ラ・ラ・ランド(2016)の解説・評価・レビュー

ラ・ラ・ランド ダンス
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かつてない音楽映画の奇跡、それは“夢”へのラブレター  ーーーーー『ラ・ラ・ランド』(原題:La La Land)は、2016年に公開されたアメリカのミュージカル映画で、デイミアン・チャゼルが監督と脚本を務めた。主演はエマ・ストーンとライアン・ゴズリング。ロサンゼルスを舞台に、女優を目指すミア(ストーン)と、伝統的なジャズクラブの開設を夢見るピアニスト、セバスチャン(ゴズリング)が出会い、恋に落ちると同時に、それぞれの夢を追い求める中で葛藤や困難を乗り越えていく姿を描く。二人の関係は、愛と夢の狭間で揺れ動きながら、現実と向き合うにつれて変化していく。

本作は、クラシックなミュージカルの要素を取り入れつつ、現代的なアプローチで語られるストーリーが魅力で、鮮やかな映像美やロマンチックなダンスシーンが特に注目を集めた。アカデミー賞では史上最多タイとなる14部門にノミネートされ、作品賞は惜しくも逃したが監督賞を含む6部門を受賞。エマ・ストーンは主演女優賞を受賞し、デイミアン・チャゼルの監督賞は史上最年少の快挙(公開時31歳)。映画の象徴ともいえる色彩豊かな衣装や幻想的な演出、そして観客の心を揺さぶる感動的なラストシーンは、現代のミュージカル映画を代表する傑作として多くの人々に愛され続けている。

『ラ・ラ・ランド』のあらすじ

ロサンゼルスを舞台に、女優になる夢を追い続けるミアと、伝統的なジャズを守るために自身のクラブを開くことを目指すピアニストのセバスチャンが、偶然の出会いをきっかけに次第に惹かれ合う物語。オーディションでの失敗を繰り返しながらも諦めずに挑戦を続けるミアと、安定した収入を得るために自身の音楽スタイルを妥協するセバスチャンは、互いに支え合い、夢を追う日々を過ごしていく。しかし、それぞれの夢が現実味を帯びてくるにつれ、二人の間には思いもよらない軋轢が生じ始める。

セバスチャンの妥協やミアの挫折感は、二人の愛と夢を揺るがし、次第に関係に大きな溝を作っていく。夢を追い続けるためには何を犠牲にすべきなのか、そして愛は夢に勝るのか――それぞれの葛藤が交錯する中で、二人が選ぶ未来とは何か。夢と現実、愛と犠牲、人生の儚さと美しさを鮮烈に描いたこの物語は、観る者の心に深い感動と余韻を与える。

『ラ・ラ・ランド』の監督・主要キャスト

  • デイミアン・チャゼル(31)監督
  • ライアン・ゴズリング(36)セバスチャン・ワイルダー
  • エマ・ストーン(28)ミア・ドーラン
  • ジョン・レジェンド(37)キース
  • ローズマリー・デウィット(45)ローラ(セバスチャンの姉)
  • J・K・シモンズ(62)ビル(レストランのオーナー)
  • フィン・ウィットロック(32)グレッグ(ミアの恋人)

(役者の年齢は公開時点のもの)

『ラ・ラ・ランド』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 4.0 ★★★★☆
・大切な人と観たい 5.0 ★★★★★
・ひとりでじっくり 4.0 ★★★★☆
・現代ミュージカルの傑作 5.0 ★★★★★
・圧巻のダンスシーン 4.0 ★★★★☆

若いクリエイターの躍動

賛辞を贈りたいのがアカデミー監督賞を受賞したデイミアン・チャゼルと、同作曲賞を受賞したジャスティン・ハーウィッツ。ともに1985年生まれのクリエイターで、公開当時ふたりは31歳。「愛を選ぶか夢を選ぶか」という古典的なストーリーに躍動感を乗せたのは、ふたりの若い力に他ならない。
オリジナル楽曲「シティ・オブ・スターズ」をはじめとする音楽は作品のテーマを象徴的に表現し、多くの人々の心に残るものとなった。視覚的にも、長回しを駆使したダンスシーンや、幻想的なライティングを用いた演出が視聴者を映画の世界に引き込む。

演技においても、ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンのケミストリーは素晴らしく、感情豊かな演技で視聴者を惹きつけたエマ・ストーンはアカデミー主演女優賞を獲得した。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

『ラ・ラ・ランド』は、第89回アカデミー賞で史上最多(タイ)となる14部門にノミネート”されてしまった”為、多くの辛口の批評に晒されることとなる。比較対象が『サウンド・オブ・ミュージック』『マイ・フェア・レディ』、『オクラホマ』やなどの超名作たちだから苦しい競争である。
否定的な評価の多くは、主演二人がプロのパフォーマーに比べると見劣りするといった感じだ。
物語への共感部分でも、一定の異見はある。

こぼれ話

本作は、デイミアン・チャゼル監督が学生時代から温めていたアイデアを基に制作された。

ライアン・ゴズリングは役作りの一環でジャズピアノを徹底的に練習し、劇中の演奏シーンは全て本人が実際に弾いている。また、エマ・ストーンが演じるミアのオーディションシーンには、実際に映画業界での挫折経験を取り入れたという。撮影にはロサンゼルスのランドマークが多数使用され、現地の文化と映画のストーリーが密接に結びついている点も注目された。

第89回アカデミー賞では、最多14部門にノミネートされ、6部門を受賞したが、作品賞発表の混乱もまた記憶に残る出来事として語り継がれている(プレゼンターのウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイが「ラ・ラ・ランド」と発表した後に訂正されたというハプニングがあった)。

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