の評価・レビュー
・みんなでワイワイ | 4.0 ★★★★☆ |
・大切な人と観たい | 4.0 ★★★★☆ |
・ひとりでじっくり | 4.0 ★★★★☆ |
・トムクルーズの全盛期 | 5.0 ★★★★★ |
・スポーツ映画 | 3.0 ★★★☆☆ |
働く人に勇気を与える作品
『ザ・エージェント』は誠実を描いた作品。トム・クルーズが演じるジェリー・マグワイアは、スポーツエージェントとしての成功と挫折を通じて仕事や人間関係における「真の価値」を見出していく。企業倫理への問いかけでもあり、彼の決意は、理想と現実の狭間でもがくビジネスパーソンに勇気と共感を呼ぶのではないだろうか。
エンターテインメントとしても、ジェリーとクライアントであるロッドとの関係が生むユーモアや感動的なシーンが視聴者の心を鷲掴みにする。成功物語としての爽快感も備えつつ、観る者に人間関係の本質を問いかける。ロッド役のキューバ・グッディング・Jrは、「ショー・ミー・ザ・マネー!」という名フレーズを映画史に残し、アカデミー助演男優賞を獲得した。
ネガティブまたは賛否が分かれる要素
作品自体のネガティブ評価ではないが、ネットの評価を見渡すと、スポーツエージェントの仕事をもっと詳細に描いて欲しかったというレビュアーもちらほら。
また、作中に描かれる恋愛が共感しにくいという声も(特にトム・クルーズの心境に対して)。演技自体はとても美しいロマンス。当時無名だった相手役のレニー・ゼルウィガーはこの作品でブレイクし、後にオスカー女優となる。
こぼれ話
『ザ・エージェント』の撮影には、実際のスポーツ選手やスポーツ業界の関係者が多く参加しており、リアリティを追求した点が特徴的だ。
NFL選手やスポーツエージェントたちの証言を元に脚本が練り上げられ、主人公ジェリー・マグワイアの行動や業界描写に説得力を与えている。
映画に登場する「ショー・ミー・ザ・マネー!」というセリフは、アメリカ文化に深く刻まれるほどの影響を与え、その年の流行語にもなった。
また、ジョナサン・リプニッキが演じるレイ・ボイド(ドロシーの息子)による名場面、「人間の頭の重さは8ポンド」というセリフはアドリブから生まれたもの。
キャメロン・クロウ監督の脚本は、映画公開後も脚本作りのお手本として引用されることが多く、「主人公の再生」を描く王道的なストーリーの模範として評価されている。また、映画のサウンドトラックにはボブ・ディランやエルヴィス・プレスリーなどの楽曲が採用され、物語をロードムービーのように彩る。
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