レオン(1994)の解説・評価・レビュー

Léon The Professional アクション(その他)
アクション(その他)クライムサスペンス

孤独な殺し屋と少女。危うくも切ないクライムアクション ---

『レオン』(原題:Léon: The Professional)は、1994年に公開されたフランス・アメリカ合作のアクション・ドラマ映画で、リュック・ベッソンが監督・脚本を務めた。主演はジャン・レノ、共演にナタリー・ポートマン、ゲイリー・オールドマン。物語は、孤独な殺し屋レオンと、家族を殺された少女マチルダの奇妙な絆を描きながら、彼女の復讐と成長を追う。

公開当時、そのスタイリッシュな演出とキャストの演技が高く評価され、ナタリー・ポートマンの鮮烈な映画デビュー作としても知られる。また、ジャン・レノを世界的なトップスターに押し上げ、ゲイリー・オールドマン演じる悪徳捜査官の狂気じみた演技は映画史に残る名悪役として語り継がれている。製作費1,600万ドルに対し、全世界で4,600万ドル以上の興行収入を記録。

『レオン』のあらすじ紹介(ネタバレなし)


ニューヨークの片隅でひっそりと暮らす殺し屋レオンは、完璧な仕事をこなすプロフェッショナルだった。彼は人付き合いを避け、植物だけを唯一の友として静かに生きていた。しかし、ある日、隣の部屋に住む12歳の少女マチルダが、家族を麻薬捜査官スタンスフィールド率いる汚職警官たちに惨殺されてしまう。偶然にも家にいなかったマチルダは、命からがらレオンの部屋に逃げ込み、彼に助けを求める。

最初は彼女を拒絶していたレオンだったが、家族の仇を討ちたいと願うマチルダの強い意志に触れ、次第に心を開いていく。そして彼は、彼女に殺しの技術を教え始めるのだった。しかし、復讐の計画が進むにつれ、二人の関係はより複雑なものになり、スタンスフィールドとの決着の時が迫っていく。

『レオン』の監督・主要キャスト

  • リュック・ベッソン(35)監督
  • ジャン・レノ(46)レオン
  • ナタリー・ポートマン(13)マチルダ
  • ゲイリー・オールドマン(36)ノーマン・スタンスフィールド
  • ダニー・アイエロ(61)トニー
  • ピーター・アペル(31)マルキー
  • マイケル・バダルコ(44)ジョセフ・ランドー
  • エレン・グリーン(43)マージ・ランドー

(年齢は映画公開当時のもの)

『レオン』の評価・レビュー

・みんなでワイワイ 3.0 ★★★☆☆
・大切な人と観たい 5.0 ★★★★★
・ひとりでじっくり 4.0 ★★☆☆☆
・N・ポートマンデビュー作 5.0 ★★★★★
・ジャン・レノ 5.0 ★★★★★

ポジティブ評価

『レオン』は、ハードボイルドなアクション映画でありながら、登場人物たちの心情を丹念に描いた、90年代を代表する名作のひとつ。
本作の最大の魅力は、ジャン・レノ演じるレオンとナタリー・ポートマン演じるマチルダの関係性にある。レオンは冷酷な殺し屋でありながら純粋な一面を持ち、家族を失ったマチルダと交流するうちに、人間的な感情を取り戻していく。この微妙な心の変化を、ジャン・レノは抑制の効いた演技で見事に表現している。

当時13歳のナタリー・ポートマンにとっては本作が映画デビュー作だが、彼女の演技は当時の新人とは思えないほど圧倒的な存在感を放っている。復讐を誓うマチルダの強い意志と、まだ幼さの残る繊細な表情が同居する演技が視聴者の心を掴む。彼女がレオンに殺しの技術を学びながらも、どこか父親を求めるような姿勢を見せるシーンは、ただのアクション映画に留まらない深みを生み出している。

映像は、ニューヨークの雑然とした街並みを背景に、静と動を巧みに使い分けた演出が施されており、レオンの暗殺シーンは無駄のない動きと緊張感に満ちている。一方で、二人が部屋で過ごす穏やかな時間は、まるで家族のような温かさを感じさせ、対照的なシーンのコントラストが映画の魅力を引き立てる。

ネガティブまたは賛否が分かれる評価要素

物語の中心となるレオンとマチルダの関係性が特異である。父娘のような絆でありながら、どこか危うい感情が交錯する関係とも取れる描写があり、映画作品として90年代当時は概ねポジティブに受け入れられていたものの、現代の社会環境ではネガティブな再評価を受ける雰囲気がある。他ならぬナタリー・ポートマン自身も当時を振り返り、リュック・ベッソン監督への批判(スキャンダル)的な文脈の中ではあるが、これらのシーンについても「複雑な思い」と言及している。

こぼれ話

リュック・ベッソン監督は、本作を『ニキータ』(1990年)に登場した殺し屋ヴィクトル(ジャン・レノ)のスピンオフ的な作品として構想していた。しかし、最終的にストーリーを独立させ、レオンという新たなキャラクターを誕生させた。ジャン・レノ自身も、「レオンはヴィクトルより純粋な男である」と語っており、無口ながらもどこか不器用なレオンのキャラクター像が生まれた。
主婦と生活社が刊行する雑誌「LEON」「NIKITA(廃刊)」の誌名はこれらの映画に由来する。

ナタリー・ポートマンにとって、本作は映画デビュー作だった。当時11歳でオーディションを受けた彼女は、当初「年齢が若すぎる」と判断されて落選しかけたが、再オーディションでマチルダ役にふさわしい強さを見せ、監督を納得させたという。撮影中も彼女は役に入り込み、大人顔負けの演技を披露した。特に、レオンに「殺しを教えてほしい」と頼むシーンは、彼女の女優としての才能を示す瞬間のひとつだった。

『レオン』は、低予算ながらもキャストとスタッフの情熱によって完成した作品であり、現在も世界中の映画ファンに愛されている。

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